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ANA沖縄ハブへの貨物機就航断念、「撤退ではない」

2021年1月29日 (金)

話題ANAホールディングスは1月29日、沖縄県とともに沖縄国際物流ハブの新たなモデルを構築する、と発表した。同社は新型コロナウイルスの影響で貨物需要が減退し、パイロットを確保しきれないこともあって、昨年4月から沖縄ハブへの貨物専用機の運航を見合わせているが、需要回復のめどが立たないことから、貨物専用機の運航「将来的な再就航の可能性」を残したまま、実質的に断念する。

(出所:ANAホールディングス)

これに伴い、従来の貨物専用機を中心とした輸送モデルから、那覇空港に就航する旅客便やピーチの貨物スペースを活用したモデルへと移行することでアジアを中心にネットワークを拡大し、EC商品などの輸送需要に対応する。ピーチ以外の外国航空会社3社とも輸送スペース契約の交渉を続けており、旅客便の貨物スペースを利用した沖縄ハブの運用体制へと転換する。

同社はこれまで10年以上にわたって沖縄県との共同事業として沖縄国際物流ハブを構築してきた。この間、沖縄発の輸出貨物重量は120倍に膨らんだが、新型コロナウイルスの流行に伴い昨年4月から貨物専用機を全便運休。今後も需要回復のめどが立たないなか、4月以降の新年度の動向が注目されていたが、1月29日に「2021年度以降も、貨物便の運休継続を決定」したことを発表した。

今後は自社運航旅客便のほか、外国航空会社の貨物スペースを利用した新たなモデルを構築するとともに、「感染が収まり各社が復便するまで」の間は全日本空輸の沖縄=羽田線など国内線を活用し、首都圏からの国際線に貨物を搭載する現行スキームを継続、サプライチェーンの維持を図る。

(出所:ANAホールディングス)

このルートでは沖縄発貨物の優先的な搭載や確実な保冷輸送を強化。特に、農水産品が多く保冷の必要がある貨物が多いことから、保冷コンテナやサーマルブランケットを活用した輸送や、経由地(羽田・成田)で確実な保冷蔵置を実施する商品を打ち出し、輸送品質の向上をアピール。提携するほかの航空会社と協力し、他社運航便でも保冷品質を高める。

12年から沖縄をベースとした国際物流で提携関係にあるヤマトグループに対しても、旅客便の貨物スペースを活用する新たなモデルへの参加を呼びかけている。

ただ、新型コロナウイルスの影響が収束する見通しが立たないなか、貨物専用機ではなく旅客便の貨物スペースを活用する体制を「新モデルへの移行」と表現する同社の苦悩は深く、客観的には実質的な撤退とも取られかねない。こうした懸念について、同社は「需要をにらみながら、再就航の可能性は残すことにしている。あくまで運航休止の継続であり、撤退とはいいたくない」とコメントした。