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激動の4月開催「第5回 関西物流展」で、それぞれの取り組みの再確認を

猶予期間は終了、いよいよ問われる物流業界の本気

2024年3月28日 (木)

話題物流業界の最先端の製品・技術・サービスが集結する総合展示会「第5回 関西物流展」が開催される。会期は4月10日から12日までの3日間。改善基準告示の施行後、物流業界にとって激動の時期を迎えて最初の大型展示会となる。

与えられた5年の準備期間に、物流業界はどこまで準備できたか

▲昨年の関西物流展の様子

関西物流展が立ち上げられたのは2019年。労働人口の減少や高齢化などが顕在化し、働き方改革法案による大企業への時間外労働の上限規制適用がスタートした年が、展示会立ち上げの年となった。

当時、働き方改革法施行まで5年間の猶予措置が取られた自動車運転業務。それだけ、一般の企業に課された働き方改革の内容とはかけ離れた自動車運転業務の実情が、当時から認識されていたことがわかる。自動車運転業務には5年の準備期間が置かれ、さらに、一般企業の年間時間外労働上限720時間に対して、運送事業者は960時間と配慮されることとなった。

ついにその猶予期間が終わり、4月1日からの適用が始まる。今回の関西物流展は、この5年間の準備、猶予期間の集大成としての意味合いもある。物流業界の働き方改革に対応できる構造改革へ向けて、さらに、当時はまだ西日本・関西エリアにおける物流改革提案の場所がなかったことから、運輸・倉庫・流通関係の団体・協会が主催して立ち上がった関西物流展は、今では代表的な物流展示会として定着、成長したが、物流業界はこの5年間でどんな革新を遂げたのか。改めて物流改革の現在地と未来への展望を確認する場所にもなるはずだ。

規制的措置の「取り組むべき措置」と「判断基準」を再確認せよ

行政も物流法案の改正などで変革を後押しする。「荷主・物流事業者に対する規制的措置」においては、「取り組むべき措置」への努力義務が、発着荷主と物流事業者に課されることとなった。「取り組むべき措置」となるのは、「荷待ち時間の削減」「荷役時間の削減」「積載率の向上」である。それぞれの取り組みにおいて国が策定した判断基準を基に、状況に応じて「指導・助言」や、さらに「調査・公表」が行われる。さらに、一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告などが義務付けられた。30年に向けた政府の中長期計画では、荷待ち・荷役時間を1人当たり19年度比で年間125時間削減するKPIも設定されており、それぞれの主体的な取り組みが求められている。

政府は、「荷待ち時間の削減」のための「適切な貨物の受取・引渡日時の指示、予約システムの導入など」、「荷役時間の削減」のための「パレット等の利用、標準化、入出庫の効率化に資する資機材の配置、荷積み・荷卸し施設の改善など」、「積載率の向上」のための「余裕を持ったリードタイムの設定、運送先の集約など」への取り組みを「判断基準」として例示しており、その対象は多岐にわたる。

▲Exotecの自動倉庫ソリューション「Skypod」が稼働する様子(出所:Exotec)

物流効率化のための設備投資支援でより具体的に示された機器、例えばトラックローダー、フォークリフト、パレタイザーやデパレタイザー、自動倉庫、コンベヤー、AMR(自律走行搬送ロボット)、AGV(無人搬送車)、自動仕分け機、ピッキングシステムなど。また、システム関連でもバース予約システムのほかに、倉庫管理システム(WMS)、伝票電子化・物流EDI、RFIDなどの自動検品システム、AI(人工知能)カメラ・システムなどへ取り組み、導入も判断基準とされることが想定できる。規制的措置導入を前に、こうした機器やシステム導入で、どれだけ具体的な荷待ち・荷役時間の削減や積載率の向上での成果を出せるのか、物流展示会でより具体的な検討を進めておく必要があるだろう。

運送事業もすでにデジタル化が「前提」、そのハードルもますます高く

また、一定規模以上の荷主企業には物流統括管理者の選任が義務付けられることとなった。まずは、経営レベルで物流の改革を判断する体制・組織作りにも取り組む必要がある。物流統括管理者にかかる責任も大きくなり、経営レベルで物流を可視化するデータ基盤の管理システム運用などでのDX(デジタルトランスフォーメーション)提案も活発になるはずだ。

改善基準告示の施行に伴い、トラックドライバーの働き方の見える化も、DXを通じて精度を高めなくてはならない。デジタコや運行管理システムによる労務管理効率化の準備を整えることが、適正な運賃、料金収受の前提ともなる。また、多重下請け構造の是正に踏み込む「実運送者管理簿」の作成など課される事項が増えていくのも、もはやデジタル管理が業界標準となることを促しているようにも思える。ポスト24年にふさわしい運送事業者となれるかどうかの分岐点で、トラックドライバーの賃金水準上昇に向けた原資を確保する体制が取れない運送事業者は、退場を余儀なくされるだろう。

▲運行管理業務一元化のシナリオ(クリックで拡大、出所:国土交通省)

また、政府は点呼や運行指示でのDX導入と効率化も推進しており、これまで事業所内に置いた管理者によって行われる必要があった点呼、運行指示が、まずは複数営業所の一元管理へ、続いて運行管理業務を請け負う「他社が」「遠隔で」点呼、運行指示を実施することを認める「事業者間遠隔点呼」「運行指示の一元化」も可能にし、最終的には「共同運行管理」へと発展させる方針を示している。これにより、運送事業者は点呼などの管理業務を、専門の業者に外部委託することも可能になり、運送事業者の存在価値自体も大きく見直されることになる。運送事業者、ドライバーにとって大きな効率化も期待できるが、一方、デジタル技術に対応できない事業者との格差拡大にもつながる。

DXを進めて高度運行管理を請け負える事業者と、請け負えない事業者に分かれ、新たな運送業界再編を促すのではないだろうか。倒産、廃業、M&Aのほかにも、運送事業者の事業のあり方自体も変化して再編が進み、デジタル領域からの参入など、業界のプレーヤーの顔ぶれも大きく変わっていくかも知れない。DXなどまだまだ先と決めつけず、業界の最新動向に注意しながら、今やるべき準備をしっかりと進めておくことが必要になっている。