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リクルート、「ロジシフト」で物流マッチング参入

2021年5月12日 (水)

サービス・商品リクルートはこのほど本誌の取材に応え、同社グループの新事業提案制度によって立ち上げ、2月から試験的に開始している求荷求車サービス「ロジシフト」の現況や、今後の展望について語った。企画を立案したプロダクト統括本部新規事業開発室インキュベーション部の平井凌太郎氏は、現在は小規模な実証実験として展開している同サービスを「12月頃には拡大フェーズに移行したい」と説明するとともに、2、3年後を目途に正式ローンチを目指す考えを示した。

ロジシフトは、運送会社にオンラインの配車管理システムを無料で提供し、空車と荷主の求車をマッチングするサービスで、運送会社が紙やホワイトボードで配車計画を策定する際の煩雑な業務を、インターネット上で効率化する。運送会社は実車率や積載効率を上げ、荷主は電話などでの求車にかかっていた手間や時間、仲介する運送会社へのマージンを削減することができる。

平井氏は、実証実験に参加中の運送会社と荷主の数については明言を避けたものの「ともに反応は良い」と手応えを感じていることを強調。運送会社が業務においてロジシフトの配車管理システムを積極的に使用し、リクルートも当初の想定以上にトラックに関する情報を取得できていることを説明した。

運送会社と荷主の獲得に向けては、グループ各社からの紹介や電話による勧誘などを中心に、その他の方策も模索中とのこと。また、現在は「スポット便や緊急便が多い業種の荷主」の輸送案件がメインとなっているが、今後は「車両の数や種類、貨物の量、対応エリアのいずれも拡大していきたい」と意欲を示した。課金モデルについては検討中という。

■ 市場は広く、まだまだ未完成

リクルートグループはこれまで、傘下の投資会社を通じて米国の配達ロボット開発ベンチャーなどに出資したことはあるものの、本格的な物流関連事業への参入は初めて。ロジシフトが新規事業提案制度「RING」(リング)の2019年度公募を通過したことで、日本を代表するメディア・ソリューション企業の老舗が、物流の世界で勝負することとなった。

▲平井凌太郎氏

RINGは1982年の開始以来、結婚情報誌の「ゼクシィ」や20代男性社会人向けの「R25」などさまざまなヒット企画を生み出しており、毎年数百件の企画案を集める。そのうち厳しい選考を通過し、実証実験に至るのは1%未満。物流業界の経験はなく、美容院予約サイト「ホットペッパービューティー」の事業企画を担当していた平井氏が企画したロジシフトも、初挑戦の18年度は通過できず、19年度に日の目を見た。

平井氏によれば、発案のきっかけは17年以降の“ヤマトショック”や“物流クライシス”で、社会問題化した物流業界の課題を、リクルートが蓄積した知見やノウハウで解決できないか考えたという。現在の求荷求車システムを取り巻く状況については「プレイヤーが増えているが、市場はまだまだ未完成」と述べ、同社がさまざまな事業で培ってきたマッチングのための施策やシステム、グループの営業網などが優位性につながるとの見方を示した。

▲業務用画面イメージ(クリックで拡大)

なお、日本国内の求荷求車サービスについては、圧倒的な強者がいないまま競争が加速化。昨年10月には日本通運とソフトバンクも、物流DX支援会社のMeeTruck(ミートラック、東京都港区)を共同設立し、21年度中のサービス提供開始を目指すと発表している。

平井氏は、他社との協業については「市場は広いので、個人的にはライバルとして戦うよりも、協業やアライアンスによって一緒に盛り上げたい。既存の大手物流企業や、同様のサービスを提供する企業などと協働して進めるのが、戦略としては最も速い」と語り、現場の担当者間レベルでは意見交換の機会があることを説明。その上で「大手などと組まないと、事業として成り立たないのか否かについては、結論は出ていない。検討を続けたい」と語った。(編集部)