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話題運送業界の安全運転教育は、管理者がドライバーを集めて行う対面講習が一般的だったが、ドライバー不足や2024年問題を背景とした労働時間規制の強化など、業界を取り巻く環境は急速に変化。時間や場所に縛られずに学べるeラーニングの活用が急速に広がりつつある。
そうしたサービスの中で俄然存在感を増しているのが、キャブステーション（東京都新宿区）が提供するeラーニングサービス「グッドラーニング！」だ。「安全教育は“受けたい”と思って受けている人はいない。だからこそ、“親しみやすさ”が重要」。そう語るのは、グッドラーニング！の教材開発を担当する小笠原氏だ。もう一人のキーパーソンである古河氏も、「動画を見ること自体が面倒にならないよう、見せ方や演出には細部まで気を配っている」と話す。
▲（左から）「グッドラーニング！」の教材開発を担当する小笠原氏、古河氏
同サービスが提供するのは、国土交通省が定める法定12項目をはじめとした安全運転教育。動画形式の教材で構成されており、ドライバーはスマホやパソコンからいつでも受講が可能だ。受講者が自然と興味を持てるよう、講義中にはオリジナルのキャラクターが登場。「安善あみ」「五乗ふうこ」「小虎くるみ」「菅生すずか」と名付けられた4人の女性キャラクターが、それぞれ運行管理者やドライバーなどの役割を演じ、学びをサポートする。こうしたギミックは教育コンテンツでは枝葉の要素といえるが、キャラクターはユーザーからの認知も高まっているそうで、物流業界向けのデジタルサービスとしてはかなりユニークな存在だ。
▲異なる立場の4人の女性キャラクターが講義を彩る
一方の内容も、同じテーマであっても毎年教材を更新し、飽きさせない工夫がされている。「毎年のリニューアルで、常に新しい発見や気づきがあるよう意識しています」と古河氏は語る。
こうした教材づくりを支えているのは、わずか4人の製作チームだ。小笠原氏・古河氏の2人の女性スタッフが主導し、原稿執筆や動画編集、イラスト製作、ドラレコ映像の分析までを役割分担して製作を行う。業界未経験からのスタートだったというが、現場の声を取材しながら実践的な教材を磨き続けてきた。また小笠原氏および古河氏が運行管理者の資格を持っているほか、フォークリフト免許、交通心理学、NASVA（ナスバ、自動車事故対策機構）の講師資格を持つメンバーもいるなど、運輸安全に関する知識と素養を備えた人材が揃っている。
▲安全教育教材の画面
「最初はトラックの種類も知らない状態からの出発だった。でも逆に、“何も知らない人にも伝わる教材”を意識する原動力になったと思う」と古河氏。実際、内容の正確性には妥協せず、法令の改正があれば即座に教材に反映。これは、同社が旅客事業者向けに提供する運行管理システム「バスキング」など、頻繁かつシビアな分野での制度変更での開発実績があるからこそできる対応力といえるだろう。
トラック協会との連携と、導入企業の拡大
グッドラーニング！は、個別の事業者に限らず、全国20以上のトラック協会やその支部と契約しており、会員企業に無償でサービスを提供している。特に、対面講習の開催が困難な初任運転者向けの講習において、その利便性が高く評価されている。
「夜勤明けや荷待ちの時間など、業務の合間にスマホで受講する方が多い。アプリのインストールも不要で、ブラウザーから簡単にアクセス可能。待機時間などのスキマ時間で受講できるので、現場のドライバーが利用しやすい仕組みとなっている」と古河氏。受講後の記録簿出力や修了証発行もすべてオンラインで完結し、各種情報がワンストップで管理できる設計になっている。
▲ドライバーごとに講習の履修状況も可視化（クリックで拡大）
こうした利便性が評価され、2025年6月時点で発行済みアカウント数は5万件を突破。また、導入した事業者からは「事故が減った」との声も多く寄せられている。「現場からのこうした評価は大きな励みになる」と小笠原氏は語る。
外国人ドライバーへの対応と未来展望
あらゆる産業で国内の人材採用が困難になりつつある今、特定技能制度などを通じて増加が見込まれる外国人ドライバーへの対応も急務となる。同社ではこうした情勢を鑑み、すでに、中国語、インドネシア語、ポルトガル語などへの教材の多言語対応を進めている。現在はまず法定12項目への対応を優先しているが、古河氏によると「マナー教育やエコドライブ、アンガーマネジメントなどの特別講座も含め、多言語化を進めていく計画」だという。
さらに今後は、受講データの活用による個別最適化を進めているほか、他社の運行管理システムベンダーとの提携も始まっており、各種運送業向けシステムとの連携を加速させていく。教育と現場データの連動によって、安全文化の定着を一層加速させるとともに、より健全で効率的な経営に寄与していく。
