話題格子状に組まれた立体のグリッドによって倉庫の上部空間まで格納スペースに活用できる保管能力。その上部を高速で駆け回る複数のロボットが、グリッド内に格納されたビン(専用コンテナ)をつり上げ、人の作業スペースであるポートまで搬送する機動力。庫内を歩き回る必要なく入出庫作業に従事できるオペレーターフレンドリーな仕様など、ノルウェー発のロボットストレージシステム、AutoStore(オートストア)の日本上陸は、「なるほど、これが未来の倉庫か」と大きなトインパクトを残した。
入庫から搬送、保管、ピッキング棚出しまで、特に物流現場の煩雑で人為ミスが起こりやすい工程を、一気に効率化できるその優れた機能は、後発のGTP(Goods to Person)システムや、AGV(無人搬送車)を活用した搬送・ピッキングシステムなどとの比較でも、「その保管効率の高さ、高密度収納力については絶対的な優位性があるとの評価は揺るぎない」と、AutoStore System(オートストアシステム、東京都港区)マネージングディレクターの安高真之氏は語る。日本の物流現場への2016年初導入から今に至るまで、限られた倉庫空間の有効活用に貢献し、倉庫の運用の仕方に新しい発想をもたらしたシステムと言えるだろう。
その一方で、「あまりにファーストインパクトが強かったために、日本登場時のままで、今のAutoStoreの情報にアップデートできていない人も多い。世界の数々の現場で実績を積んで、保管能力だけではなく、スループット能力なども大きく進化している今の姿に情報更新してもらいたい」(安高氏)
進化したロボット、R5 Proが導く物流現場の最適解
まずロボットがどのように進化しているのか。同社では、これまで全世界の現場で稼働してきた信頼性の高いロボットに加え、EC(電子商取引)などマルチシフトを必要とする現場運用に適した「R5 Pro」と、より容量の大きなビンに対応する「R5+ Pro」を投入した。
▲「R5 Pro」(左)と「R5+ Pro」(右)
シニア システム デザイン アナリストの横山直史氏は、「R5 Proにおけるこれまでのロボットとの最大の変化はバッテリーの変更。これまでの鉛バッテリーからリチウムチタン電池に変更したことで、短時間での充電、長時間稼働を実現して生産性の大幅な向上を実現した」と語る。
これまでのバッテリーが15分充電で75分の稼働だったのに対して、R5 Proでは7分の充電で3時間の稼働と、半分の充電時間で稼働時間は2倍にまで引き延ばしている。ロボットの稼働時間延長により長時間稼働時の1台あたりのスループットは既存ロボットより14%向上することができ、ロボット台数の見直しや、ロボットのルーティングの最適化で、システム全体の生産性向上を支援する。
また、充電時間の短縮によって、最大10台のロボットをわずか1台の充電器で運用することも可能になった。「既存のロボットは、100台の運用では75台の充電器を必要としていたが、R5 Proでは10台の充電器で対応可能となることで、充電器の設置スペースも削減。ビンの保管スペースが生まれ、より多くのアイテムを保管、収納性が向上する」(横山氏)
R5 Proの高い生産性に合わせたロボット台数の削減、充電器の削減ができれば、電気インフラ規模の縮小やコスト、メンテナンスコストの削減などのランニングコストを抑制した運用体制も実現する。EC(電子商取引)などで求められる大量の商品、大きなSKU取り扱いに対応し、マルチシフトで稼働する倉庫現場に最適な機能へと進化しており、評価の定着している保管能力だけではなく、スピードと処理能力、変化への柔軟な対応を求められるECなどの現場構築でも、最適解の1つとなっている。
作業者への配慮が生産性を上げる、新型作業ポート、FusionPort投入
一方、生産性向上のみならず、作業者にとっての快適な作業環境提供に配慮した進歩も見逃せない。「新たな作業ステーションとして開発したFusionPort(フュージョンポート)は、作業負荷を低減し、視認性を高めたデザインを採用し、さらにこれまで1つだった開口部を2つ設けることで、生産性と効率性を向上させるオペレーションの見直しにも役立つ」(横山氏)
