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ローソン、データドリブンで挑む荷主主導の物流改革

2026年2月26日 (木)

荷主コンビニエンスストア大手のローソンが、荷主主導による物流改革を着実に進めている。2023年末に完了したチルド配送の「1日3便から2便」への移行を軸に、早着フリーや曜日別ダイヤなどの施策を組み合わせ、輸配送構造そのものを見直してきた。背景には、24年問題を見据えた中長期的な危機感がある。

現在の取り組みの起点について、ローソン商品本部ロジスティクス部の佐藤渡部長は、チルド低温帯での3便から2便への移行が大きな転換点だったと説明する。佐藤氏は「全国での導入完了は23年末だったものの、構想自体はそれ以前から社内で検討されていた」と明かす。

一方で、物流を取り巻く環境への理解を社内外でそろえることは容易ではなかった。この点について、ローソン商品本部ロジスティクス部の小川陽子マネージャーは、「22年、23年を通じて、24年問題がニュースなどで大きく取り上げられるようになり、厳しい物流環境に対する理解が社内外で徐々に深まっていったと感じている」と語り、社内外の理解を後押ししたと振り返る。

改革を進めるうえで大きな役割を果たしたのが、トップメッセージだ。小川氏は「ロジスティクス部だけの発信では限界があった」としたうえで、「トップからのメッセージが理解を後押しした」と語る。佐藤氏も、法令が変わることを前提に、将来的なコスト構造や売価への影響を経営層から繰り返し発信してきたとし、「必ず動かなければならないという認識を全社に浸透させていき、外部にも伝達していった」と説明する。

▲ローソン商品本部ロジスティクス部部長の佐藤渡氏

ローソンでは、配送用の自社車両を保有していない。配送はすべて委託先が担う体制だ。佐藤氏は「現状、自社車両の比率はゼロ」と明言したうえで、「だからこそ、物流会社とのパートナーシップを最重要視している」と語る。月次・半期・年次で定例会や総会を開き、施策や会社全体の方向性を継続的に共有してきた。

2便化は、店舗運営にも影響を及ぼす。納品回数が減る分、1回当たりの荷量と作業負荷が増えるためだ。この点について佐藤氏は、「加盟店との調整を担う営業本部と連携しながら、ロジスティクス部が主導して対応してきた」と説明する。加盟店や関係部署に対して、社会的背景や法令対応の必要性を整理した資料を作り、1件ずつ丁寧に説明していったという。

小川氏も、納品時間帯の変更や荷量の増加は、店舗目線では非常にシビアな課題だったと認める。そのうえで「配送ピーク帯を避けたり、鮮度の長いカテゴリーを採用したりするなど、店舗負担を和らげる施策を積み重ねた」という。

▲同社商品本部ロジスティクス部マネージャーの小川陽子氏

早着フリーについても、当初は反発があったという。佐藤氏は「正時ダイヤがあるのに早く来るという声もあった」と振り返る。しかし、今では完全に浸透しており、現場から特に意見が出ることはなくなっており、現場が運用に順応している。

物流改革は1部門だけで完結するものではない。ローソンは、法令対応を軸にしながら社内外の関係者と合意形成を重ね、2便化を既定路線として定着させた。そのプロセスは、荷主が主語となって物流に向き合う姿勢を象徴している。

AIとデータで支えるローソンの物流運営

取材を通じて浮かび上がったのは、データやデジタル施策を「導入すること」自体を目的にせず、現場運用と品質担保に資するかどうかで厳密に取捨選択するスタンスだ。AI(人工知能)やシステムは、意思決定や改善を支える手段であり、現場の知見や既存の運用を置き換えるためのものではないという考え方が一貫している。

先進的な技術は積極的に検証し、導入を進めるのがローソンのスタイルだ。同社では、2010年代からセミオート発注を活用し、販売実績や在庫データをもとにした発注予測によって、加盟店の発注業務を支援してきた。

