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貨客混載10事例公開、政投銀が調査レポート

2018年6月7日 (木)

調査・データ日本政策投資銀行(DBJ)は7日、貨客混載を中心に地域公共交通の新たな動きについて調査したレポートを発行した、と発表した。

レポートでは、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などの貨客混載10事例について調査を行うことで、貨客混載のメリット、課題と対応を整理するとともに、今後の活用の可能性について検討している。

DBJは、「貨客混載は公共交通事業者が乗車密度の低い路線や回送便の空きスペースを有効活用し、新たな収益を生む取り組みでで、荷物の輸送に伴う収入は、路線収入全体で金額的なインパクトとしては決して大きなものではないが、定期的に一定額が確保できる定期運賃のような安定した収入源となっている」と分析。

また、物流拠点や営業所から集配エリア近傍までの荷物輸送をトラックから公共交通に代替することで、物流ドライバーが空のトラックで集配エリアから物流拠点に荷物を取りに戻る回数が減り、物流の効率化が図られるなどのメリットを示した。

一方で、貨客混載の実施にあたっては、輸送される荷物の量と公共交通の空きスペースがマッチしている、公共交通事業者と物流事業者の運行方面と時間が整合している、荷物の積み降ろしを行うスペースが確保できるなど制約条件をクリアする必要があるなどの課題をあげた。

これらの課題に対し、貨客混載を行った各事業者にヒヤリングした結果、輸送される荷物の量と公共交通の輸送密度が整合していることや、共交通事業者と物流事業者の運行方面と運行時間が整合していること、車両車庫や道の駅のような、荷物の積み降ろしができるある程度の広いスペースが確保できること――といったことが貨客混載を実施するために必要な条件であることがわかった。

ただ、「貨客混載への注目度が高まる中で、すでに多くの公共交通事業者に、ヤマト運輸といった大手物流事業者との貨客混載の実現可能性を一度は検討しているようだが、これらの条件を満たす路線がないなどの理由から、取り組み開始に至らないケースが多い」という。

一方で、「事例をみると貨客混載にはさまざまなバリエーションがある。このうち、生産者が小ロットの地域農産品などを低コストで近隣の消費地や道の駅といった販売拠点へ輸送したいとするニーズは、一定程度存在すると考えられる。このニーズに公共交通事業者が地域商社や小売事業者と連携して対応できれば、大手物流事業者を活用するよりも、輸送方面や輸送時間の面でより柔軟な運用方法を検討できる可能性がある」との見方もある。

一般的に貨客混載は過疎地での取り組みがイメージされることが多いが、住宅密集地での取り組み事例もあり、わずか2駅の区間でも双方の事業者にメリットがある取り組みが実現されている。

「先行する各事業者の創意工夫により積み上げられたノウハウを横展開することで、一度は検討を断念した地域でも、新たな気づきから取り組みに至るケースが増える可能性がある」と分析した。

■レポート全文
http://www.dbj.jp/ja/topics/region/industry/files/0000030332_file2.pdf