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日立・佐川提携会見、「向こう2、3年メドに経営統合目指す」

2016年3月30日 (水)

ロジスティクス戦略的資本業務提携を締結した日立物流、SGホールディングス、佐川急便、日立製作所の4社は30日、東京都内で記者会見した。日立物流の中谷康夫社長、SGホールディングスの町田公志社長、佐川急便の荒木秀夫社長、日立製作所の斎藤裕副社長の4人が出席、提携に至った経緯と狙いを説明した。

SGHDの町田公志社長は、「両社で事業領域の拡大、企業価値向上へ何かできないかと話し合ってきた。資本業務提携により、世界で戦う日本企業の競争力向上につなげ、物流業界が担う社会的使命に答えていく。早期のシナジー実現へプロジェクトチームを結成する。両社の経営統合の可能性を考え、さらなる進化について今後協議していきたい」と提携に至った経緯、今後の経営統合の可能性に言及した。

■関連記事(提携の内容)
日立物流とSGホールディングスが資本業務提携を発表
https://www.logi-today.com/224521

▲左から、佐川急便の荒木氏、SGホールディングスの町田氏、日立物流の中谷氏、日立製作所の斎藤氏

▲左から、佐川急便の荒木氏、SGホールディングスの町田氏、日立物流の中谷氏、日立製作所の斎藤氏

町田氏は「佐川急便はスマート納品などの戦略的商品を生み出してきた。グループ横断の先進ロジスティクス提案チーム『GOAL』を立ち上げ、多様化するニーズに対応する取り組みを進めている。日立物流と提携することで、グローバルに3PLとつながり、強化を進めている海外事業で競争優位を実現できる」と提携の意義を強調した。

日立物流の中谷康夫社長は、「SGHDの経営トップと実業ベースで将来を見据えた議論を積み重ねた。4月から新中計をスタートさせるが、志を同じくするパートナーとスタートできるのは喜ばしい」と話し、提携の狙いについては、同社がコア事業としている3PL事業と佐川急便の宅配機能が継ぎ目なくつながる総合物流サービスの提供にあることを強調した。

日立物流と佐川急便の強みを組み合わせ、荷主企業が海外で原料を調達する段階から企業や個人宅への配送まで、サプライチェーン全体をカバーし、これらを次世代ITやLT(物流技術)のソリューションによってつないでいく姿を描いた。また、提携の意義として「3PLを徹底的に強化するための『デリバリーソリューション』の強化」「リソースの相互活用・新技術の導入による経営効率の向上」「アジア市場での競争力強化」の3項目を挙げた。

デリバリーソリューションと3PL事業を組み合わせた事業の強化については、「B2Bをベースに事業が成り立っているが、今後はB2B2Cに踏み込まなければならない。佐川との提携で実現できると考えた」と語った。メーカーや卸向けの物流から店舗留め置きや個人宅への配送を一元管理された在庫情報、荷物追跡情報でシームレスに対応するサービスイメージを紹介した。

リソースの相互活用では、両社の強みを一棟に集結させた「次世代型物流センター構想」を披露した。構想では、ケース自動倉庫、ピッキングフォーク、無人フォークリフト、自律移動型双腕ピッキングロボット、自動搬送ロボットといった省人化設備、ロケーション・オーダー最適化や複数荷主の物流に対応するマルチ&タブレットトピックなどの新技術を導入し、佐川急便のターミナルを併設して配送直結の機動的物流センターを構築する考えだ。

また、膨大な配車ビッグデータの活用による高効率な運営モデルを実現し、人工知能で解析することにより、物量予測や最適配車の意思決定を支援できる体制を整える。

海外では、アジアで3PLとデリバリーを組み合わせたビジネスを「早期に立ち上げたい」と話し、「圧倒的優位でビジネスを拡張したい」と強調した。

佐川急便の荒木社長は、日立物流と提携することで「より川上でのシナジー発揮できると期待している」と話したほか、施設と車両の相乗効果について、425か所の営業拠点にTC機能を持たせる考えを示した。

日立製作所の斎藤副社長は「今のビジネスはエンドから眺めて物流をどうするか、という考えに変わってきている。佐川急便との提携でエンドの物流を手にすることができる。これにITを組み合わせてさらに発展させられる。これによって社会イノベーション事業のプラットフォームを作り、トータルサプライチェーンを充実させていく」「日立もオープンな形ではあるが、自らエンド・ツー・エンドのこうした取り組みを進めていきたい。リアルな世界でエンドユーザーに届くサービスを実現する」と話した。

(単位:百万円)

(単位:百万円)

■質疑応答
――ほかの物流会社ではなく、双方を選んだ決め手は。
荒木氏:「常にどこと組むか」を考えていたが、そのなかで最も発揮できるのが日立物流だと考えた。

中谷氏:佐川急便グループを選んだ最大の要因は、実業ベースできちっとした積み上げができているところ。日立物流はグローバルを見据えているが、佐川急便もその強い意思を持っている。