ビン開口部を15度傾斜させたことで、収納・取り出し作業にかかる肉体的な負荷が軽減されるとともに、ビン内部もより見やすくなっており、作業者の満足度とパフォーマンスを向上させる。処理能力においては、同社が提供するポートの中でも最大の能力を持つリレーポートに次ぐ、1時間あたり最大550ビンのスループット能力を備えながら、グリッド外のスペースを取らないコンパクト設計もまたフュージョンポートの特色。「設置スペースを取らない設計のため、コンベヤーやソーター、カート、などほかのソリューションを設置するスペース確保も容易になり、よりスムーズな自動化現場のフロー構築にも役立つ。今後の連携や全体最適化における重要な改善点となる」(横山氏)
こうした、モジュールごとの進化によるスループット能力の向上はもちろん、グローバルな現場ごとの要求に応えてソフトウェアの制御能力でも進化を続けている。ロボット台数やポートの増設でスループットの増加に対応するのではなく、ロボットに最適なルート探索を実現するアルゴリズムを備えた制御ソフト「ラウター」によって高効率な最適運用を実現するなど、目に見えない部分での進化こそが、AutoStoreの生産性向上を支えているとも言える。「すでに日本の市場に導入されてから10年近くが経過しているが、いまだに導入企業からシステムを入れ替えるといったケースはなく、長い付き合いとなっていることこそが、AutoStoreの信頼性の証明。ミッションクリティカルな物流現場課題に対応し、24時間、止めることのできない現場稼働を支える安心感こそが、ほかのシステムにはないAutoStoreのもっとも誇るべき実績」(安高氏)
この10年間で売り上げも10倍となり、世界では1450件、日本国内だけでも70件以上の販売実績は、導入企業のオーダーやサポートに対応して効率化とともに物流を止めないこれまでの取り組みや、日々成長し続けるシステムとしての強みの証明でもある。
AutoStore導入は、企業の成長戦略、あるべき未来像実現への決意表明
労働人口の減少、物流現場効率化の取り組み義務化など、日本の物流市場における自動化ソリューションの必要性は増すばかりだ。特に安高氏は、日本の特色である真面目な国民性による現場運営の変容と、他国に比較して低水準の賃金水準の変化なども、自動化ニーズを後押しすると指摘する。
これまで、日本の物流現場を支えてきたのは、勤労意欲の高さや真面目さであり、属人的な運用に頼らざるを得なかったが、「少子高齢化のみならず、スポットワークなど働き方への意識の変化も、現場自動化への転換を促すこととなる。日本の物流、日本人らしい働き方にAutoStoreを組み合わせることで、快適で平準化したサステナブルな現場運用を実現したい」と安高氏は言う。
また、これまでは日本の労働単価の低さから、欧米のように人件費をリスクとして自動化・省人化が促される環境になく、自動化投資のハードルとなっていた日本の物流市場だが、今後、着実に労働単価は上がり続け、将来的な人件費リスクへの備えには今から手を打たなければという認識も高まっている。事業規模に関わらず、これからの物流にふさわしい現場構築をどう計画し、どう投資していくか。欧米のように1年から3年での投資回収は難しくとも、数年後の事業成長を見据えた経営者の方向性と戦略、けん引力が問われるときだと言える。
「AutoStoreの参入時期と比べれば、自動倉庫やAGVなど、はるかに多様なソリューションが提供され、選択肢も増えている。ライバルが増えている状況は、自動化ツール市場の活性化の大きな後押しでもあり、ぜひAutoStoreの実力を検証する機会として、積極的に比較検討して欲しい。10年前のイメージで止まっている方には、それを更新してもらう機会」。政府からの補助金など、導入を後押しする環境も整えられたことで、今までとは違う規模感の事業者からの相談も増えているといい、今こそ思い切った投資で未来に向けた先手を打つチャンスと考えられているのだろう。
企業としてのどんな夢を託し、どんな未来の現場作りを目指すのか、AutoStore導入はその決意表明である。そして、未来の快適で明るい物流現場には、いつもその中心にAutoStoreがある、安高氏はきっとそんな物流の風景を想像しているのではないだろうか。
■AutoStore (Japan)URL: https://www.autostoresystem.com/jp
■国際物流総合展
カテゴリー:庫内作業効率化
ブース番号: 2-603
公式サイト
https://www.logis-tech-tokyo.gr.jp/ltt/
■国際物流総合展AutoStoreブースツアー&セミナー申し込み:https://www.autostoresystem.com/jp/register-logis-tech-expo