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14年度入社式で工藤社長が訓示

「人間力で差別化を」、日本郵船

2014年4月1日 (火)

話題日本郵船は1日、東京都千代田区の本店ビルで2014年度入社式を行い、工藤泰三社長が新卒採用社員53人に対して訓示を行った。

■「人間力で差別化を」(工藤泰三社長による訓示、要約)
「人間力で差別化を」、日本郵船2014年度から5か年の中期経営計画「More Than Shipping 2018」を発表した。世界中の船は大半が日本、韓国、中国で作られている。船価も船質も大差はあまりない。ということは、当社が他社と差別化していくにはどのようにすればよいか。単純なハードでは差別化できない中でMore Than Simple Shipping、単純な海運業ではない+αの部分に注力するしかない。

More Than Shipping、船以外の分野で最たるものが物流事業。顧客の視点に立てば、物流ニーズというのは単純に船による海上輸送だけではない。工場から港まで、港から倉庫まで、あるいはさらにその先の最終消費者に荷物を届けて初めて顧客の物流ニーズに対応できるの。

船だけに注力すると、コモディティー化が進んだ船ではなかなか差別化ができない。日本郵船グループは船だけではなくて、顧客に船+αの物流ニーズにも対応することに注力している。皆さんは船会社に就職したが、海上輸送だけに注力していてはだめだ。陸上輸送も貨物航空輸送も当社にはある。そういう分野も含めた物流のエキスパートになってほしい。

アメリカのシェールガス革命などもあり、今後LNG船はどんどん増えていくと思う。原油価格の高止まりや、原油を生産できる場所も例えば北海やブラジルのリオデジャネイロから100マイル(185キロ)、200マイル離れた深海油田の開発が進むなど、どんどん難しい場所になってきている。このような分野でこそ、シャトルタンカーなどの難しい操船が要求されている。ここにこそ当社の生きる道がある。

LNG船やシャトルタンカーなど難しい船を支えるのはもちろん乗船している航海士、機関士の安全に対する高い意識、努力もさることながら、こういう船を造るためのファイナンスなどコーポレートの分野も大変重要。

昨今では燃料代が1トン600ドル-700ドルする。現在当社が運航している最大のコンテナ船1万3000個型の船が24ノットで走ると1日当たり200トン程の燃料を消費するから1日1200万円になる。この1万3000個型の船の維持費、修繕費、乗組員の費用をすべて合わせると1日当たり500万円掛かる。燃料代が1200万円で船の値段が500万という状況になっている。

当然、当社はこのような状況下を放置しているわけではなく、減速運航に努めている。24ノットで走っている1万3000個型の船を仮に20ノットで走らせると、1日80トンぐらいセーブができ、燃料費として1日480万円セーブできる。もちろん航海日数は延びるがそれを加味しても、昨今では減速運航はとても大事だ。

一方、船は決まった日時に次の港に着かないといけない。航行中は時化も潮流もある。そのような状況下で決まった日時に到着させると同時に燃料消費を最大限に少なくするためには乗船している航海士、機関士の努力やきめ細かさのみでなく、陸上側で運航する人たちの作業もとても大事になる。いわゆる「擦り合わせ」という分野だ。

日本郵船グループはブロードバンドなどを使いながら、陸上と海上が擦り合わせをし、燃費削減を行っている。ハードでは差別化できなくなった今、More Than Shipping、つまり技術力を含む人間力で他社と差別化を図ろう。今後5年間の経営方針を支えるのは、まさに皆さんの人間力で他社と勝負するということ。人間が勝負することは大変なことだが、日々自分を高め自覚し、大いに勉強してほしい。そして当社をもっともっといい会社にしてほしい。

いい会社というのは、単純に利益を追求するだけではなく、CSRをまっとうできなくては企業としては存在価値がない。幸い当社の物流事業は、世界経済の大動脈であり、CSRの最たるものと思っている。やりがいのある場所で働く、これも皆さんにとって大切なモチベーションになると確信している。