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「荷姿」すら不明、ワクチン物流の問題点は——

2021年2月15日 (月)

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メディカル新型コロナウイルスワクチンの流通に不可欠な「手引き」がようやく示された。厚生労働省は先週、安全にワクチンを接種できる体制を構築するための自治体向けと医療機関向けの手引きを策定したが、肝心の「いつ、どこに、どれくらいのワクチンのワクチンが届くのか」という情報は、依然として伏せられたままだ。

ワクチンの国内物流をめぐっては、接種事業の主体となる自治体に厳格な温度管理などを求めながら、製造元メーカーと政府の守秘義務契約やEUの透明化メカニズムなどが障壁となって、体制づくりに必要な情報を共有できない状態が続いている。ワクチン物流に関する現在の課題がどこにあるのかを明らかにするため、先週から今週にかけて交わされた編集部内の会話を掲載する。


赤澤裕介(編集長):厚生労働省健康局からワクチン流通の指示書となる「手引き」が通知されましたが、物流面で気になる点はありますか。

永田利紀(企画編集委員):誰の視点で考えるかによって異なると思いますが、流通のおおもとをつかさどるであろう「製薬卸事業者」を中心に据えた考察がわかりやすいのではないでしょうか。

赤澤:要するにフォワーダー以後、医療現場までの物流を常日頃から生業としている実務者ということですね。

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永田:そうです。薬品卸の差配によって全国各地・各施設にワクチンが配付されるということのようですが、協力事業者となる物流各社の懸念事項がいくつか思い浮かびます。

赤澤:たとえば。

永田:もし私が物流現場の担当者で、実際にワクチンの荷役に携わるのであれば、いの一番に知りたいのは「荷姿」ですね。

赤澤:荷姿のどういった情報が具体的に必要になりますか。

永田:単純に入数や一個口の大きさなどです。かつマイナス75度の冷凍ケースなどの条件を加味して、結局はどんな大きさのモノをどうやって運ぶのかを第一に決める必要があります。

赤澤:積んだら運ぶ、運んだら下ろすのですが、積み下ろしの両面で情報が不十分だということですね。

永田:そうです。目的地に到着したら——その目的地は接種の最前線となる医療現場なのか、その手前のTCなのかも情報として必要ですし、積み込み・積み付け・荷下ろしの際に重量や大きさの具体的な数値が把握できていないと、続く荷役の段取りが組めません。また、一時的なTC経由なら、その後にどう荷が動くのかも、荷姿の変化の有無とともに、知っておかなければなりません。

赤澤:手引きを読む限り、接種現場での医療者向けガイドの詳細からさかのぼって「予測」や「予想」しなければならない部分があるように感じるのだけど、その点はどう思いますか。

永田:そう思います。熟読して場面ごとに点在する情報をつなぎ合わせば、なんとか線形化したフローになりそうですが、それを誰に確認すればいいのかが現在は不明です。ひょっとしたら内々に問い合わせ窓口が設置されているのかもしれません。

卸事業者や物流事業者よりも都道府県やその先にいる市区町村レベルの関与者は、物流の基本事項や必要情報の採集に不慣れで、かつ未経験だと思われますので、何らかのガイダンス・サポート機能を担う組織は不可欠のはず。

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赤澤:全体の流れの中で、国・都道府県・市区町村の行政単位別の守備範囲、並行する事業者単位の業務フロー分担区分の明快な説明はどこかにあるのでしょうか。

永田:なければ混乱や事故のリスクは非常に高くなります。末端の各自治体や各機関が自己解釈や自己判断で現場運用すれば、善意の過失や思い込みによる錯誤の可能性は否めないものになります。その点は、われわれが日々見聞きしている数多い物流現場でのフローに照らしてみれば瞭然です。

赤澤:ワクチンの到着が本格化するにあたって、流通経路の規格化とその整備は必須ですね。

永田:そのとおりです。逆に言えば、温度帯の違いによる保管設備や機材の相違を把握したうえでの物流業務フローさえ整備しておけば、あとは労働力と運送・保管の設備容量の試算と確保だけに専念して注力できるはずです。

赤澤:実行部隊の司令塔は誰なのか。関係各位からの情報提供を求む、と最後にお願いしておきたいですね。

ワクチン配送の基本情報依然不透明、接種開始目前も