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事故調、荷物用昇降機事故2件の報告書提出

2019年12月5日 (木)

事件・事故国土交通省は4日、昇降機等事故調査部会がまとめた報告書が審議会の議決を経たとして、3件の報告書を公表した。3件のうち2件は荷物用の昇降機による事故だった。

■小荷物専用エレベーターの事故(大阪府)
2019年5月9日、大阪府泉南郡の福祉施設で、昇降機のかごが3階に停止しているにもかかわらず、2階の出入口の戸が開いたことにより、施設職員が昇降路内に4.5メートル転落し、負傷した。

事故が起きた昇降機は、1986年に検査証が交付されたクマリフト(大阪市西区)製の小荷物専用昇降機(積載量300キロ)で、同施設は保守点検業者と契約しておらず、保守点検を33年間実施していなかった。事故原因について調査部会は、33年間無保守だったことで戸の施錠装置に関わる部品の経年劣化に気付くことができず、本来解錠されるはずのない場面で戸が開いてしまったと結論づけた。

同施設は、再発防止策として戸の周辺部品を交換し、建物内のエレベーター保守点検業者と保守契約を結んだ。

■荷物用エレベーターの事故(新潟県)
2019年1月10日、新潟市の工場で、利用者が4階で降りた後、戸が閉まりながらエレベーターのかごが上昇し、最上階(6階)を行き過ぎた位置で停止。釣合いおもりは昇降路内の緩衝器に衝突していた。

事故が起きたエレベーターは、1998年に検査証が交付された昌和輸送機(東京都千代田区)製の荷物用エレベーターで、工場はハイン(新潟県三条市)と月1回の保守点検契約を結んでおり、18年7月の定期検査でも事故前日の保守点検でも指摘事項はなかった。

事故調査部会は、かごが上昇した直接的な原因は、ブレーキ引き摺りが発生したことで部品の摩耗が進行し、かごを静止保持する力を得られなかったためと推定。ブレーキ引き摺りが発生したのは、制御装置と出力モジュールを21年間交換せずに使用していたためと断定した。また、本来であればブレーキ引き摺りが発生した場合、安全装置が動作してエレベーターが停止する仕組みとなっていたが、誤配線により機能していなかったことも間接的な原因に挙げた。同安全装置は、国交省が2016年9月に製造元に対して指導を実施した際に、安全対策装置として設置されていたものだった。

調査部会は、国土交通省に対し、「要改善」に該当するブレーキについて安全対策を徹底するとともに、既に実施した安全対策についても正常に機能することを確認するよう要請。また、制御装置などのブレーキ動作に関わる部品の交換基準や欠陥に関する情報を分かりやすく提供することなどを求めた。