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安全教育DXで変わる運送業経営、ロジポケが主導

2025年6月30日 (月)

話題事故削減は交通産業であるトラック運送業にとって永遠のテーマといっても過言ではない。また、行政処分の厳格化が始まるとともに、トラック新法が成立し事業許可更新制が間近に迫った今、コンプライアンスの強化は待ったなしと言える。

2024年問題をはじめとする制度的な変化の波を受け、業界ではドライバーへの教育体制の見直しや強化に本腰を入れる企業も増えている。そうしたなかで注目を集めているのが、X Mile(クロスマイル、東京都新宿区)が開発・提供する物流向けSaaS「ロジポケ」に搭載された教育管理機能だ。

ロジポケは元々、点呼管理や車両台帳など運送事業者に必要な業務をクラウドで一元管理できるプラットフォーム。しかし、教育管理機能を備えていることで、ほかの運送業向け管理システムとの違いを際立たせている。

X Mileの安藤雄真氏は「もちろん、法令を順守してやるべきことをやることは大事」とした上で、「一方で、ドライバー教育については、“実施したことに満足してしまいがち”で、ドライバーの意識や行動に十分な変化が現れていないケースも見受けられる」と指摘する。「結果的に、法令上のノルマをクリアしてはいても、事故件数の低減などの効果が出ず、時間と費用をかけて法順守したという形だけを整えているというケースも散見される」という。

ロジポケでは、こうした形式的な教育ではなく、事故を未然に防ぐための本質的な教育の提供を重視。ただ単に所定の時間、教材を眺めて終わるだけではない、現場に実効性のある教育コンテンツを提供しているという。

▲安藤雄真氏

あらゆる教育形態に柔軟対応する設計思想

ロジポケの教育機能の大きな特長は、「どんな会社の教育スタイルにも対応できる柔軟性」にある。従来の集合研修や紙の教材に頼る教育から、スマートフォンやPCを使った動画学習、個別教育の進ちょく管理まで、教育方法の多様性に対応したシステム設計がなされている。安藤氏はこう説明する。

「運送業は中小企業が多く、現場のやり方も千差万別。毎月ドライバーを集めて教育を実施している会社もあれば、動画で個別に行っているところもある。ロジポケはそのどちらにも対応可能で、どんな形態でも記録がきちんと残せるようになっている」

法定で求められる12項目の安全教育や、テールゲートリフターなどの特別教育に加え、荷主ごとのルールや注意事項を反映した「個別コンテンツ」などにも柔軟に実装可能だ。動画、PDF、画像、スライドといったさまざまな形式の教材がアップロード・共有できるため、現場に即した実践的な内容を、企業ごとに用意することができる。

▲ロジポケ教育管理機能の動画教材イメージ

教育記録の「見える化」とコンプライアンス対応

ロジポケの教育機能は、単に教材を配信するだけでなく、「いつ、誰が、どの教材を視聴・受講し、どんな理解度だったか」といった記録を自動で蓄積し、台帳として一元管理できる。これにより、監査時や事業許可更新時にも活用できる帳票の出力が可能となる。

特に注目すべきは、教育の記録が「見える化」されることで、事故やトラブルの発生時に迅速な振り返りと再教育が可能となる点だ。紙の記録では不十分だった“教育の効果検証”がデジタルで実現されることは、運送現場における教育の質と信頼性を大きく高めることになる。

「単なる“証明のための教育”ではなく、事故を本当に減らすための教育を、かつ負担少なく実行できる。これがロジポケの狙いだ」と安藤氏は強調する。

教育が経営に与える好影響──採用・営業にも効果

興味深いのは、ロジポケを活用して教育体制を強化した結果、ドライバーの採用活動や荷主開拓にプラスの影響が生まれていることだ。ある導入企業では、「ロジポケで教育管理を徹底したことを荷主に説明することで、新規取引がスムーズになった」との声もある。

また、求職者側の意識も変化してきている。特に若年層ドライバーの間では、「成長機会がある会社」「教育をきちんとやってくれる会社」が職場選びの重要な指標になってきているという。こうした点でも、教育を整えることは企業の「採用力」や「定着力」を向上させる武器となっている。

