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「これが本当のシェリング」と自信

佐川GL、全国80拠点でテナント同士の倉庫シェア

2020年8月21日 (金)

ロジスティクス佐川グローバルロジスティクスは21日、倉庫スペースやマテハン機器をテナント同士がシェアする「スペースシェアサービス」を全国80拠点、総床面積15万坪の同社倉庫で開始したと発表した。

このサービスは、未稼働時間の倉庫スペース、マテハン機器を有効活用する「オーダーメイドのシェアリングサービス」(佐川グローバルロジスティクス)で、例えば「今月は10日間ほど、夜間のみスペースが空くので、有効活用したい」といった荷主からのニーズを受け、同社が「時間単位の空きスペース」として新たな荷主からの仕事を引き受ける。

この場合、新たな荷主のために使用するマテハン機器は佐川グローバルロジスティクスが所有するものを使用し、作業も同社が受託する形となるが、倉庫のスペース料金はもとの荷主(=テナント)がスポット利用する荷主に転貸する形をとるため、もとの荷主は自社の物流稼働率に応じてスペースシェアサービスを利用すれば、その分の賃料負担を補うことができるようになる。

(出所:佐川グローバルロジスティクス)

佐川グローバルロジスティクスでは、1月頃から全国の荷主に構想を説明し、その大半から既存の賃貸借契約に新サービスの内容を追加することの了解を取り付け、7月に千葉県柏市などの一部地域でテスト運用を開始。閑散期の使用していないかったスペースをほかの企業とシェアすることで、月額の物流コストを30%削減できた例もあるなど、好感触が得られたことから、20日に全国の荷主にサービス開始を通知した。

(イメージ画像)

荷主の中には、新型コロナウイルスの影響で中国から想定していた荷物が入ってこなかったり、小売ルートの「詰まり」から在庫があふれたりといった、倉庫スペースの運用に課題を抱えるケースが増えており、スペースシェアサービスはこうした「波動」を吸収する手段として、転貸する側の荷主、スポット利用者の双方から歓迎されそうだ。

佐川グローバルロジスティクスにとっても、これまでは荷主と契約した物件は「満床」となり、それ以上の売上を見込むことはできなかったが「荷主にスペースを貸し出して物流作業を請け負っている」という自社の立場を有効活用し、請け負っている作業の繁閑具合やスペースの空き具合をにらみながら、荷主に「日中は満床だが夜間は空いているので、部分的に貸し出してはどうか」と働きかけることで、事業機会を増やせるメリットがある。

作業内容に合わせたマテハン機器をシェアするニーズにも対応するため、最新機器の導入に必要な初期投資や運用コストを抑える手段としても活用できる。

同社では「スタートアップによるシェアリングサービスが盛り上がっているが、何も難易度の高い情報システム(IT)を開発するだけが革新ではない。本当のシェアリングはこういうものではないか、という考えにたどり着いた」と話す。

実際、スペースシェアサービスの運用に際して、特許や特殊なビジネスモデル、ITシステムなどはなく、同社の取り組みに対する荷主企業の支持が広がれば、競合する3PL事業者も同様のサービスに乗り出すことは想像に難くない。

この点を同社にぶつけてみると「確かに特殊な仕掛けは何もない。他社が模倣するまでは差別化要素として荷主に訴求し、追随してくれば『日本の物流に貢献した』と考えればいい」と明快だった。