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日商エレクトロニクス、貿易書類特化型「トレードハブ」を関西物流展に出展

貿易業務をDX、紙やり取り実務で業務負荷削減

2024年3月28日 (木)

話題大手総合商社の一つ、双日系のIT関連企業・日商エレクトロニクス(東京都千代田区)が、着目したのは、紙ベースのやり取りがあふれる貿易業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)。昨年11月にリリースした「Trade Hub」(トレードハブ)は、その名の通り、貿易のハブ(中継)となる機能を目指し、業務の人的負担を低減させるクラウドサービスだ。

▲「Trade Hub」の機能イメージ(クリックで拡大)

長年、商社や卸売業などに基幹システムを導入するIT化に携わってきた日商エレクトロニクスだが、2017年からは人の労働力をデジタルで効率化していくことに主眼を置いた「デジタルレイバー事業」へとウイングを広げてきた。総合商社系だけに、顧客などから寄せられる相談は輸出入など貿易関係が多くを占め、その悩みをクラウドサービスで解決するなどして実績を多く上げてきた。そうしたテクノロジーのいわば集大成が、トレードハブだ。

貿易書類のバケツリレー、国内取引の5倍に達する

「貿易をシンプルにして、貿易の業界に成果を生み出したい」。そう端的に語るのは、日商エレクトロニクス・アプリケーション事業本部アプリケーション事業推進部副部長の木村悦治氏。アプリケーション事業本部はソフトウエア開発を担い、木村氏は、トレードハブ開発の責任者でもある。

▲アプリケーション事業本部アプリケーション事業推進部副部長の木村悦治氏

「企業にもよるが、国内取引の部隊と海外取引の部隊とを分けると、明らかに同じ取引数でも、海外取引の部隊に、人数が数倍かかかっているのが実態だ」。木村氏は、貿易業界の特徴について指摘する。

貿易業界の課題として大きく挙げられるのが、「複雑さ」と「アナログさ」だ。貿易取引には、船会社や公的機関などに関わるプレーヤーが多くなりがちで、各プレーヤー間の書類による「バケツリレー」が続いていくのが現実。売り先、買い先や金融機関だけでなく、単純な貿易でも、輸送する複数の物流企業に通関業者、税関などが加わる。一つの製品の取引でも、複数の国を跨ぐだけにプレーヤーの数は膨れ上がり、国内だけの取引と比べると、3倍に及ぶとされる。

それだけではない。やり取りされる書類はほぼ、アナログな紙がベース。さまざまな国の制度や取り決め、業界の慣習などに則ってやり取りされているため、書類の数は、国内取引と比べて5倍に達するとされる。実務の煩雑さに拍車を掛けている理由がここにある。

アナログ業務であるがゆえに、実務負荷は高く、貿易実務の世界は人の労働力に頼った「労働集約型産業」だというのが実態なのだ。「人手で成り立っている産業」(木村氏)という側面が無視できなくなっている。

一方、貿易実務のノウハウを持つ社員らの高齢化も進んでいるという。アナログ業務における現場担当者の課題が経営レベルの課題となっていることに加え、人材の確保も困難さが増し、同社は「社会の課題」とまで位置付けて、その対策に取り組んできた。

デジタル化する動きも一部出てきているが、各国の法律改正などが必要となり、ハードルは未だ多く残っているのが現状。「(業界全体のデジタル化には)まだ時間がかかるため、すぐできるものとしてスタートした」(木村氏)というのが、トレードハブ開発の背景にある。

▲貿易業務DXを「すぐに始められる」のが「Trade Hub」の強みだ(クリックで拡大)

AIに実務ノウハウを加味して、識別能力の精度向上

まず、同社が手掛けたのが、画像データのテキストを文字データに変換する技術「AI-OCR」を、複雑で煩雑な、この貿易業務に適用させることだった。5、6年前のことだ。

だが、貿易書類は情報量が多く専門的で、罫線の上に文字が記載されていたり、書類の項目欄が判別できなかったりするなど、特殊な事情があった。木村氏は「単にAI(人工知能)に学習させるだけでは、まだ現状では貿易書類は複雑すぎて、学習しきれない」と明かす。

▲文字識別しにくい貿易書類の数々(クリックで拡大)

AIに頼るだけでは、文字識別の精度が一定のところで頭打ちになることが分かってきた。「我々が培ってきたところ」と木村氏が誇るのは、その精度の向上に、5年ほど試行錯誤してきた成果だ。

