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AMRの強み引き出すRaaSの力/AMR特集IV

2021年7月28日 (水)

話題人手不足と”2024年問題”を抱える物流業界で、ロボットへの関心が急速に高まっている。6月24日にオンライン開催された「物流AMRフォーラム2021」では、当初の定員300人を大きく上回る700人超が参加を申し込み、2時間半に及ぶ4社の講演に耳を傾けた。

本記事では、プラスオートメーション(東京都港区)の大西弘基CMOによる「物流RaaS、ロボティクスが変える物流倉庫」の講演を紹介する。

▲プラスオートメーションの大西弘基CMO

プラスオートメーションは日本で初めてAMRをサブスクリプション形式で提供し、日本のRaaS業界を牽引する会社。大西氏は、物流RaaSの概要と、そのメリット・デメリット、RaaSが引き出すAMRの魅力について解説した。

RaaSとは「Robotics as a Service(サービスとしてのロボティクス)」の略称で、利用企業はサブスクリプション形式でロボットを導入できる。短期〜中期での利用が可能で、初期投資の極小化・設備投資を費用化することで固定費を変動費化できる点がメリットといえる。また、スモールスタートが可能で、設備の陳腐化を防ぐことができるのもRaaSの特徴だ。

一方、長期利用前提の場合、一括購入・設備投資として償却できない点はデメリットといえる。また、高速・大容量の物流オペレーションが必要になる物流現場への導入や、陳腐化リスクのない実績のある設備を導入したい場合にRaaSは不向きだという。

講演の中で大西氏は、「AMRの特徴が最も生きるサービスはRaaSである」と言及。AMRの特徴とRaaSのメリットが適合しており、特に大規模なレイアウト変更を必要とせずに導入できる点と、人とロボットが併用可能である点がマッチしているという。今後はWMSとのインテグレーションやセットアップが煩雑で高額となるところをどれだけ簡便に安くできるかどうかが課題であり、重要であると語った。

以下、講演内容全文↓

ここでは、ロボットの現場導入にポイントを絞って「物流RaaSとは、ロボティクスが変える物流倉庫」のテーマで進めさせていただきます。

プラスオートメーションは、2年前に設立し、「RaaS:物流向けロボットの機器・システムのレンタル・販売」の事業を展開しております。ビジョンとして掲げているのが、「テクノロジーで時代のロジスティクスを共に創る」です。物流倉庫の自動化(DX=デジタルトランスフォーメーション)を実現するパートナーというのが我々の立ち位置です。

物流倉庫向けにはいろんなロボットがありますが、実際現場に導入する際のパートナーとして認識していただければと思います。現場へのロボット導入における最初の悩みは、「ロボットをどこに使えばいいのか」「自分たちのオペレーションのどこを自動化すればいいのか」という点ではないでしょうか。我々は、まず課題を抽出し、物流のロボットをどこに使えばオペレーションが効率化できるか、いうところからスタートします。課題解決に必要なロボットを含めた全体のサービスを、月額利用料という形で提供するのが事業コンセプトです。

これがRaaSの説明ですが、さらに詳しく見ていきましょう。

RaaSは活用して現場を改善して初めて真価を発揮する

従来の自動化設備導入プロセスは、検討して導入する流れでした。導入するところが大きな投資になりますし、当面はここを目指してやられているケースがほとんどかと思います。安定稼働をした後は保守という形になります。一方で、我々が考えるRaaSは、活用するところをゴールと設定します。導入するところはスタートに過ぎず、活用して改善して実際使っていくところがゴールになります。

その先ではさらなる改善を目指しながら検証していくサイクルがRaaSモデルだと思っています。月額利用料制のサービスであるため、効果が出なければ解約することもできることから、改善してどんどん使い続けることで利用料をいただき続けることが目的になっている事業スタイル、ビジネスモデルになっています。

起点になるのは、いつも現場のオペレーションになると思います。お客様のオペレーションを起点に、そこをどんどん活用して改善していくことで、さらなる効率化を目指していきます。システムとかロボットの導入とその運用・保守・改善により、お客様の物流を効率化していく考え方です。その全体をサービスとして提供するのがRaaSです。利用料はサブスクリプションでの課金ですが、それはさらなる効率化により契約を継続するという意味でRaaSとしています。

リースやレンタルとの違いについて説明します。リースは、提供するものが機器本体で、基本的に新品になります。それを3年や5年といった長期で分割して支払っていきます。汎用的かつカスタマイズ化は問わず、あらゆるものをリースの対象とすることができます。これはファイナンス的なソリューションなのが特徴です。

レンタルは、新品か中古かは問わず、機器の本体を提供するサービスで、契約期間は短い場合は時間単位のケースもありますが、1日から長期まで多様です。対象機器は、サービスの性格上、汎用的なものである必要があり、プロダクトが対象になっているのがレンタルであると言えます。

RaaSは、機器のレンタルを含めた一括サービスです。契約期間は中期、数か月から2年までと考えていますが、数ヶ月使っていただいてその効果が出るというところを提供価値にしていくという意味を込めています。長期間継続して使うことが前提になれば、リースや購入という選択肢が優勢になってくるかなと思います。

RaaSのメリットとデメリットを押さえよう

RaaSのメリットとデメリットを考えるうえで、コストにつきましては、RaaSは短期から中期で使えるところがメリットと言えます。初期投資を極小化できるのもそうですが、オフバランスやROA向上もRaaSの大きなメリットでしょう。

