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保管スペース圧迫→PDF化→権利上の不備判明→保管方法見直し

旺文社、入試問題のPDF化撤回し保管方法検討

2016年5月20日 (金)

荷主教育専門の出版事業を展開する旺文社(東京都新宿区)で、入試問題の保管に関する取り扱いをめぐり、著作権法上の不備とみられる問題が判明した。

同社は教育機関から提供を受けた入試問題を倉庫に保管しているが、倉庫スペースを確保する課題と経年劣化に備え、安定的に保管するために大量の紙の入試問題をPDF化し、元の紙を破棄する運用を行っている。

二次利用する際には「しかるべき権利処理」を行ったうえで適正に利用しているということだが、PDF保管については、入試問題に含まれる著作権者に対し、許諾申請などの手続きをしておらず、こうした「原本を破棄しPDFデータを保存する”媒体変換”の行為が、著作権法上の複製権に抵触する恐れがある」と判断し、PDFデータを削除したうえで、保管方法を改めることにした。

同社は、教育機関から提供された入試問題の原本の保管について、同社内の施錠できる倉庫で、編集過程で原典照会や許諾申請に利用する資料として保管してきたが、経年劣化への備えと格納する倉庫スペースなどの関係で、段階的にPDF形式によるデータ保管への移行を推進。

PDF化した入試問題の紙の原本は年度ごとにすべて破棄し、「紙の代替物」という認識だったが、「認識に不備があったと言わざるをえない」として今回、PDF化して保管する行為が「複製権の侵害」にあたるという判断に至った。

これまで入試問題を収集する際には、紙の書籍のほかに「電子辞書・電子書籍、入試データの蓄積、公衆送信による通信指導などにも利用する」との方針を伝えた上で、問題の提供を受けてきた。一部の教育機関からは、二次利用の際に改めて許諾を求められるケースもあったというが、これらは「いわゆる商業的な利用に関するものだと認識し、PDFデータでの保管について別途、許諾申請はしていなかった」という。

同社は著作権者、教育機関、関係者に対する謝罪の意を示し、これまで保存してきた関連のPDFデータをすべて削除する、との方針を発表するとともに「現行の法制度が続く限り、著作権者の許諾なく入試問題をPDF保管することもない。今後は、さらなる法令順守の徹底と管理体制の強化を行う」として、紙の状態で保管を継続する考えを示した。