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日立物流の安全運行管理を外販へ、日立3社が協業

2020年12月3日 (木)

M&A日立製作所、日立物流、日立キャピタルの3社は3日、日立物流が社内で導入している安全運行管理システム「SSCV Safety(セーフティ)」の外販に向けて、協業を開始したと発表した。2021年4月以降に物流・バス・タクシーなどの輸送事業者向けに新サービスとして提供開始する。

新サービスは、日立物流が事業用車両に搭載している「SSCVセーフティ」と、日立製作所の物流向けソリューションを組み合わせてサービス化するもの。具体的には、(1)出発前点呼時の生体情報測定でドライバーの体調や疲労を総合評価し、異常を把握する(2)危険運転や危険状態時に警告音を発する(3)危険な事象とその発生位置、動画を管理者へメッセージ通知する(4)全車両の位置とドライバーのストレス状態をリアルタイムに表示する(5)帰着後点呼時に運行ルートと検出された危険事象など動画で振り返る――といった機能が搭載される。

▲3社協業のイメージ(出所:日立物流)

新サービスの元となる「SSCVセーフティ」は、車両運行前後や運行中のドライバーの体温や血中酸素濃度、血圧、自律神経などの生体情報と、ドライブレコーダーから取得した運転データをAIが分析してまとめ、ドライバーが帰着後に運転を振り返ることができるもの。日立物流では、16年から交通事故とドライバーの疲労度の関係性に着目してシステムを開発し、自社の安全運行や労務管理、技術指導などに活用していた。

一方の日立製作所は、配送計画を自動立案するサービスなど、AIやIoTなどのデジタル技術を活用した物流向けソリューションを提供しており、今回両社のソリューションを組み合わせて外販用にサービス化する。日立製作所は、地図データやデジタルタコグラフと連係するドライブレコーダーを開発中で、これを新サービスの車載端末とすることにより、より多くの情報でドライバーの安全運行を支援する体制を整える。

将来的には、運送会社向けの業務効率化や車両管理といった機能を実装したり、日立キャピタルの請求回収機能を活用した従量課金オプションを追加したりすることを検討していくという。

▲新サービスの概要(出所:日立物流)

自動化とロボット化が交わる日も近い

自動運転技術は日進月歩だが、その完全版ともいえる公道実走の一般化まではドライバー依存の状態が続く。ナビゲーションや障害物センサー、ブラインドスポットからの接近警告や夜間走行時のアダプティブビームなど、ドライブ補助機能の充実はドライバーの経験則依存の軽減や注意喚起による事故削減に大きく寄与している。

今回のような乗務時の個人別傾向――クセや性格由来のトラブル抑止や修正・指摘機能は、これまでドライバーが帰社後に管理者から対面で受けていた「運行内容のレビュー」をAIによって客観的に統計化したものだ。ゆえに事故やトラブルの予見と予防、そして人選にまで及ぶ「業務と乗員のマッチング機能」として活用できるに違いない。

業務統計は日々増加し、傾向や結果から導かれた分析は、人間の判断力や行動のいちいちを「間違わないロボット」に近づけていくのかもしれない。AI制御の自律型ビークルとロボットを手本として行動する人間の近似化は進む一方だ。(企画編集委員・永田利紀)