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圏央道4車線化や自治体の開発事業を追い風に、物流施設の一大集積地へ

関東平野の中心地「境古河」、圏央道沿線の台風の目に

2024年4月22日 (月)

話題今回、LOGISTICS TODAY編集部が物流拠点特集として着目するのは、茨城県の西部に位置する境古河マーケットである。

茨城県西部は関東内陸部のほぼ中央に位置することから、関東全域をターゲットとして見たときの地勢的なメリットの大きいエリア。首都圏と東北をつなぐ幹線道路との接続での利便性に加え、都心に入ることなく首都圏全域へのアクセスを可能にした首都圏連絡中央自動車道(圏央道)の開設が、物流の要衝としての大きな転機となったことは間違いない。千葉・木更津から反時計回りに茨城、埼玉、神奈川をぐるりと環状に結ぶ圏央道は、都心の混雑緩和と同時に、関東圏の物流事情を大きく変えた事業ともなった。

賃貸型物流施設も、都心から郊外へ広がる形で供給地域が変化し、近年、汎用性のある大型施設は圏央道エリアに集中する形で建設が相次いだ。神奈川県の厚木や、埼玉県の久喜、茨城県のつくばなどは、圏央道によって誕生した新しい物流の要衝といえる。

境古河マーケットも、そんな圏央道開発が呼び起こした市場である。境町と古河市ではやや立地特性も異なるが、今回の特集では圏央道・境古河インターチェンジ(IC)を中心にした半径15キロ圏内として、両エリアを含めており、「境町」「古河市」「五霞町」が主な注目地域となる。



新国道4号戦へのアクセス優れる、「古河市」と「五霞町」

境古河インターチェンジ(IC)を中心に半径15キロ圏内の労働人口(15から64歳)は、34万3000人。高速道路使用による配送圏は、加須市、つくば市が30分圏内、さいたま市、草加市が60分圏内。90分圏内には、東京中心部や千葉市、宇都宮市を収め、その配送人口は3000万人弱とされる。巨大な商圏を背景に、広域でのサプライチェーン構築も検討できるエリアと言えるだろう。また、茨城県は製造業の工場も集まる地域であり、地域の製造業の輸送ニーズの受け皿としての需要も大きい。

▲古河市・境町・五霞町で開発されている賃貸型物流施設とエリアごとの平均募集賃料(クリックで拡大)

中でも古河市は、食品製造業などを中心として、複数の工業団地を抱えるエリア。日野自動車が東京都日野市からの工場機能の移管を進め、16年から稼働させるなど、自動車部品の納品ニーズを中心に、日雑品、建築材料系のニーズに対応した倉庫が建設されてきた。国道新4号線へのアクセス利便性を特長として、配送における「関東の拠点」と位置付けての運用も多い。



▲国道新4号線沿いにあるいちご農園(左)と坂東太郎本部(右)

古河市における、大手デベロッパーの施設提供は、プロロジスのエリア開発プロジェクトとしてプロロジスパーク古河1(2016年完成)、同2(17年完成)、同3(18年完成)のBTSが先陣を切る形で開発された。

プロロジスによる「プロロジス古河プロジェクト」は13年からスタートし、前述のBTS型3棟に加えて、23年5月にマルチテナント型の古河4が完成。危険物倉庫8棟からなる古河6がことし12月完成に向けて開発中である。4月には新たなBTS型古河5も竣工し、古くからの地域の工業を支えてきた北利根工業団地の一角を、物流エリアに塗り替えている。

▲「プロロジスパーク古河4」

BTS施設の古河1には、医薬品関連事業のスズケン、古河2には化学品物流のロジスティードケミカル(兵庫県尼崎市)、古河3はセンコーが北関東の配送拠点「古河PDセンター」として運用している。マルチの古河4は、危険物倉庫の古河6との併用をセールスポイントに、アース製薬の東日本の拠点として、ロジコア(大阪府茨木市)が物流をオペレーション、引き続きテナントも募集している。デベロッパーによる古河市での施設開発は、このプロロジスのプロジェクトが独占している状況で、今後も、市場ニーズに合わせた施設開発計画を立てている。エリアの平均募集賃料は坪当たり3800円、成約賃料も同程度と見られる。

