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内航船のAI自動配船実験、計画時間60分の1に短縮

2020年6月30日 (火)

調査・データ出光興産とグリッド(東京都港区)は6月30日、AIによる配船計画の最適化を目指す実証実験が完了し、計画作成時間を従来の60分の1に短縮することに成功した、と発表した。

これまでは、効率的な配船計画を作成するのに熟練担当者の経験や「職人技」が必要だったが、これを深層強化学習などのAI技術を用いて自動化・最適化することで、1か月分の計画を数分で立案できるようになった。

また、AIによる配船計画は輸送効率も従来と比べて20%改善。運航効率や製品の積み付けバランス、航海時間、荷役時間などの制約条件が考慮されており、配船計画担当者や海運会社にとって「違和感のない、現実的な」配船計画を作成できたという。

(出所:グリッド)

この実証実験で使用した深層強化学習は、囲碁や将棋などのゲームで世界チャンピオンに勝利したことで一躍有名になったが、学習させる組み合わせの数が膨大になる社会課題への活用は困難であると言われてきた。配船計画ルートの組み合わせ数は、囲碁の「10の360乗通り」よりもはるかに多い「10の800乗通り」存在しており、この膨大な組み合わせ数から最適ルートを出力するために、深層強化学習だけでなく、複数のアルゴリズムの組み合わせを用いた。

AI技術の開発を担うグリッドは、同実験の成功について、「世界的に見ても類を見ない、深層強化学習の社会課題への応用によるAI配船計画最適化の成功は、サプライチェーン全体の最適化への大きな足掛かりとなると期待している」とコメント。今後は、「製油所・油槽所・船舶の数をさらに増やしたAI配船計画モデルの検証を実施するとともに、システムを構築するための仕様を検討し、2021年のシステム運用開始を目指す」という。