――経営統合はどの程度必要と考えているのか。時期は。
町田氏:できるだけ経営統合したいが、顧客がどれくらいそれを望んでいるかにかかっている。2、3年はかかると思うが、スピード感を持ってやりたい。

中谷氏:経営統合を目指す明確な意思がある。

――資本提携の最大のメリットは何か。何が強くなるのか。
町田氏:資本提携の意義は、がっぷりと組んで仕事をしていきたいということ。そのためにはきちんとした覚悟と約束事が必要と考え、資本提携を決めた。荷主が求めているのは、あらゆることを1か所でシームレスにやってほしいということだと感じている。いろいろなサービスを付加しながら全部運んで欲しいというニーズを感じている。そのためには自己成長だけでは届かない。覚悟を持ってがっぷりと組む。

中谷氏:日立物流が自力で強化していくには時間がかかりそうだと考えていた。佐川急便と組むことで、時間を短縮できる。こうした提携は覚悟を決めてやる部分がなければならない。協業成果をどう刈り取っていくかという意味で、互いに見えるように取り組んでいきたい。リソース、テクノロジーを相互活用するためにも資本提携が必要だ。世界に挑戦していくには、もっと大きな強い経営基盤を持ちたいという思いがある。その一歩として、資本提携しながら次の目標に向かうのが大切だと感じている。

――日立製作所は変わらず日立物流の筆頭株主として残るが、持分30%の株式を残す意味は。
斎藤氏:持分法適用会社にはなるが、筆頭株主として日立物流をきちんとサポートする形を示したいと考えた。

――SGホールディングスは経営統合や今後のM&Aを考えると上場したほうがいいのでは。
町田氏:特段、非上場で困ってない。上場はまったく考えていない。

――海外強化というが、日通、日本郵便と競合する。日立・佐川の強みは。
中谷氏:日立物流は欧州、米国でもアセットを持ってビジネスを展開している。早く踏み込めるのは東南アジアだが、トルコを起点としたインターモーダルにも佐川急便の顧客をつなぎ、メキシコでも米国とつなぐクロスボーダー物流を提供できる。佐川急便の海外志向が強い顧客にこうしたサービスを提供できれば、もっとビジネスチャンスが出てくると考えた。

町田氏:当社は出身が宅配というか混載からスタートしているので、いろいろなニーズに答えながら積み合わせるのが得意だ。いろいろな会社のニーズに合わせてきめ細かなサービスを提供する。日立物流が顧客に提供するサービスを補完できたらいい。

――提携はどちらから働きかけたのか。
町田氏:どちらからというのは難しい。これまでもお互い、顧客と事業パートナーであり、利用運送として利用してもらっていたほか、倉庫スペースも利用してもらっていた。そのなかで自然発生的に「何か一緒にできれば」「ならば(提携しよう)」ということになった。

中谷氏:実業ベースでいろんなことができると確認できた。

――今後、両社のノウハウを結合することで、調達からラストワンマイルまでをカバーするというが、そのイメージは。
町田氏:グローバル、シームレスがキーワード。客の要望に応じてすべて対応できる体制を早く作りたい。シナジーをまず見極めたうえで、やれることを確実にやっていく。

中谷氏:ラストワンマイルはなかなか手が出せなかった。これを提供できるのは大きい。これによって顧客のサプライチェーンを構築・支援できる可能性が高い。

――事業会社と部門で重複するところを再編していくのか。
中谷氏:まずは施設の共有・相互利用の流れのなかで、やがて拠点統合ということも出てくるかもしれない。当面は今後1年間、相互に施設などを利用していくことに専念する。

――統合する際のスキームが決まっているのか。規模感以外に競争力を発揮できるところがあるのか。
町田氏:提携スキームはまだ想定していない。何らかの形できちんとしたやり方でなければならない。最も適切な方法を選ぶ。国内2位(の売上規模)が世界第1線で戦える規模なのかというと、そうとは言い切れないが、両社の仕組みを活かすことでどんどん成長していきたい。

中谷氏:しかるべきタイミングで検討していかなければならない。DHL、UPSとは業態がやや違うが、単に売上高で勝負していくのは難しい。日本企業であること、IT、LTを駆使していくことなど、異なるアプローチが可能だと思う。主戦場はアジア、その後いろんな地域。まずは日本を含むアジアでプレゼンスを発揮したい。そこから始めれば、次に何かできてくると考えている。

――どの程度まで海外売上高を伸ばすのか。
中谷氏:日立物流は現在、海外比率が38%、2700億円程度。3000-4000億までは提携の枠組みで伸ばしたい。このうちアジアは500-600億円。ここが一番伸ばしどころだ。200億円程度は十分伸ばせると考えている。

町田氏:SGHDグループの海外売上高は700億円程度。早く1000億円にしたい。今回の提携を機にいろいろなチャンスを得ることで、増やしていく。スリランカの企業を買収してある程度は増えたが、まだまだ足りない。