顧客から要望を受けデータ化に取り組んできたが、貿易特有のプログラミングを個別に導入したり、専門用語を整理したりして、データ化の精度を高めてきたという。こうした応用には、同社が貿易実務のノウハウを蓄積してきたことが大きく貢献している。結果、文面が整った書類であれば、精度が99%を超えるまでになった。

さまざまな画像品質の書類も画像補正や、背景、ノイズ除去などで対応できるまでになってきたという。木村氏は「90%半ばまで精度が高まらないと、実務現場で人による確認の手間は省けない」と明かす。

こうしたテクノロジーの進化により発展して開発されたのが、トレードハブだ。

荷主やフォワーダーが、貿易書類をスキャンしたりPDF化したりして、クラウドサービスにアップロードすれば、貨物の運送を委託した荷主や荷受人は誰か、どの国からどの国に荷物が届くのか、港はどこに到着するかなど、取引に関するデータとしてまとめられ、エクセルに貼り付けてダウンロードできる。

▲貿易書類をアップロードすると、データや照合結果がダウンロード可能に(クリックで拡大)

さらに、チェック機能も付加された。さまざまな貿易書類から読み取られたデータは、構造化される。例えば輸入時は、発注の明細と船積みの明細とで、数量、金額などが合致しているかを荷主などがチェックしているが、クラウドサービスの中で、構造化されたデータがあれば、項目同士を自動的に照合することもできる。チェック結果なども提供される。

また、税区分(課税・非課税など)の識別のほか、関税、消費税などの計算も自動的にできる。多くは、人による作業が伴ってきたものだ。人手がかかってきた貿易実務を軽減でき、同社は「現場から始まる貿易のDX」を支援できるとPRする。

さまざまな貿易書類から読み取ったデータを、同じ項目ごとに取り込むことで、取引情報や商品明細、日程情報などとして、比較可能な状態にデータベース化できる。

目指す貿易業務の「ハブ」機能、他システムとの連携容易に

貿易DXが進むなかで、普及してきた技術は、多くが取引のプラットフォーム化や手続きの電子化などのテクノロジーだ。

こうしたシステムでは、データ入力などの大変な人的作業は残ったまま。一方、トレードハブは書類自体をデータ化でき、活用できる。貿易の「ハブ」を目指す理由が、そこにある。トレードハブを導入すれば、ほかのシステムとの連携も容易になり、まさに中継地としてトレードハブが機能できることになる。

▲貿易システムの「ハブ」の役割を果たすトレードハブのイメージ(クリックで拡大)

船積みだけでなく、航空便など広く貿易全体での活用を想定している。業務ノウハウを含んだ貿易書類特化型のシステムは業界でも初めてだという。

そもそもほかの業界などにも適応が容易な汎用性の高いシステムに仕上がったが、「書類で一番難しい部類を達成しており、貿易だけでも十分ニーズがある」(木村氏)。商社やメーカー、フォワーダーなど貿易を行う企業全般が利用でき、現状で圧倒的に引き合いが多い荷主やフォワーダーを主軸に商談を進めている。

同社では、国内にいるトレードハブの開発やメンテナンスに関わるチームを、ベトナムなどオフショアへ拡張することで開発スピードの向上とコスト削減を両立させる対策を打ってきた。

フォワーダーなどが輸出する際に、荷主から届いたデータを整理して、国の通関システムに登録する業務などを自動化する仕組みづくりが、顧客から要望として寄せられ、課題として浮上しているという。木村氏は「今はまだ要望に完全に対応できるわけではない。もっとニーズを吸収して、実際に実務現場で役に立つようにトレードハブを成長させていきたい」と語る。

同社は「第5回 関西物流展」にトレードハブを出展し、従来、書類ベースだった貿易実務を、デジタルデータを生成、活用することで、データ主体の実務に変革できることを紹介する。デジタル活用を進めることで、自社の貿易実務の生産性を高め、少人数での実務を実現させ、新しい体制づくりに寄与させる。デジタルデータを使った実務改善に現場担当者が自ら取り組むことで、DXへの取り組みだけでなく、意識変容を生み出すことができると訴えていく。

「第5回 関西物流展」概要
会期:2024年4月10日(水)〜12日(金)10時〜17時(最終日は16時まで)
会場:インテックス大阪(大阪市住之江区南港北1-5-102)
来場方法:公式ウェブサイトでの「来場者事前登録」が必要(無料)
https://kansai-logix.com

【日商エレクトロニクス 展示ブース情報】
カテゴリー:AI・IoT/情報システム・ソフトウェア
ブース番号:6号館B2-16

出展サービス「Trade Hub」概要