イベント本誌LOGISTICS TODAYが野村不動産を招いて最新の物流課題を議論する「第四回物流議論拡大版」が5日開催された。
この日のメインテーマは「CLO」(物流統括管理者)。トークセッションでは、CLOのあり方や責務、具体的な人物像を明らかにする目的で議論が交わされた。
CLOの担うべき責務と人物像
冒頭、シグマクシスにて物流関連のコンサルティングを行う池田祐一郎氏が、CLOに課せられる責務を解説した。同氏によるとCLOが担うべき責務は「法令順守」「ステークホルダーマネジメント」「合理的なコスト最適化」の3つ。
法令順守は荷待ち・荷役時間の短縮、時間外労働規制の順守など、CLOに求められる最も基本的な責務となる。ほかにも、社内外のステークホルダーと協力関係を築き、業務の自動化や共同化を進め、コストの最適化を図ることが求められる。池田氏はCLOの責務を具体化することで、CLO選任に臨む各企業を後押しした。
その後、話題はCLOの具体的な人物像に移る。野村不動産の宮地伸史郎氏(物流事業部副部長)は「CLOにはIQだけではなく、EQ(心の知能指数)が必要なのでは」と分析。これに対してはさまざまな意見が寄せられたものの、CLOにはリーダーシップと、それを支えるEQが必要という意見は、登壇者の間で一致した。
議論が進み、CLOの要件が明示されるにつれ、登壇者の間で「それだけのことをこなせる人材が果たして存在するのか」といった疑問が持ち上がった。池田氏は「一個人がCLOの責務をすべて担う必要はない」とし、チームビルディングの必要性を訴えながらも、強力な「リーダーシップ」と「プロジェクト管理」能力を持つリーダーが必要だとした。「CLOはオーケストレーター(指揮者)のようなもの。ステークホルダーをしっかりまとめ上げ、プロジェクトをやり切るだけの“腕力”がなくてはいけない」(池田氏)
LOGISTICS TODAY編集長の赤澤裕介は「大手デベロッパーは、ステークホルダーのまとめ役として有力なのではないか」と、野村不動産の稲葉英毅氏(物流事業部長)に水を向けると、同氏はその説を肯定はしなかったものの「不動産デベロッパーは物流に染まっていない中立な立場。テナント企業の間に入ってネットワークをつくったり、共同化を働きかけたりすることはできると思う」と話した。
これを受けて、東京海上スマートモビリティの大野有生氏(取締役兼東京海上ディーアール CDD)は、「働き手がどんどん減っていく世の中で、物流は労働集約型から装置産業型の産業に変わる。そうすると機械や施設といったアセットを持てるプレイヤーが重要性を増す」とコメント。今後、物流業界において、資金力がある大手デベロッパーが存在感を増すという赤澤の意見を支持した。
議論の終盤、大野氏は「EC(電子商取引)の発達もあって、若い人にとって物流は身近なものになりつつある。今後、企業の中でCLOの立場が強くなれば、業界全体を盛り上げることにつながる。これは千載一遇のチャンス。若い人にはもっと、物流って『かっこいいぜ』ということをアピールしたい」と目を輝かせた。
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