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【特別連載②】利用件数14倍、荷主の資金繰りを救い新規顧客を開拓する一手

「決済DXが営業の武器に」海運大手ONEが証明

2026年9月25日 (金)

話題利用件数がわずか数か月で14倍に急増し、一度利用した顧客の継続率はほぼ100%──。大手コンテナ海運会社Ocean Network Express(ONE)がいち早く導入した「BtoBカード決済」が、いま大きな反響を呼んでいる。

日本市場におけるBtoB決済のカード利用率がいまだ1%にとどまるなか、彼らはなぜあえてカード決済の導入に踏み切ったのか。そこには、カード決済導入にかかる加盟店手数料を単なるコストではなく「新規開拓と売上増をもたらす戦略的投資」と位置づける、極めてシビアで合理的な経営判断があった。

物流事業者のフロントラインを強くし、選ばれる企業になるための「決済DX」の真価を解き明かす。

<<【特別連載①】物流の決済DXが「選ばれる理由」になる

1日700件の振込、手作業の着金確認がボトルネックに

ONEは現在、グローバルで約3万社、日本国内で3000社超の顧客を抱えている。同社は原則として、運賃の入金を確認してからB/L(船荷証券)の発行や貨物の引き渡しを行う「キャッシュオンデリバリー」(前払い)を採用している。

日本における集荷代理店「ONEジャパン」のB/L発行件数は、輸出入合わせて月間約6万件に上る。この膨大な取引を処理するため、決済のスピードは顧客へのサービス品質に直結する。しかし、その裏側には想像を絶するアナログな手作業が存在していた。

ONEジャパン営業本部受渡部の遠山尚部長は、その実態を次のように語る。

「当社には、日本国内だけで1日あたり約700件もの銀行振込が寄せられます。そのうち7割は『1B/Lに対して1振込』なのですが、残り3割は複数のB/Lの運賃が合算されて振り込まれてきます。我々は毎日7−8人のスタッフを配置し、お客様から送られてくる振込明細書と銀行の着金データを手作業で突き合わせる『着金紐付け作業』を行ってきました」

▲ONEジャパン営業本部受渡部の遠山尚部長

振込の合算や名義違い、過不足金などが発生するたびに、その確認に膨大な時間を奪われる。特に大手顧客の場合、1回の振込に十数口分のB/Lが含まれるケースもあり、処理時間が大きく変動する。顧客が書類発行や貨物リリースを急ぐ時間勝負の中で、この属人的な確認作業は社内の大きなボトルネックとなっていた。

▲船積み実務の一般的なプロセスのうち、ピンク色の機能はウェブ上で完結する仕組みを構築していたが、「請求・支払」の工程は人手による確認作業を要していた(クリックで拡大)

API連携と消込作業「完全自動化」への道

この課題を根本から解決すべく、ONEは顧客向けサービスプラットフォーム内に請求・支払い・運賃照会機能を統合した「ONE Finance」(ワンファイナンス)を構築し、そこにVisa(ビザ)のBtoBカード決済機能を実装した。

しかし、導入への道のりは決して平坦ではなく、開発には半年以上の期間を要した。巨大な自社システムに決済機能を統合するにあたり、日本市場特有の商慣習に合わせて細かくカスタマイズしたり、BtoBカードビジネスの要件定義を慎重に検討したりしたためだという。

「ONE Finance上では、お客様がご自身のB/Lごとの支払い状況をダッシュボードで一元的に確認できます。対象のB/Lをお客様自身が選択してクレジットカード決済を実行するため、決済データと請求データが完全に紐づきます。これにより、レシートの即時発行、B/Lなどの書類発行、そして貨物リリースまでがノンストップで同時に完了する仕組みです」(遠山氏)

1日約700件の振込突合という手作業から経理スタッフを解放し、同時に支払確認による貨物リリースの遅延リスクをゼロにする。半年をかけたシステム連携は、まさにバックオフィスの構造転換だった。

▲「ONE Finance」を使った「請求・支払」の流れ(クリックで拡大)

取扱件数14倍、荷主のリアルな反響と「選ばれる理由」

カード決済の導入は、当初の予想を超える反響を呼んだ。遠山氏によると、サービスをリリースして数ヶ月は利用者が低調だったものの、認知が進んでからは利用件数が急増し、その数は当初の14倍に達した。

「特筆すべきは、一度ご利用を開始いただいたお客様のほぼ全員が継続して利用されている点です。利便性の高さを実感し、利用件数を増やしていただいているのだと認識しています」(遠山氏)