こうした取り組みを発展させる形で、24年度からは次世代発注システム「AI.CO」(アイコ、AI Customized Order)を全国の店舗に導入。AI.COは、過去の販売データに加え、天候や曜日、立地特性などを加味して発注数や値引きのタイミングを推奨する仕組みで、食品ロスや販売機会ロスの削減、加盟店オペレーションの負担軽減などを目指すもの。発注業務を完全に自動化するのではなく、判断を支えるツールとして位置づけている点も特徴だ。

また、21年には、オプティマインド(名古屋市中区)と共同で、AIを活用した店舗配送ダイヤグラム最適化の実証実験を行った。店舗ごとの発注量や在庫状況をもとに、オプティマインドのAIで日々最適な配送計画を生成し、配送台数削減やCO2排出量削減を目指す取り組みで、一定の成果を得ている。

データ活用の基盤整備自体はすでに進められており、チルド専用車には指定TMS(輸配送管理システム)である都築電気の「TCloud for SCM(Tクラウド for SCM)」の導入を必須とし、店着時間や移動時間、積み込みから帰着までの工程を可視化している。佐藤氏によれば「動態管理は10年以上前から導入している」という。

小川氏は、この仕組みを「品質を担保するための情報収集」と説明。「延着はあり得ないという前提のもと、リアルタイムで状況を把握」し、サービス品質を守るためのデータとして活用されているという。

蓄積されたデータは、月次などのレポートを通じて分析され、曜日ごとの物量波動や積載率の課題把握に生かされている。佐藤氏は「委託先からのレポートをもとに、曜日別ダイヤ作成などの施策につなげてきた」と語る。

2便化によって生まれた午前帯の空き時間は、飲食店チェーンのワタミとの共同配送にも活用している。佐藤氏は「ローソンの店舗配送だけにこだわらず、協業としての共同配送を進めている」と説明する。時間軸やネットワークが合致する企業とスモールスタートで取り組み、日中と夜間の2回転運用を可能にしている。

今後についても、拙速な拡大は考えていない。佐藤氏は「全国一律ではなく、ケースバイケースで進める」と述べ、荷主として条件を整理しつつ、委託先にとってもメリットのある形を探る姿勢を示した。

データ活用を「思想」として位置づける

一連の取り組みから浮かび上がるのは、ローソンのデータ活用に対する一貫した姿勢だ。同社は、TMSによる動態管理や各種データの可視化を早くから進める一方で、AIを活用した配送最適化などの新技術についても積極的に検証してきた。しかし、そのすべてを即座に全面展開するのではなく、自社の事業特性や現場の完成度を踏まえ、取り入れ方を慎重に見極めている点が特徴と言える。

▲ローソンの冷凍おにぎり販売イメージ(出所:ローソン)

こうした物流の効率化に向けた姿勢は、輸配送領域にとどまらず、商品開発にも及んでいる。ローソンは、リードタイムを長く取れる設計の冷凍おにぎりを開発し、物流負荷の平準化を意識しながら取扱店舗を段階的に拡大してきた。これまでは九州と北海道を除く1万2000店で展開してきたが、25年1月からは47都道府県での取り扱いを開始。製造から配送までの計画性を高めることで、需給変動や輸送制約を織り込んだ商品展開を可能にし、物流改革と商品政策を一体で進めていく狙いだ。

データによる可視化や効率化と並行して、「急がなくて済む商品」を増やす取り組みは、ローソンの物流改革が現場運用の改善にとどまらず、事業全体の設計に踏み込んでいることを示している。AIやデータを使いこなしながらも、それらを万能視しない。現場との対話と合意形成を重ね、物流の運び方だけでなく、商品設計やサプライチェーン全体の構造そのものを見直していく。ローソンの物流改革は、荷主が主語となって事業全体を再設計する取り組みとして、一つの到達点を示している。(土屋悟)

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