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置き配標準化促すファミリーネット・ジャパンの安全・便利な自宅前配送

「直達」、配送とマンション管理の交点で課題解決

2025年10月1日 (水)

ロジスティクス物流インフラを支えるドライバーの不足は、着実に現場を蝕んでいる。EC(電子商取引)の拡大に加えて、ネットスーパーや中食事業のニーズも高まり、消費者が自宅配送に頼る機会も増大するばかり。それだけに、ラストワンマイル配送領域での受取人の不在による配送物の持ち帰り、再配達による業務負荷の増大は、今すぐ解決すべき物流課題だ。

消費者が、配送物の持ち帰りや再配達を削減しようとの意識は少しずつ高まっているのを感じる。しかし、そうした意識の高まりが、都市部の集合住宅やマンションでは、宅配ボックスの不足を招いているのも事実だ。特に、オートロック付きの集合住宅の多くは、政府が推進しようとしている自宅前の置き配にも未だ対応できていない。

ファミリーネット・ジャパン(FNJ、東京都港区)が展開する、集合住宅向け配達サービス「直達」(ちょくたつ)は、オートロック付きの集合住宅でも自宅玄関前の置き配が可能となるソリューションである。今回、同社のLife Solution戦略室長の鈴木やよい氏と、係長の上條なつみ氏、経営管理本部経営企画部の西昌哉氏に、この直達サービスについて話を聞くことができた。

マンション管理観点からの、宅配効率化提案

FNJは、2000年の創立時から集合住宅向けの電力やガスの小売事業と、インターネットサービスの提供を融合させたマンション・集合住宅に特化したプロバイダーである。「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進によるマンション管理業務の効率化、居住者の利便性向上に取り組み、インターネットサービスは、現在は57万戸以上へ提供している」(西氏)という。

直達は、そんなマンション管理の専門領域から、ラストワンマイル配送を効率化する提案となっていることが興味深い。鈴木氏は、「ドライバー不足が社会問題化しているのと同様、私たちの領域では、管理人不足や人件費の高騰、管理費削減という課題に直面している。直達は、マンション管理の課題解決を出発点として、配送の社会問題にも貢献できるシステム」と語る。「マンションの現場課題を、DXで解決する」(上條氏)という視点を出発点に、最終の受け取り側にとっての利便性と管理業務の省人化を、配送事業者にとっての効率化にも直結させるという姿勢だ。

独自特許技術で安全・便利な玄関前配達実現

直達の仕組みを一言でいえば“ワンタイムパスワードでオートロックを解錠する”ものだ。だが、実際の利用シーンを追うと、イメージはさらに鮮明になる。

(出所:ファミリーネット・ジャパン)

例えば、提携事業者の宅配ドライバーの利用シーンはこうだ。荷物の配送先マンションに到着すると、あらかじめ提携事業者だけに配布された認証コードを自分のスマートフォンや伝票で確認。エントランス脇に設置されたテンキーのQRコードを読み取ると、その場で“その時だけ有効な解錠パスワード”が生成される。テンキーに入力すれば、自動ドアが開き、エントランス内へ入れるという仕組みである。

新聞配達のように毎日訪れる事業者の場合は、1か月分まとめて発行された「日替わりキーリスト」を使う。日付ごとに違う暗号が割り当てられているため、セキュリティーは確保されつつ、日常業務の手間も増えない。

「ネットワークに依存しない仕組みなので、停電や通信障害が起きても機能が止まらない」(上條氏)のが、直達の特長であり、安心材料だ。テンキー自体がスタンドアローンで動作し、内部の基板に独自アルゴリズムが組み込まれているためインターネット接続は不要で、通信環境に左右されない。それでいて基幹の管理システムと同じロジックでキーを照合できる。ワンタイムパスワードは2次元バーコードを介して発行されるため複製や改ざんが極めて難しく、一般的な暗証番号や共通キー方式では実現できない高いセキュリティーレベルも強みだ。