古河市より南に位置し、都心部へのアクセスでは古河市よりも優位性のある五霞町にも触れておこう。ここもまた、圏央道により物流適地としてのステータスが大きく上がったエリアである。BTS型での供給が続いた後、現在、マルチ施設1棟が稼働している。

圏央道・五霞ICと新国道4号に至近の五霞町で唯一のマルチ型、GLP圏央五霞(日本GLP)は18年の完成。ほかの物流エリアとは違い、利根川の南に位置し、埼玉県北部と隣接する。圏央道利用はもちろん、国道新4号での都内へのアクセスで評価の高い場所だ。

▲「GLP圏央五霞」

GLP施設では、コカ・コーラボトラーズジャパン(東京都港区)や、エンターテイメント関連事業のテイパーズ(東京都港区)が入居する。また、これまでの入居企業が入れ替わるのに伴い、新たな入居テナントの募集を始めており、このエリアでの拠点設定においては、このGLPの空室を狙うか、今後着工予定のS・LOGI五霞(清水建設)が、検討対象となる。エリアの平均募集賃料は坪当たり3700〜3800円となっており、現在そのほかの供給予定はない。

境古河IC周辺エリア、物流施設が急速に集積、圏央道沿線の台風の目に

さて、本稿での中心となる境古河ICがある境町は、これまでマルチ、BTS合わせて供給がゼロだったエリアである。そんな地域に、デベロッパーによる大型物流施設が相次ぐことからにわかに注目も集まる。

境町で、まず4月の完成を予定しているのがDPL境古河(大和ハウス工業)。延床面積12万6506平方メートルの免震構造施設である。25年1月にはLF境古河(クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド・アセットマネジメント)が完成予定で、こちらも延床面積11万3291平方メートルの大型プロジェクトとなる。さらに、25年4月には日本GLPのGLP境古河1、隣接地にGLP境古河2が26年10月の完成を予定、それぞれ延床面積8万5000、7万9000平方メートルと、施設単体では先行する2棟には及ばないものの、2棟合わせて16万4000平方メートルを供給する。

▲「DPL境古河」

これまで施設開発が皆無だった地に、ことしから2年間で40万3800平方メートルに達する床が供給されることとなり、境町が一躍物流の要衝に躍り出た状況である。

▲「GLP境古河」建設予定地

各施設とも起点となるのは圏央道の境古河ICとなるが、ちょうどこのICを中心とした東西への圏央道路線での4車線化が進められていることで、慢性的な渋滞の解消が期待されるタイミングとなっていることも、施設開発が集中した理由の1つとなっているようだ。

境古河ICから西へ、東北道の接続地となる久喜白岡ジャンクション(JCT)までは、久喜白岡JCT-幸手IC間の8.5キロで4車線化が完了。残す幸手ICから五霞ICまでは24年中、五霞ICから境古河ICの間も25年から26年での4車線化が完了予定で、新規施設稼働時の大幅な機動性の向上が期待される。また、境古河ICから東へは坂東ICまでの9.1キロで4車線化が完了しており、坂東IC以東の常磐道の接続点、つくばICや、東関東道の接続点・大栄JCTが26年までに順次4車線化が完了すれば、広域配送、首都圏配送のスピードアップも期待できる。

▲圏央道4車線化の進ちょく状況(クリックで拡大)

4車線化区間では改良前の制限速度70キロから80キロに引き上げられる効果も大きく、久喜白岡JCT-幸手IC間、境古河IC-坂東IC間の調査(23年5月、NEXCO東日本)では、2車線時の1か月の渋滞回数が内回り・外回り合わせて53回だったのに対し、4車線化後の同月比ではゼロとなっており、着実に成果を表している。

