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通販受取りに「宅配が最適か疑問」、ヤマトHD社長

2019年4月12日 (金)

ロジスティクスヤマトホールディングスの長尾裕社長は11日、ネット通販(EC)の利用拡大によって配達すべき荷物量が宅配事業者の限界を超える、いわゆる「宅配クライシス」をめぐり、自社が目指す方向性について語った。

配達物のボリュームが宅配事業者のキャパシティを超えるまでになった現在の事業環境について、長尾社長は「物流の小口多頻度化が進むなか、宅配領域にはECの荷物が流れ込みやすい状況だといえる。確かに宅配とECの親和性は高いが、果たしてECの最適解かといえば、疑問が多い」と述べ、ネット通販で購入した商品の主要な受け取り方法に宅配便が「当たり前」となっている現状に疑問を呈した。物流メディアとの懇談会の席上で言及した。

一方で、大幅な値上げやそれを受け入れない顧客との取引停止を断行した「ヤマトショック」とも呼ばれる自社の動きに多くの物流事業者が追随し、運賃値上げが進みつつあることを振り返り「物流側の供給力が小さくなっていることには危機感を持たねばならない」とも話した。

やはり、物流側の供給力が小さくなっていることに危機感を持たねばならない。(需要が供給を上回っているから)プライシングしやすいという側面はある。さらに進めるべきだが、だからといって物流事業者が”強い立場”にあるとは思わないほうがいい。ヤマトHD・長尾氏

▲長尾氏

人手不足とECの拡大を背景に、運賃や宅配料金の値上げが進む現状について警鐘を鳴らしたものだとみられるが、「値上げしやすい風潮」はヤマトが自ら求めたものではなかったのか。「危機感を持つべき」と述べた理由について、長尾氏はこう説明する。

(行き過ぎると)顧客側が自衛姿勢を強め、物流事業者がなすべきことがどんどんなくなっていく可能性もある。一つのオペレーションにかかる適正対価はもらうべきだが、トータルコストをどう下げていくかが重要だ。(単に値上げだけを求めるのではなく)輸送というプロセスをいかに削減していくかを同時に提案していかなければ、物流業界の存在価値は薄まっていくだろう。長尾氏

物流側の値上げ攻勢に業を煮やしたアマゾンや楽天のような「高騰する物流コストを嫌う大手荷主が、自前の配送手段の実現に動いていること」に対する危機感の大きさがうかがえる。

その「解」として同社は宅急便事業に依存する事業構造からの脱却を図り、「サプライチェーンの川上から川下まで」の物流を3PL事業者として一括受託することで収益拡大につなげるという方針を示しているが、この分野では後発組となるだけに、いかに先行他社との差別化を打ち出せるかがカギとなろう。