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コロナ発生時の初動、天災が人災と化すことを危惧

2020年11月6日 (金)

話題コロナウイルスの蔓延が、再び大きな山を迎えようとしている。物流倉庫でもクラスターの発生が相次いで報告され、その中身は以前よりも重篤化しているようだ。他業種に比して密になりにくい物流倉庫現場ではあるが、初動の判断ミスや報告・対処の躊躇が、感染の連鎖——クラスターを引き起こす原因となっている可能性は否定できない。(企画編集委員・永田利紀)

(イメージ画像)

「荷主である事業会社や物流部門を統べる本社機能は、コロナウイルス感染者の発生を、現場の過失や管理不備だと考えていない」ということを、誰もが認める社会通念として関係者は共有しなければならない。「このたびは感染者を出してしまい申し訳ございません」というコメントや書面での陳謝を目にすることがしばしばあるが、それは無用である——と運営主体の経営者や委託元である荷主側が認めることは当然だし、現にほとんどの企業内ではそうなっているはずだ。

なのに、物流現場が一方的に情報を出さなかったり、自己判断で事の経緯を見守ったり、社内であれこれと議論や対処のあれこれに時間をかけていたり…。そしてクラスター化して手が付けられなくなってから保健所に届け出たときには、完全に機能停止しての防除措置以外の選択肢がなくなっている。最小で収めようと画策して、結果的には最大の被害・損失を被る羽目になる。

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それに似た事例は少なくないと推測している。おそらくだが、限られた関係者以外には発表されていないだけだろう。誰も責めたり非難したりするはずはないにもかかわらず、なぜか勝手に「過失」や「不行き届き」と思い込んで、結局は真の過失や隠蔽になってしまう。

「視えない・感じないゆえに感染が防ぎきれない」疫病罹患の発生は天災であり不可抗力なのだ。そこを失念して見当違いの責任感や使命感による情報不開示や初動制限にはしれば、天災を人災化してしまう危険性が高まることは明らかだ。

ワクチン供給までの当面は、コロナウイルスと共存する状態が続く。感染防止対策に抜かりなくは、当然の責務だが、その先の罹患者発生は偶発的ゆえ確度高い予測も予防も不可能だ。ならば現状のまま、対処的行動の日々に甘んじるしかない。それに際し、くれぐれも情報の開示に躊躇なきようにと願う。感染者の発生は犯罪でも反社会的過失でもないという前提で荷主も物流事業者も判断し、行動するべきだ。

台風や洪水による災害が比較的少なかった今年だったが、コロナ禍によってそんな実感は誰も抱かない。被災地の被災者を責める者などいるはずがないように、罹患者への気遣いや物理的ケアは社会としての責務だ。今は他国同様に国民全体が被災者かその予備軍なのだ。向かうべきはウイルス防除であり、個々の営みにマルバツをつけることではない。

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