また、今後予定されている国道354号境岩井バイパス、新4号国道に接続する古河境バイパスの開通も追い風となる。近隣の五霞町で新規供給予定がなく、既存施設の入れ替わりを待つしかない状況も、境町への施設集結を後押ししているのかもしれない。新規物件で構成されるエリアだけに、平均的な募集賃料は4200円と、マーケット内でもやや高額だが、今後の需要により成約賃料には影響が出てくる可能性もある。なにしろ、境町自体は物流の白紙地帯だっただけに、各社のリーシングでの競り合いが、「物流地・境町」のブランドアピールにどうつながっていくかも重要な要素となるだろう。



▲境古河IC付近にある常陸牛を扱う焼肉店(上)、サーフィン施設(下)

自治体のバックアップも得て、境町は新たな物流の要衝となるか

境町の物流の要衝への変貌は、行政の姿勢も影響しているようだ。境町では境古河IC開通に先駆けて14年から積極的な企業誘致に力を入れており、物流施設についても19年に、境古河IC周辺を指定路線区域として、誘致を進め、今回の開発のなかにも行政との調整によって実現したものもあるという。現在3期目を務める橋本正裕町長のリーダーシップが、今回の施設開発にもつながっている。

橋本氏による独自の町運営が、大きな成果を残していることには着目したい。就任前の13年にはわずか6万5000円だったふるさと納税実績では、22年度のふるさと納税の受け入れ額が59億5300万円に達するなど、6年連続の関東地方1位に押し上げている。茨城県内では8年連続トップ、全国でも16位という実績を残したのも橋本氏がけん引したものだ。さらに20年には全国自治体初の公道での自動運転バス定常走行など、町政再建での評価から実現した取り組みもユニークである。

<境町役場Q&A>

Q: 境町は企業誘致のために何か特別な施策を行っていますか?
A: 企業誘致のための特別な施策は行っていません。ただし、住民の理解を得ることに力を入れ、地権者の合意形成に努めました。

Q: 境町の人口動向はどうですか?
A: 近年は社会増となっており、転入者が転出者を上回っています。

Q: 境町は移住定住政策にどのように取り組んでいますか?
A: 地方創生課を設置し、町営住宅の家賃支払いで建物を譲渡する制度や、東京からの直行バスの運行など、様々な施策を実施しています。

Q: 物流センターの集積に伴い、労働人口の確保が課題となっていませんか?
A: 境町のみならず近隣の春日部市や栃木県小山市からも通勤圏内にあり、モータリゼーションが進んでいることから、労働人口の確保は可能と考えています。

Q: 境町と古河市との連携はありますか?
A: 特に連携はなく、むしろ競合関係にあります。

境町では、物流施設の誘致を進めるに当たって住民の理解を得るため、町長が直接説明会を開催した。地権者の組織が準備会を作り、町と協力して地権者の合意を得た。町では企業立地フェアに出展し、町の工業団地をPR。ふるさと納税の商品開発に力を入れ、民間と協力した。また移住定住政策として、町営住宅に入居した場合、20年後に家と土地を無償で譲渡する制度を設けた。物流施設を誘致するための施策としては、区画整理事業を通じて市街化区域編入を進め、工業団地開発を行った。また道路インフラの整備を進め、企業進出に伴う交通渋滞対策を検討している。

▲「道の駅さかい」

町が発行する広報誌「広報さかい」でも、「境古河IC周辺 物流大手3社進出決定」のタイトルで大きな特集を組み、「1000人の新規雇用、固定資産税毎年4億円の増収」を全面に掲げて、町ぐるみでの施設誘致を歓迎するムード作りも行っている。企業誘致による財政基盤強化が、町運営の財源となること、さらに災害時の避難所になり得ることなどを丁寧に訴える姿勢は、進出するデベロッパーにとっても心強いに違いない。

町内に鉄道駅がない境町だからこそ、トラック輸送の重要拠点としてその存在感が際立つ。新規物流拠点の再編成を検討する企業にとっては、こうした背景もまた重要な検討材料となるのではないだろうか。

※本文中のデータは編集部・イデアロジー調べ