イベント物流効率化法の改正やCLO(物流統括管理者)選任義務化を控え、地域特性を生かした物流再設計の議論が各地で進んでいる。こうしたなか、6日に北九州市で開催された「物流議論 in 北九州」では、港湾・空港・フェリーといった多様な輸送モードを組み合わせたモーダルシフトの可能性から、九州ならではのサプライチェーン(SC)課題、さらに物流拠点DX・自動化までを俯瞰する議論が行われた。「物流議論」は本誌LOGISTICS TODAY主催、野村不動産とYEデジタルの協賛で、物流業界が直面する課題を掘り下げ、解決策を探る場として展開してきた。今回は、物流革新の注目地である北九州市が、初の九州開催の舞台に選ばれた。
本イベントでは、北九州が有する「陸・海・空」すべての物流機能を起点に、インフラ、制度、テクノロジーを横断した物流改革の姿、いわば「北九州モデル」が提示された。 北九州市で物流革新を先導する各領域のキーブレイヤーに、モデレーターとして本誌LOGISTICS TODAYの赤澤裕介編集長が加わり、制度対応としての「実装」ではなく、具体的な拠点や機能のなかで物流をつなぎ直すにはどうすればいいか、その具体的な方向性が示されたといえる。
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最初のセッションでは、北九州の物流インフラが持つ重層性と、それを組み合わせた輸送の可能性が示された。登壇者は、北九州市港湾空港局局長の倉富樹一郎氏、東京九州フェリー(北九州市門司区)常務貨物営業担当の能戸昇志氏、ヤマト運輸の貨物航空輸送部長、下簗亮一氏だ。

▲(左から)東京九州フェリーの能戸昇志氏、ヤマト運輸の下簗亮一氏
倉富氏からは、北九州港と北九州空港の機能が紹介された。北九州港は2024年度の海上出入貨物量が全国4位、フェリー貨物は過去最高を更新する全国2位と、西日本最大級のフェリー基地としてモーダルシフトを支える。太刀浦・ひびき両コンテナターミナルではアジア主要港と直結する国際航路網を形成し、危険物やRORO輸送にも対応する。内航においても九州から関東・関西航路への主要航路網を構築している。

▲北九州市港湾空港局局長の倉富樹一郎氏
一方、24時間運用可能な北九州空港には九州・中四国唯一の国際貨物定期便が就航し、国内外の航空貨物ネットワークを構築。港湾と海上空港が近接している地理的特性は、シー&エア輸送など複合輸送の実装を可能にしている点が特長だ。さらに、高速道路やJR貨物とも連携し、災害時の代替機能を含めた強靭な物流基盤としての役割を担う。また、滑走路は国際貨物輸送の拠点機能強化のため、現在の2500メートルから3000メートルへと延長され27年の供用開始を予定している。
北九州港を拠点に、東京-九州間の長距離輸送を担う東京九州フェリーの能戸氏は、トラック航送を中心とした23.8ノットの高速フェリー輸送の強みを提示した。トラック154台規模の積載能力、安定した運航率、省人化効果、CO2排出量の大幅削減といった点は、ポスト24年問題の現実的なモーダルシフト手段として注目される。新門司―横須賀間を月曜から土曜まで週6便を運航し、 首都圏と九州間の長距離幹線輸送を支える海上輸送インフラとして、モーダルシフトの受け皿を担っている。「フェリーは災害に強く、フレキシブルな輸送モード」(能戸氏)といい、災害対応、BCP対応の使命も担う。
ヤマト運輸もまた、 北九州空港の機能を生かした、トラックだけに依存しない持続可能な輸送体制の構築を進めていることを下簗氏が紹介。その中核が国内唯一の定期フレイター事業で、成田・羽田・北九州・新千歳・沖縄を結ぶ1日14便体制を構築。24時間空港の深夜・早朝帯を活用したスピード輸送により、北海道―九州間の直行輸送や、北九州空港を起点とした国際航空貨物とのシームレス接続を実現している。旅客機では扱えない危険品や大型貨物、保冷・活魚輸送にも対応し、新たなモーダルシフトの選択肢として物流の安定性と即応力を高めている。「多様なモードを活用して九州発の貨物を増やし、地方再生を支えたい。特に航空貨物のポテンシャルを生かし、フレイターだけではなくベリー輸送にも力を入れたい」(下簗氏)
このセッションで明らかになったのは、単一モードへの置き換えではなく、「港湾×フェリー×航空×陸送」を組み合わせた輸送設計こそが北九州の強みであるという点である。
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続くセッションでは、制度面から九州物流をどう捉えるべきかが示された。登壇したのは、農林水産省大臣官房新事業・食品産業部食品流通課 物流生産性向上推進室長の丸田聡氏である。
丸田氏は、物流効率化法改正の背景と、食品・農水産物流の現状を整理した。農水産物・食品は輸送の96.5%をトラックに依存しており、長距離・小口・鮮度管理といった制約が重なる九州物流は、特に負荷が大きく、バラ積みの慣例で荷待ち・荷役が長時間化してきた領域である。農水省は物流効率化法を軸に、パレット標準化やデジタル化、商慣行見直し、モーダルシフトを一体で推進する。

