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【解説】市街化調整区域の施設開発許可手続き緩和

2024年1月17日 (水)

記事のなかから多くの読者が「もっと知りたい」とした話題を掘り下げる「インサイト」。今回は「市街化調整区域での施設開発許可手続きを緩和」(1月12日掲載)をピックアップしました。LOGISTICS TODAY編集部では今後も読者参加型の編集体制を強化・拡充してまいります。引き続き、読者の皆さまのご協力をお願いします。(編集部)

ロジスティクス物流業界では2024年問題への対応に注目が集まるが、日本経済全体で見ると少子高齢化・労働人口の減少による地方経済の縮小も深刻となっており、地域活性化の取り組みが急務となっている。その対策の一つとして17年には「地域未来投資促進法」が施行された。これは、地域の特性を活用した事業を推進し、そこから生み出される経済的波及効果を最大化する地方公共団体の取り組みを支援する枠組みであり、「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」という正式名称が、端的にその目的を表している。

同法では、都道府県や市町村、地方公共団体など地域が主体となって事業者を支援するスキームとなっており、対象となる事業者へのさまざまな支援措置も規定、その支援措置の根拠となるのが「地域経済牽引事業計画」の認定となる。国の基本方針を基に都道府県・市町村が「基本計画」を策定、事業者がこの基本計画に基づいて作成した地域経済牽引事業計画が、都道府県知事の承認を受けることで、事業実施と支援措置の対象となるという流れだ。

地域経済の活性化には、この地域未来投資促進法に基づく事業が、より多く、より早く実施されることも重要だ。事業者への支援措置としては、事業をより円滑に遂行するための「規制の特例措置」として「市街化調整区域の開発許可の手続きに関する配慮」なども明記されており、新規事業所開設における規制も緩和される。事業拡大のための新規事業所の開設希望区画が市街化調整区域ということで進展しなかったケースなども、地域経済牽引事業計画をもとに早急な見直しが可能となる。

12日にLOGISTICS TODAY編集部が公開したニュース「市街化調整区域での施設開発許可手続きを緩和」は、この地域未来投資促進法を一部改正し、これまで規制緩和の特例措置に含まれていなかった「物流に関する施設開発」も、新たに市街化調整区域での開発許可の配慮対象に追加したものだ。所管する経済産業省では「土地利用転換の迅速化に向けて」の改正と位置付ける。高速道のインターチェンジ、または幹線道路に近接する「地域における産業立地の促進のために必要と認められる区域」に立地を計画する物流関連施設においては、市街化調整区域での開発許可手続きがよりスピーディーに処理され、新拠点を基盤にした事業へいち早く取り組める態勢が整えられた形となる。

この法令改正は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」として、24年問題対応・物流改革とは別の側面からの施策ではあるが、物流事業者においては歓迎すべき改正であることは間違いない。これまで支援対象の枠外だったことで制度の活用を検討するに至らなかった物流事業者も少なくないと思われる。実際に事業拡大に伴う新規拠点開発計画が、その認可の過程でボトルネックとなっていたような事例においては、あらためて物流効率化と歩調を合わせた事業改革を実行する契機ともなるのではないだろうか。開発許可の配慮といった支援だけではなく、税制優遇や金融面での支援活用で投資負担を軽減し、事業推進につなげることも期待できる。

では、この制度の活用を検討するにあたっては、どのようなことに気をつけるべきか。

まず、前述の通り、事業者にとっての制度活用の根拠となる地域経済牽引事業計画の作成が必要となるわけだが、その前提となるのが都道府県、市町村が策定した基本計画となり、そのなかでどのような地域特性を生かした経済活性化を目指しているのか、そこに物流分野が含まれるのかを確認することがスタートとなる。各都道府県・市町村ごとの基本計画では、高い付加価値を生みだす地域の特性として、物流における優位性を掲げる計画も多い。地元空港や港湾の活用や、広域への結節点となる立地などから「物流」を基盤とした地方再生を目指す取り組みなどは、経産省のホームページで「同意基本計画一覧」として掲載されているので、所在地域での基本計画が存在するのか、物流事業に関連するものがあるのかを確認する資料にしてもらいたい。

また、地域牽引事業計画は、「1.地域の特性の活用」「2.高い付加価値の創出」「3.地域の事業者に対する相当の経済的効果」の3要件を満たす事業計画でなければならないとされており、事後検証が可能な数値目標の設定も求められる。こちらも経産省が公開している「地域未来投資促進法における地域経済牽引事業計画のガイドライン」や認証事例、各自治体が公開している記載例、チェックリストなどを参考にするのが良いだろう。

地域未来投資促進法活用の最大のメリットである税制優遇措置などの確認も重要である。都道府県から地域牽引事業計画の認可を受けた地域経済牽引事業者が、計画に従って建物・機械などの設備投資を行う場合に受けられる金融支援措置などにも各種要件が設定されているので、まずはその詳細を把握しておくことも忘れてなならない。各種情報は、経産省が「地域未来投資促進法」のホームページに集約しているので、まずはその全容を確認することが重要である。