このオフライン認証と2次元バーコードによるキー生成を組み合わせたシステムは、FNJ独自の特許技術。これにより、管理人の立会いなしでも定期清掃、点検業務、さらには宅配便や日常の配達まで、幅広い訪問者がスムーズかつセキュアに入館できる。「居住者の安全性・利便性の向上、マンション管理業務の省人化・DX推進、さらに災害時のレジリエンス強化にも有効」(鈴木氏)な仕組みといえるだろう。

提携の広がりと地域・生活密着の強み

▲「直達」利用シーン

置き配への関心の高まりとともに、直達同様にオートロック解除とセキュリティー確保の両立を掲げるサービスはほかにも登場している。そうした事業者との違いについて、上條氏は「直達は、より地域の配送課題、日常の配送利便性に着目したもの」だと語る。提携事業者も、各地域のネットスーパーや、生協関連の宅配事業、新聞社、食材宅配、宅配水サービスなど多様だ。

「配送側から見れば、特に宅配水の持ち帰りなどは絶対に避けたいところ。また、同じマンション内でも配送希望時間帯のズレによって生じる無駄な手間なども、直達ならば解決が可能。玄関前の配送物自体が、ほかの利用者にこんな宅配サービスがあるのかと認知するきっかけとなる」(鈴木氏)効果もある。また、利用者にとってはこれまで受け取りの都合がつかなくて利用できなかったサービス、宅配ロッカーでは対応できなかったサービスを利用できるようになるなど、生活の質を向上させる選択肢も広がるだろう。

「地域、日常生活に根ざした事業者とともに成長する」(西氏)という姿勢は、ほかのオートロック解錠サービスとの差別化ポイントではあるが、競合だけではなく、住み分けすることで、利用者の利便性も高まるとの認識も示す。日常生活の利便性向上にマンション管理の目線から取り組む姿勢は、本部一括や一元化による効率化に重きをおく物流観点からは見落とされがちな配送業務にも目を向け、地域と生活に密着したラストワンマイル領域の効率化に貢献するものといえる。

置き配標準化への布石、利用者目線からの社会課題解決

国土交通省は置き配の利用拡大を呼びかけており、直達は「置き配の標準化に合致する仕組み」(鈴木氏)と位置づけられる。再配達削減によるCO2削減効果、災害時のレジリエンス強化、管理業務の効率化など、社会的なメリットは多岐にわたる。

現在、直達はすでに新築物件を中心に導入が進み、146棟・1万戸超への導入を完了しているが、「今後は既存物件への“後付け”などにも広げていくことが目標」(西氏)となる。テンキーデバイスの小型化や、防水性能の強化などにも取り組み、使いやすく導入しやすい環境作りも進める。

また、マンション側への導入拡大だけではなく、提携事業者を地道に広げていくことも重要な目標となる。現在、大手宅配事業者との提携拡大も進めており、サービスの裾野と利便性はさらに広がろうとしている。しかし、それだけではなく「地場の宅配を取り扱う事業者1軒ずつと丁寧に調整して、より利用しやすいサービスを整えていく」(上條氏)取り組みこそが、直達ならではの強みではないだろうか。

FNJが描く「生活DX」と物流効率化の融合

ファミリーネット・ジャパンが目指すのは単なる宅配効率化ではなく、「居住者の生活をより豊かにするDX」(西氏)という理念だ。利用者の自由に使える時間が増えることで、結果として配送側も有効に時間を使えるようになる。直達はまさに、マンション管理と物流が交わる交点で、新しい生活インフラを目指す。

生鮮物などでも置き配利用が進むことは、これまで置き配利用の妨げとなっているセキュリティーへの不安感を払拭するきっかけともなるだろう。物流効率化、ドライバーの働き方改革の側面でも、直達が置き配の標準化を後押しし、ラストワンマイルの未来を形づくる存在となることに期待したい。

▲(左から)上條氏、鈴木氏、西氏

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