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物流施設全体の最適化をはかる統合制御システム「L-Sync」

課題解決のエキスパートを目指す、IHIの底力

2024年8月23日 (金)

話題IHIはエネルギーや物流などの社会インフラ、航空エンジン、産業機械など多岐にわたる分野で事業を展開する総合重工業グループだ。昨今、物流業界には倉庫向けのマテリアルハンドリング機器(以下、マテハン機器)や自動化システムを提供する企業が多く存在するにもかかわらず、現場には未解決の課題が山積している。安易にDX(デジタルトランスフォメーション)化を進めても、根本的な課題解決には至らないことが多い。また、導入した機器同士の連携がうまく取れないことによる効率低下やコスト増加も無視できない。

IHIはこのような課題に対処するため、統合制御システム「L-Sync(エルシンク)」を独自に開発した。L-SyncはWMS(倉庫管理システム)とマテハン機器をつなぐ中間システムで、各マテハン機器の統合・制御を得意とする。人的リソースの管理にも応用可能で、本システムを導入することで倉庫全体の稼働効率を高めるとともに、無駄なコストを削減することができる。

労働力不足が深刻化する物流業界において、省人化を強力に推進するL-Syncが発揮する存在感は大きい。今回はL-Syncの特徴や強み、開発に至るまでの過程について、IHI物流産業システムイノベーション部の酒匂直人氏、藤村英和氏、本田昂大氏の三方に話を聞いた。

物流施設の全体最適化をはかる“L-Sync”の主要機能とは

L-Syncは物流現場で使用される多様な機器やシステムを統合し、効率的に制御するために開発されたIHIのソリューションシステムだ。特に、物流現場の「全体最適化」を実現するための機能を同システムは備える。

▲プロジェクトセンターイノベーション部次長の藤村英和氏

まずは物流リソースの見える化機能だ。これにより、各マテハン機器の稼働状況や作業進捗をリアルタイムで把握することができる。「従来の制御システムは複数のマテハン機器を同調させていないことが多い。そうすると能力を十分に発揮できていない機器や、逆に稼働しすぎて無駄なエネルギーを消費している機器が出てきてしまう。そうならないために全体を俯瞰、調整できるシステムが必要」と藤村氏。

L-Syncは各マテハン機器を統合・制御することでそれぞれの稼働率を最適化。作業の効率化をはかりつつ、エネルギー消費を抑え、コスト削減につなげる。異なるメーカーのマテハン機器やシステムであっても一括制御が可能な点もL-Syncの強みだ。また「シミュレーション機能」を活用すれば、物流現場の運用シミュレーションを事前に行えるため、運用時に生じるトラブルやボトルネックを未然に防ぐことができる。

▲「L-Sync」サービス概要(クリックして拡大)

作業を見える化する機能があるのも、L-Syncの魅力のひとつ。ロボットをはじめとするマテハン機器の運用だけでなく、作業者・労働者の動きや作業プロセスなどの人的リソースについても可視化することが可能だ。数字で表しにくい人的リソースの状況が分かると、生産性の低い作業プロセスを洗い出し、改善提案につながるデータが収集できるようになる。

▲プロジェクトセンターイノベーション部の本田昴大氏

これらの機能を組み合わせることで、L-Syncは現場生産性の飛躍的な向上を目指す。本田氏が「L-SyncのSync(シンク)はSynchro(シンクロ)に由来する。各マテハン機器を調和させる、物流現場における指揮者のようなイメージ」と語ったように、同システムはヒトとモノをコントロールすることで、スムーズな作業を実現する。

またIHIではL-Syncの提供だけでなく、データに基づいたソリューションの提供も行っている。そのため、収集したデータの活用方法が分からないと感じている企業も安心して利用できる。アナログから脱却できない現場の実情が、物流事業者のDX化を阻む大きな障壁になっている。せっかく収集したデータも、活用法が分からなければその価値を失う。