前述したように、ロジポケは「事故を減らす本質的な教育」を実現するために、柔軟な教育形態とコンテンツ対応、記録の一元管理を可能とする仕組みを提供している。しかし、その真価はさらに先にある。「教育DX(デジタルトランスフォーメーション)」は単なる法令順守の枠を超え、企業の生産性・信頼性・人材戦略にまで深く関与するからだ。

「事故を起こさない組織」を作るには、現場を動かす中間層がどれだけ従業員に向き合い、適切な言葉でコミュニケーションできるかが問われる。管理者がドライバーと同じ目線に立ち、事故の背景にある“なぜ”を分析し、ドライバーの行動変容を導く力が必要だ」と安藤氏は語る。

ロジポケでは、こうした「マインドセットの再構築」「従業員理解」「伝え方の工夫」といったソフトスキルに着目した管理者研修を、希望企業向けに提供。単なる分析に留まらない“実効力ある安全管理”の人材を育てる支援を行っている。

荷主との連携が加速させる「商品事故防止」の現場対応

教育DXが真価を発揮するもうひとつの領域が、荷主との連携による「商品事故防止」だ。従来、ドライバー教育は企業内部の取り組みとされてきたが、近年は荷主企業との協業による教育の高度化が進んでいる。

こうした背景から、ロジポケでは荷主企業が提供するマニュアルや商品取り扱いの注意点をそのまま教育コンテンツ化し、運送会社がその内容を確実にドライバーに伝達できる仕組みを整えている。この仕組みによって、商品破損や配送トラブルの減少につながり、荷主との信頼関係構築にも寄与している。実際にある運送事業者では、荷主主催の「安全会議」にロジポケを活用した教育資料を提出し、協業体制の強化と評価の向上に成功した事例もあるという。

「運送中の事故で商品が破損したら、荷主の製造・販売計画そのものに大きな影響を与えるケースがある。過去には、原材料の破損で製品の製造が一時中止に追い込まれた例もある」(安藤氏)

業界内では「教育はコスト」と捉える向きもあるが、安全運転を担保する確実な教育は、サプライチェーンマネジメントの観点からは、あだやおろそかにできない事柄といえる。

「ロジポケの教育機能は、大きなお金や人員をかけずに、事故を“未然に防ぐ”仕組みを企業に提供している。事故を減らすことが経営に与える影響の大きさは、今や無視できない」と安藤氏は語る。

多言語対応や動画コンテンツの更新頻度も差別化の要に

もうひとつ注目すべきは、ロジポケが提供する教育コンテンツの「鮮度」と「量」だ。特に外国人労働者を採用している企業では、多言語対応や直感的に理解できる動画教材の整備が不可欠となる。

「ドライバーは1回見た内容には飽きやすく、毎年同じ12項目ではモチベーションも維持できない。ロジポケでは毎月新たな教材をアップデートしていて、キャラクターなども使いながら、飽きずに受講してもらえるような工夫を施している」(安藤氏)

この“受け手視点”を徹底したコンテンツ設計こそが、教育の効果を最大化する鍵だ。単に「見た」「聞いた」だけではなく、「行動が変わる」ことに主眼を置いたアプローチが、ロジポケの支持を集めている要因でもある。

教育は“義務”から“戦略”へ──「事業更新制」時代の生存戦略

2024年から本格化する事業許可の更新制は、運送業界にとってひとつの分水嶺となる。コンプライアンス違反や教育不備があれば、5年ごとの更新が通らない可能性もある。これは、まさに“生き残れる会社”と“淘汰される会社”を分ける制度である。

「企業ごとに教育のやり方は違っていい。でも“結果として事故を減らし、コンプライアンスを守れているか”が問われる時代となっている。ロジポケは、そのための階段を一歩ずつ登れる仕組みを提供している」と安藤氏は語る。

今、教育は義務として受け身にこなすものではなく、企業を成長させるための「経営戦略」として位置づけ直されつつある。教育の在り方を見直すことこそが、25年以降の物流業界の命運を分ける鍵になるだろう。

「ロジポケ」サービスページ

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