実際に顧客からは、カード決済の導入を歓迎する生の声が多数寄せられているという。

「『振込明細書を送る手間がなくなった』『経理部門に伝票を回さずノンストップで決済できる』『振込手数料が不要になった』といった業務効率化やコスト削減の声に加え、『Visaカードのポイントが貯まるため社内の福利厚生に活用したい』といったお声もいただいています。何より、『決済ステータスがリアルタイムで確認でき、ONEからの連絡待ち時間がゼロになった』というスピード面の評価は非常に大きいです」(遠山氏)

「社内の費用削減」と「顧客の事業成長」を見据えた経営判断

ここまでの遠山氏の言葉からカード決済のメリットは明白だが、サプライヤー(物流会社)側にとって検討すべき点が「加盟店手数料」の負担だ。ONEはなぜ、このコストを受け入れたのか。

遠山氏は、このほかにもONE社内の極めてシビアな経営判断のロジックを明かす。

「これまで我々はキャッシュオンを原則としていたため、お客様に柔軟な支払いサイクルをご提供しきれない課題がありました。しかし、カード決済を介すことで実質的な支払い猶予が生まれ、お客様の運転資金のプレッシャーを大幅に緩和できます。これにより、新たなお客様のビジネスを支援できるようになるほか、既存のお客様にも、資金繰りを気にせずより機動的に事業を拡大していただける環境が整います。社内の消込作業自動化による『費用削減』効果も合わせれば、加盟店手数料を補って余りある価値を生み出せると確信しています」

加盟店手数料の発生は当然認識している。ONEには、先述の入金消込作業の完全自動化といった大幅な業務効率化と「費用削減」のメリットがある。さらに、決済の利便性向上は顧客の資金繰り改善や新規取引の創出に直結する。

手数料負担を「社内のコスト削減」と「取引拡大を通じたビジネス成長」の両輪で十分に吸収できるという、極めて合理的な計算に基づいているのだ。

▲Visaの細谷淳司氏

ビザ・ワールドワイド・ジャパン法人ソリューションズディレクター、細谷淳司氏もこのロジックを裏付ける。

「Visaと外部機関のグローバル調査によれば、カード決済を導入したサプライヤーには請求金額の5.71%相当のメリットがあり、その最大要素は『他社との差別化による売上増加』でした。未回収リスクの排除や業務効率化を含めれば、コストよりも得られるメリットの方が圧倒的に大きいことが実証されています」(細谷氏)

伴走型パートナーと次世代インフラの価値

では、数ある決済プラットフォームの中で、ONEはなぜVisaを選んだのか。圧倒的なグローバルネットワークによるクロスボーダー取引への親和性はもちろんだが、理由はそれだけではないという。

シンガポール本社で本プロジェクトを主導したチームは、当初クレジットカードのBtoBビジネス形態についてゼロからのスタートだった。そこで大きな役割を果たしたのが、Visaが主催するワークショップだったという。決済の仕組みを基礎から学び、自社と顧客のメリットを深く洞察できたことが、Visaを最適なパートナーとして選定する決定打となった。単なる決済システムの提供者ではなく、業務改革に伴走する真のパートナーとして機能した証左といえる。

さらにVisaは、現在の法定通貨によるカード決済にとどまらず、ステーブルコインなど次世代の金融インフラへの投資も積極的に行っている。決済インフラをVisaに委ねることは、未来のグローバルなサプライチェーンの変化に備える強靭な基盤を手に入れることを意味する。

物流業界全体へ波及する決済DXの熱気

9月10日、「国際物流総合展2026」の会場で開催されたVisaとONEジャパンによる共同セミナーは、多くの物流関係者でほぼ満席となる熱気を見せた。そこにあったのは、決済という裏方作業を「営業の武器」へと昇華させたONEの成功事例に対する、物流業界の高い関心だ。

日本のBtoB決済市場におけるカード利用率はいまだ1%未満の黎明期にある。だからこそ、先行して導入する企業は新規顧客を開拓し、競合に対する圧倒的な優位性を築くことができる。

ONEが証明したように、BtoBカード決済は単なる支払い手段の変更ではなく、事業成長を加速させる戦略的投資といえる。そして、その変革の歩みを根底で支えるのが、世界を網羅するVisaの強靭な決済ネットワークだ。物流のフロントラインを強くする決済DXという新たな生存戦略に、業界は今こそ向き合うべき時が来ているのかもしれない。(編集局・鶴岡昇平)

本件に関する問い合わせ
VisaのBtoBカード決済に関する問い合わせ
ビザ・ワールドワイド・ジャパン 法人ソリューションズ
メール:VisaBSJapan@visa.com

ONEジャパンに関する問い合わせ
メール:JP.CCP@one-line.com

BtoBカード決済に関するホワイトペーパー
「B2Bカード決済導入の価値、取引から変革へ~アジア太平洋地域の大手サプライヤー調査報告」
日本語版ダウンロード

物流の決済DXが「選ばれる理由」になる