▲プロジェクトセンターイノベーション部部長の酒匂直人氏

酒匂氏は「稼働率の高い機器がかえってボトルネックになっていることもある。しかし、データを取らないとそういった課題を解決するスタート地点にも立てない。IHIにはデータから課題を洗い出せる人材がいて、サポート体制も整っている」と話す。

IHIは物流施設のインテグレーターとして、多様化する顧客ニーズに応え続ける。L-Syncのような統合制御システム自体は決して新しいものではない。IHIは以前からL-Syncに似たサポートシステムを開発してきた経験があり、業界のパイオニア的存在として、物流業界を牽引してきたという自負がある。

今まではあくまで個別のケースに応じて、オーダーメイドでシステムを開発・納入してきた。しかし、L-Syncは物流業界全体の将来的なニーズを想定し、“あらゆる機器の連携に適用できる標準化された制御システム”としての展開を目指す。藤村氏は「L-syncの構想はずっと以前からあった。IHIには積み重ねてきた歴史がある」と話す。

IHIがL-Syncの開発に取り組んだ背景には、複雑化した物流現場の運用管理を一元化し、生産性を最大化するという使命感がある。もともとIHIはマテハン機器をはじめとするハードウェアの提供に強みを持っていた。その延長で、ハードウェアを一括制御し、各クライアントの倉庫運営を効率化する統合制御システムの開発に着手した。

藤村氏は「われわれは総合物流システムメーカーであり、マテハン機器を前提としたWMSを開発してきた。機器の扱いにまで精通したシステムの実績があることはIHIの強み」と自信をのぞかせた。

▲無人省人化機で構成するシステム構想(クリックして拡大)

今回の国際総合物流展2024で紹介する「L-Sync」の開発に際しては、これまで触れてきた現場の課題に寄り添い、その声を反映させることを重視している。マテハン機器を提供し、常に現場に近いところにいたIHI独自の知見を活かして、単なるシステムの提供に留まらず、物流業界全体の効率化・最適化を目指す。

実際にこれらを実現することは容易ではないが、IHIが改善を止めることはない。あらゆる現場に適したソリューションを提供するために、IHIはハードウェアとソフトウェアを一体化させ、「物流施設のインテグレーター(課題解決のエキスパート)」としての役割を強化する。

物流展は見本市ではなく、クライアントの生の声を聞ける貴重な場

今回の国際総合物流展2024に際して、IHI物流産業システムのイノベーション部は物流業界をよくしたいという熱く、大きな想いを抱いていた。特に目立ったのは「ハードウェアやソフトウェアをアピールしたい」という気持ちよりも、「物流事業者のインテグレーターでありたい」という想いの方が勝っているという点だ。

▲展示会での実機プレゼンテーションシステム構成

自らもシステムの設計に携わる藤村氏は「物流展をわれわれの製品を押し売りする場とは考えていない。むしろクライアントのニーズ、困りごとを生で聞ける貴重な場として捉えている。それが今後のソリューション開発にもつながる」と話す。

「個々の機器・システムを販売して終わりではなく、運用から得られたデータを活用し、具体的で新しい解決策を提供することがわれわれのミッション」(酒匂氏)

本田氏は「前回の物流展でも大勢のクライアントにわれわれのソリューションを紹介できた。物流展は普段の業務ではリーチできないお客様とも接することができる機会。『物流課題をトータルで解決するインテグレーター』としてIHIやL-Syncを認知してもらえばうれしい」と話し、国際総合物流展への意気込みを新たにした。

「IHI物流産業システム」サービス紹介

■IHI物流産業システムHP(展示会告知ページ)
https://ihi-logistics.com/news/detail/35

■IHI物流産業システム公式youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC3bnQ8Its7bznBRpc9f-d8g

<問い合わせ先>
IHI物流産業システム営業部 営業グループ
03-6204-7231

「国際物流総合展2024」出展情報

カテゴリー:庫内作業効率化
ブース番号: 3-601

公式サイト
https://www.logis-tech-tokyo.gr.jp/ltt/