ロジスティクス冷蔵倉庫に保管する貨物の品温や品質をめぐるトラブルが後を絶たないとして、日本冷蔵倉庫協会はこのほど、保管品温、荷役作業、ダメージ品に対する冷蔵倉庫の実態と責任範囲に関する見解をまとめた。
季節的な要因に加え、ECの利用拡大に伴って冷蔵倉庫の需要も高まっているが、冷蔵倉庫が負うべき責任範囲や荷役作業などへの誤解・理解不足が原因で、トラブルに発展するケースが後を絶たない。中には、「ほかの貨物の荷主に悪影響をおよぼすことを考慮せず、湯気が立っている製品を持ち込む荷主もある」という。
協会では、見解を公表することで利用者である荷主に冷蔵倉庫を正しく理解してもらい、トラブル削減につなげるとともに、冷蔵倉庫事業者に対しても過度なサービスを提供してサプライチェーン上のほかの物流事業者にしわ寄せが行かないよう、適切な業務の提供を促す狙い。
見解では、保管温度と貨物の温度(品温)の関係について、「保管品の品温が室温と同等になるにはタイムラグがあり、入庫品の品質と入庫時の品温と数量にもよるが、数時間で室温と同等になることは困難」など、室温と品温が入庫してすぐに等しくなるわけではないと強調。荷さばき場の温度維持設定範囲と作業時間については、倉庫業法上の規定がないこと、事業所ごとの事情で設定が異なることを付け加えた。
また、冷蔵倉庫事業者には、保管品の品質に関する知見がないため、保管温度は荷主が指示することを要望したほか、冷蔵倉庫事業者が行う検品は外装や積付け状態にとどまり、保管品を開梱して内容の検温を行うわけではないことに理解を求めた。
このほか、入出庫時の検温を放射温度計(非接触型温度計)で行うよう求める荷主が多いことを踏まえ、協会で3回にわたって実施した品温実験の結果を付した上で、「放射温度計は段ボールの周りの空気しか検温しない」との結果を示しつつ、「放射温度計による商品外箱の温度計測結果を商品受入時の判断基準とすることは、食品ロス、物流ロス削減の観点からも再考してほしい」と要請している。
こうした冷蔵倉庫の「正しい理解」について説明を行うとともに、冷蔵倉庫事業者の責任範囲については「保管庫の室温を適正に維持していた場合、品質についての責任を負うことはできない」とした上で、「寄託約款の規定により、倉庫業者に損害賠償を求める場合の挙証責任は荷主にある」と主張している。