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リート事業化段階に

三井不動産、新たに物流施設5物件の開発決定

2016年3月24日 (木)

拠点・施設三井不動産は24日、ロジスティクス事業の記者説明会を開催し、三木孝行ロジスティクス事業本部長が物流施設開発ビジネスの進捗状況を説明するとともに、新たに5物件の開発計画を決定したと発表した。

三木孝之氏

また、かねてから準備してきたリートの組成については、Jリート市場への上場を視野に3月に「三井不動産ロジスティクスパーク投資法人」を設立したと明かしたうえで、現在は投信法上の手続きを進めている最中にあると語った。

ロジスティクス事業のスタートから4年が経過した同社の物流施設開発はすでに10棟が稼働し、開発中物件も新規開発決定物件を含めて12棟、合わせて22棟となった。総延床面積は200万平方メートル(60万坪)、累計投資規模も3000億円に達している。

三木氏はロジスティクス事業のスタートから4年経ったのを機に、「ロジスティクス事業のあるべき姿を本部内で真剣に議論」して策定したという事業ステートメント「ともに、つなぐ」「ともに、うみだす」を発表。

「顧客の課題にともに向き合うパートナーでありたい。また、ディベロッパーとして、ハイスペックな施設を提供するだけでなく、顧客の課題に対して率先してソリューションを提供し、ともに価値を生み出す存在でありたい」と思いを込めて説明した。

新規開発が決定したのは「MFLP福岡I」(福岡県須恵町)、「MFLP稲沢」(愛知県稲沢市)、「MFLP厚木II」(神奈川県厚木市)、「川越プロジェクト」(仮称、埼玉県川越市)、「MFLP茨木」(大阪府茨木市)――の5物件。

三井不動産ロジスティクスパーク福岡Iのイメージ福岡Iは戸田建設が資材置き場として利用していた土地を活用し、同社との共同事業として開発する。着工は1月。施工は戸田建設が担当し、10月の竣工竣工を目指す。広域搬送拠点として適した立地。

稲沢はMFLP小牧に続く中京圏2件目の物流施設で、6月にも着工し、17年5月に竣工する。名古屋圏の配送拠点に適した立地で、奥田駅から徒歩5分と雇用を確保しやすいのが特徴。

厚木IIは神奈川県厚木エリアで2件目。着工9月、竣工17年10月。厚木ICから3キロと近く、首都圏広域搬送拠点としての運用を想定する。

川越プロジェクトは延床面積13万平方メートルの大型施設計画で、川越ICから2キロ、最寄り駅にも徒歩5分と近く、従業員の確保しやすさも利点となる。

三井不動産ロジスティクスパーク茨木のイメージ茨木は、関西圏2件目で同社の基幹物件となる物件。10万8600平方メートルの敷地に24万平方メートルの施設を設ける。5月に着工し、17年9月の竣工を目指す。名神高速道路茨木ICから2.6キロと近く、低床バース、空調設備付きエリア、屋上テラス含む休憩スペース、シャトルバス運行、ランドスケープ――と、このほど制定したステートメントを体現する「5つの新たな取り組み」を導入した。

今後は年に3、4件をメドに開発・供給していく方針で、特に用地の仕入れについては「入札に頼らず、できるだけ相対取引で適切な土地を仕入れる」ことを強調した。

また、三木氏は「できれば東南アジア、なかでも商業・住宅を展開している台湾、タイなどを想定している」と海外事業展開にも言及。海外展開に際しては「日立物流がバンコクに最大拠点を置いているが、例えば日立物流のような主要3PLである既存顧客と組んで展開していけると面白い展開になる」と話した。

ターゲット国としては、台湾、タイにマレーシア、シンガポールを加えた4か国を想定しているという。

■一問一答
――賃料動向と用地取得の状況は。

三木氏:賃料と空室率は関連性が高く、油断・楽観しておらず、供給が非常に多いことを気にかけている。現時点では全体の空室率が低いものの、今後は間違いなく空室率が上がってくる。関西も同様だ。平均空室率は現在の1、2%から6、7%程度まで上がるとみている。

ただし、細かいエリアでみると、そうではないエリアがある。当社はより細かいメッシュで地域を見ているが、そういう観点からいうと、物件によっては苦戦しているものも出てくると考えている。物件ごとに空室率の強弱が出てくるだろう。

用地の仕入れコストは、4年前に比べて2倍程度になっている。入札であればそれでも応札する企業があるだろうが、このビジネスは最初に「土地代」を間違えると成功しないと考えている。

――5物件の開発計画を発表したが、これらに対する投資額は。

三木氏:100億円からもう少し多いくらい。海外は含めていない。事業企画部全員で海外を視察し、有力な日系物流企業と面談し、候補物件も見てきたが、日本以上に戦略エリアを定めて取り組むべきだと考えた。力の強い3PLから話を聞き、彼らが「ここならやりたい」というところに注力していきたい。

――需給状況について、施設によって強弱あるというが、新規供給物件はフリーレント期間を長く設けるケースもあるようだ。今後のリーシング活動の苦労はどのように想定しているのか。

三木氏:慎重に取り組まねばならない。どの物件がどれくらいのフリーレントを設定しているかなど、分析は日常的に行っている。一方で、物流施設は商業施設と異なり、竣工した時点で100%うまく埋まるものとは考えていない。タイミングによって決まる。

フリーレントより、落ち着いてよく物件をみてもらう。フリーレントを多く入れなければならないという物件は、当社では今のところない。

――海外展開の時間軸のメドは。

三木氏:物流事業の立ち上げ時は目標掲げたが、海外については目標、ノルマを設定していない。チャンスはあると感じている。場所と国を間違えずに取り組むことが重要だ。

――施設の差別化の点で空調はユニークだが、今後、標準装備にしていくのか。ほかにもこういうテナント志向の施策を考えているのか。

三木氏:空調設備の導入は「トライ」だ。夏の暑い中に女性が働いているのを見て、本当に大丈夫かと思ったことがあった。賃料とのバランスが成り立つのかどうか、テナントの評価を踏まえながら(ほかの物件にも適用できるか)検討していきたい。

――今後の開発ペースは。

三木氏:年間3、4棟は会社としての目標。投資機会がなければ開発がゼロになることもあり得る。マーケットの許容範囲を外れて投資することはないが、これまでのところ、リーズナブルに取得できている。

ただ、古い倉庫が多いという点は感じている。本当に今のままでいいのか。規模の小さい倉庫がほかの用途に変わりながら、働く人が快適に働ける物流施設がまだまだ必要。先進的な施設に対する社会的な要請も高まっていくと思う。

――物流施設の投資利回りについての考え方は。

三木氏:会社によって事情があり、詳細はオープンにできないが、リートの利回りで5%を切る物件もあるのが物流マーケット。(これらの数値に対しては)物件の評価が高すぎると感じており、参考にするつもりはない。三井不動産のほかの物件の平均値を見ながら、6-7%程度を想定していきたい。

――冷凍・冷蔵倉庫に進出する考えは。

三木氏:可能性ある。具体的ではないが、ニーズがあればトライしていきたい。