
(出所:フロスト・アンド・サリバン)
調査・データ米市場調査会社のフロスト・アンド・サリバンは15日、世界の化学リサイクルの現状に関するレポートを公表した。熱分解やガス化、解重合などの先進技術が廃棄物の資源化を推進しており、企業はこうした動きと連携することで、ESG(環境・社会・ガバナンス)主導の成長を実現できるとしている。
レポートによると、低炭素経済への移行は、生物由来原料の需要を押し上げており、化学リサイクル業者は、化石燃料由来プラスチックとバイオベースプラスチックの両方への対応が求められている。
また、各国政府は使い捨てプラスチックの削減を目指し、規制に乗り出すなど拡大生産者責任(EPR)の枠組みを構築している。こうした規制によって、機械的リサイクルが困難な複雑な多層構造の製品や汚染されたプラスチックのリサイクル方法への関心が高まった。
技術面ではポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマーの解重合が可能になるなど、リサイクルの新たなビジネスを生み出す素地となっている。さらにリサイクル業者や化学企業、材料科学者による共同研究により、リサイクル性と循環性を重視した新しいポリマーも生み出されるようになった。
こうした流れを受け、廃棄物処理事業は急速にセクター横断的になってきており、化学リサイクル業者は自動車や電子機器の業界などと提携し、原料の品質を標準化して供給を確保する共同収集や選別、リサイクルのインフラを構築している。
このほか、メーカーとの連携で、使用からリサイクル・再利用へと循環するクローズドループシステムを構築する動きもある。こうした連携は、トレーサビリティの向上だけでなく、製品開発段階におけるリサイクル性設計の促進にもつながっている。
モジュール式リサイクルユニット、デジタル廃棄物トレーサビリティ、革新的な脱重合方法といった新たな技術の開発に取り組むスタートアップも増え、業界全体の変革を加速させている。
デジタル技術の活用も進んでおり、高度なAIとマシンビジョン技術が、手作業を減らし、材料の識別の正確性を高めており、リサイクルの運用効率とコスト削減を実現した。原材料の原産地、加工経路、リサイクル成分含有量の認証にブロックチェーンの導入も進んでおり、特に医薬品や包装など規制の厳しい市場で重要視されている。
ただ、こうした化学リサイクルの拡大の懸念として、プロセス化学、自動化、規制枠組み、AIシステムに精通した熟練した人材の確保を指摘。専門人材の不足は、高度なリサイクル技術の導入と最適化における重大なボトルネックとなっているとした。
レポートではこのほか、化学リサイクルが急速に進化するなかで企業に求められる競争力維持のための戦略などを解説している。
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