▲農林水産省の丸田聡氏
具体例として、JA熊本果実連では11型パレット対応設備、自動化機器を導入し、積込・荷下ろし時間を大幅に短縮。産地間連携など共同化で成果を上げている事例を紹介。青果流通における集出荷デジタル化により紙依存を減らし、配車や検品の効率化を進める。北九州市では中継共同物流拠点を活用し、鉄道・船舶への転換も進展しており、食品物流の持続性確保に向けた現場改革が各地で動き始めており、東京九州フェリーによる関西・関東圏輸送へのモーダルシフトを呼びかけている。「九州は、農畜産物の供給基地という点だけでなく、野菜の周年安定供給体制の一翼を担うという点でも重要な産地」(丸田氏)であり、九州の農水産の物流危機は日本全国の農水産供給の危機であるとして、関係各所の協力を求めた。
YEデジタルの物流DXシステム本部副本部長の浅成直也氏からは、北九州に本拠を置く同社の使命、WES(倉庫運用システム)市場のリーダーとして普及を目指すトップランナーとしての使命から、「北九州発」というキーワードに力が込められた。同社のWES「MMLogis Station」が自動化、マテハン導入などでどう機能するのか、複雑・高度化する物流をつなぐ同社の役割を解説した。
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こうしたインフラと制度を「どう使いこなすか」の視点で、物流拠点のDX(デジタルトランスフォーメーション)・自動化についても議論された。
議論に参加したのは、YEデジタル浅成氏と、 次世代に向けた物流運用を施設開発の立場から提示する野村不動産都市開発第二事業本部物流事業部副部長の宮地伸史郎氏である。Landport横浜杉田に設置したシェアリング自動倉庫や企業間コンソーシアムTechrum(テクラム)の取り組みなど、今後必須となる自動化コストを、物流デベロッパーの投資力でサポートする取り組みや、各種自動化ソリューション導入の接点としての役割を果たすことを紹介。「共配拠点として活用するという発想を起点として、ポスト24年の物流施設のあり方」(宮地氏)を示す。

▲(左から)YEデジタルの浅成直也氏、野村不動産の宮地伸史郎氏
今後の倉庫内DXの方向性としては、「自動化ニーズに合わせ、WMS(倉庫管理システム)の機能拡張と複雑化が続く。外国の先進的ツールなども多数導入され、マテハンメーカーフリーでどうスムーズにつなぐかなど、自動化の進め方が問われる」(浅也氏)。輸送モードやマテハンが多様化するほど、現場では情報の分断が起きやすくなる。拠点内外のデータを可視化し、倉庫内から運送領域までサプライチェーン全体の最適化につなげるデジタル基盤の整理を後押しする。
ベンダー間の連携も重要だ。テクラムの参加協力企業も多岐に広がり、「これまでは連携の必要性は感じながら提案に至らなかった。テクラムを通じて具体的な連携取り組みへと移行している」(宮地氏)。さらに、前述のLandport横浜杉田では、自動物流道路の社会実装に向けた実証実験も進めらるなど、倉庫内だけではなく、サプライチェーン全域にわたる連携・効率化の舞台として施設の役割を広げていく姿勢だ。
野村不動産の取り組みは、同社の西日本支社物流事業部開発事業課、岡村直樹氏からも解説。これまで首都圏中心だった施設開発をエリアに拡大、なかでも九州での開発を集中させる。北九州ではLandportシリーズとしては北九州初物件となる「(仮称)Landport小倉」を開発、来年9月末の完成を予定する。陸・海・空をつなぐ北九州の特性に対応し、多様なオペレーションに対応する施設となる予定だ。北九州市との立地協定を締結して「物流拠点構想」を施設提供で形にする。
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最後のパネルディスカッションでは、各セッションの登壇者が集まり、北九州における物流改革から、日本全体の改革の方向性まで議論された。インフラ整備の進ちょく、政策動向、農水産物流の中継拠点化、共同輸送・モーダルミックス、DX・データ活用、フェリー活用、新制度(CLO)の実装状況と活用方策を横断的に確認された。

▲各セッションの登壇者が集まったパネルディスカッション
港湾物流の重要性については、フェリー起点の新たなサプライチェーン設計(集約・パレット化、クリーン燃料対応)をさらに推進させていかなければいかないが、それには長期的な港湾機能の強化が必要だということや、「上り下り」貨物など物流の偏在の改革の必要性などが各登壇者から指摘された。九州発貨物をどう集めるか、九州新幹線とつながる物流が進めらていることなども共有。議論は、自動運転実装の進ちょく状況から、中継拠点拡充の必要性についてへと発展、さらに、全国の卸売市場の機能再編、農水産物に限らない地域物流拠点として活用できないかなどにも話題が及んだ。
2か月後にはCLO(物流統括管理者)の選任義務化もスタートする。CLOの外交機能や投資判断が、物流の景色を大きく変えることも期待される。必要な共同化については、業界横断での取り組み、フィジカルインターネットへの道筋も検証された。農水産物特有の出荷量の事前把握不足を、データ整備とAI予測で補完するなど、データ基盤の重要性も増す。CLOには制度理解と同時に、現実的な運用設計力が問われるとの認識が示され、行政、地方自治体のバックアップにより、政策・補助・インフラ計画と接続することで、民間の実装を加速させることも重要と提言された。
これらの議論を通じて浮かび上がったのが、「北九州モデル」の本質と普及である。それは、港湾・空港・フェリーといった機能の“多さ”ではなく、それらを柔軟に組み替え、制度・テクノロジーと接続できるかという本質であり、行政が主導して北九州モデルを全国に敷衍することの重要性の確認だ。CLO選任義務化を契機に、荷主が物流事業者や拠点、ITと連携しながらサプライチェーンを再設計する。その実証フィールドとして、北九州は全国に先行する役割を担いうることが、今回の議論から示されたといえる。
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