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3年の猶予期間待たず断行の構え、多重下請けや更新制にも踏み込む

最低運賃「27年度開始」、全ト協寺岡会長が強い意向

2025年7月24日 (木)

ロジスティクス「3年も待てない。1年半で形を作り、2027年度にはスタートさせたい」。6月に全日本トラック協会(全ト協)の会長に就任した寺岡洋一氏は23日、LOGISTICS TODAYの単独インタビューに応じ、業界最大の関心事である「最低運賃制度」の導入時期について、3年間の猶予期間を待たずに前倒しで実現するとの強い意向を明らかにした。目標水準とする「標準的運賃の95%」についても、「これは最低ライン。片道輸送を前提とすれば妥当な水準だ」と述べ、一切引かない構えを示した。新会長の所信は、大きな波紋を広げそうだ。

▲全日本トラック協会の寺岡洋一会長

インタビューで寺岡会長は、先の国会で成立したトラック適正化二法(トラック新法)の4つの柱(事業許可の更新制、最低運賃制度、多重下請け構造の是正、白ナンバー対策)の中で、「何をさしおいても、一番大事なのは最低運賃制度だ」と断言。ほかの3つの課題も重要としながらも、「最低運賃制度を先に決めないと、多重構造の是正にしても、ドライバーの待遇改善にしても、その原資を確保できない。全ての改革はここから始まる」と、その重要性を訴えた。

その上で、目標とする水準について「標準的運賃の95%を最低ラインぐらいに思っている」と改めて明言。「これが実現すれば、業界全体が大きな恩恵を受ける。我々の運賃負担分はその先のお客様に対しても当然転嫁してくださいと。それについては経産省や農水省も連帯してやっていただける。どこも痛まないはずだ」と、業界全体に好循環が生まれるとの考えを示した。

この「95%」という数字は、荷主サイドに大きな衝撃を与えている。本誌編集長が、大手荷主でさえ数年がかりで標準的運賃の80%水準を目標に掲げている現状を伝えると、寺岡会長は、それでもなお95%を目指す必要性を強調した。「標準的運賃が決められた当初、実勢運賃は7割前後だった。そこからトラックの価格や人件費は恐ろしいほど高騰しており、決して標準的運賃は非現実的な数字ではなくなってきている」と、コスト構造の変化を指摘。その上で、「我々が原価を弾いていけば、自動的にそのレベルまで行くと思う」と述べ、適正な原価計算に基づけば、95%という水準は妥当であるとの認識を示した。

また、業界の実勢運賃動向を把握する上で代表的な指標とされる東京-大阪間の幹線輸送で、現在の実勢運賃が目標水準を大きく下回る8万円台で推移しているという指摘に対しては、議論の前提が異なると反論。標準的運賃の95%を適用した場合、同区間の運賃は14万円台まで高騰する計算となるが、寺岡会長は現在の8万円台という運賃設定の背景を次のように説明した。「東京―大阪間をその運賃でコンスタントに運行できるのは、必ず往復で荷物を確保できるから可能な『強者の論理』だ。しかし、会員の97-98%を占める中小零細事業者は片道輸送が基本。最低運賃の議論は、この片道輸送を前提とすべきだ」と述べ、一部の効率化された事例を業界全体の基準とすることにくぎを刺した。

トラック適正化二法の他の柱である「多重下請け構造の是正」については、2次下請けまでに制限する規制に対し、「ドライバーも足りない中で、2次までに規制するのが本当に正しいのかという感じなんですよ」と、実務上の課題を指摘。その上で、「急いで結論を出す必要はない」とし、慎重に議論を進めるべきだとした。

「事業許可の更新制」については、3年の猶予期間が設けられたことに対し、制度の実効性に懸念を表明。A~Eの5段階評価でD・E評価の事業者が退出する仕組みに触れ、「更新時期にC評価であれば更新されるのか」といった運用面の細かな論点を詰め、安易な抜け道を許さない制度設計を求めていく考えを示した。

これらの課題に取り組むため、寺岡会長は自らが委員長を務める「トラック適正化二法対策委員会」を早急に立ち上げる意向だ。「8月中にはメンバーを決め、できれば9月中に委員会を立ち上げたい」と、迅速な体制構築に意欲を見せる。

委員会では、少人数精鋭で議論を深め、国土交通省が求める資料にも迅速に対応できる体制を構築する。その上で、「3年の猶予期間を待つ気はない。最低運賃制度については、1年半を目途に第一段階をスタートさせたい。26年度末までに試行錯誤を重ねながら形を作り、27年度から始められるよう努力する」と、具体的な目標スケジュールを明らかにした。

◾独占インタビュー全編

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LOGISTICS TODAY編集部
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