デメリットについて考えますと、長期利用が前提の場合は、経済合理性があるのは一括購入だと思います。設備投資として償却するスキームは、RaaSの場合は適しません。また、拠点単位でランニングコスして計上されるので、人件費と比較すると固定費化される形になります。

設備投資のところをRaaSの利用料という形にすることで変動費化するとしていますが、一方で正社員と派遣社員アルバイトみたいな形で固定費と人件費を考えていくと、RaaSは解約を1日単位や数時間でできるものではないので、正社員にような固定費化されたものになっていきます。

コストの比較で、サブスクリプションでRaaSで支払った場合と購入との差について説明します。先ほどの数カ月から2年といった中期の物流のRaaSで考えると、3年から4年あたりがポイントかなと思います。購入もメンテナンスもそうなんですが、金利や固定資産税、保険などを考慮した場合、その交差点になる部分は3年を超えたくらいになります。稼働終了のところですが、RaaSの場合は契約期限を迎えれば全て終了ですが、購入した場合は撤去や原状復旧でかなりのコストがかかってくるケースも考えられます。

リスクと柔軟性につきましても、メリットとデメリットをまとめておきます。リスクや柔軟性というのは、RaaSのメリットになる部分だと思っています。スモールスタートが可能であるほか、オペレーションに合わなければ解約すればよいため、導入リスクをかなりげ軽減できます。また、日々進化を続けているロボットの場合は、陳腐化リスクを低減できるのもRaaSのメリットと言えるでしょう。短期のレンタルを組み合わせて柔軟に設備能力やレイアウトを変えられるのも強みです。

一方で、デメリットを考えてみますと、導入当初から高速で大容量の物流オペレーションが見込まれる現場には不向きだと思います。あとは陳腐化リスクのない実績ある設備を導入したい場合は、RaaSにおいてはデメリットになると考えます。ヒューマンリソースと比較するとそこまでフレキシブルではないので、他の作業へ回したりとか短時間だけ使ったりというケースは難しいです。

デメリットについて考えていくと、大規模物流センターよりも中小規模のオペレーションの現場の方が適していると言えそうです。ただし、大きな物流センターであっても、部分的なオペレーション、例えば全体をマテハンでやっているけれどもその余剰分をロボットでやるケースであれば、中小規模のソリューションになってくると思います。

RaaSにはAMRの特徴を引き出す力がある

ここで、RaaSとAMRの関係性について説明します。AMRの特徴が最も活きるサービスがRaaSだと思っています。AMRの特徴は、まずは簡単に導入できるところです。また、人とロボットを併用できるなどの柔軟性、さらに人の歩行距離を短縮で切るなどの作業効率アップも、AMRの強みです。こうしたAMRの作業効率を高められる特徴を最も活かせるのがRaaSというわけです。

課題については、WMSとのインテグレーションやセットアップに関する点と考えています。RaaSの形で提供するとお客様からそのロボットが帰ってくることがあります。そうするとまた違うお客様にそのロボットを提供する形になるりますが、その際にWMSとのインテグレーションを行う必要があります。それが高額になっていくと、月額利用料という形の事業モデルは非常に厳しくなっていきます。

ここをいかに簡便で安くするかが今後のカギになると思っています。どれだけ簡単にWMSとつなげるかについて、今後進めていくことと認識しています。

簡単に事例を紹介します。RaaSの観点からはこの2つです。稼働後に月次で定例会を実施しながら活用状況を共有し改善策について協議を続けました。これはラピュタのカスタマーサクセスの部隊も当然入っていただいていますが、我々のソリューション部隊も一緒に協議を続けています。月額流量のサービスを継続していただくのももちろんですが、改善を繰り返していくことで、さらに使っていただくことを目的としています。

二つ目は、稼働直後7台からオペレーションを開始し、AMRに限らずロボットを導入した際はオペレーションの前後の工程を含めて変わっていくため、いきなりフルスペックで変えるのはなかなか難しいのですが、RaaSだからこそ順次拡大することができたと思っています。

今日は、AMR以外のロボットについても簡単に紹介します。

こちらは仕分けのロボットですが、ピッキングと仕分けという人での一番かかるところについて、まずは自動化の対象としています。仕分けの方はAGVのソーターを既に複数の拠点に導入しております。こちらも特徴である導入の容易さや柔軟性というところが、ラピュタのAMRと全く同じと思っています。

RaaSという観点から、2拠点の事例紹介をいたします。最初は、富士ロジテック・ネクストですが、当初は仕分けの標準機能による出荷と返品を使うという形でアパレルのオペレーションをやってました。その後1年近く経って、投入口を追加してさらに能力を上げるところや、機能的なところについても箱を入れ替える機能でハンディとラベルプリンターを連携したりと、こうした追加機能を施しています。

こうしたアップグレードや追加機能を相当安く入れられるのも、RaaSのメリットであると思います。この箱入れ替え機能は標準機能ですので、追加費用をいただくことなくやらせていただいております。

二つ目の事例は、もともとかなり標準的なレイアウトで仕分け能力が毎時1200ピースで運用していたセンターについて、レイアウトの変更の依頼があり、そのタイミングでレイアウトを増やすなどの工夫をすることができ、仕分け能力としては実際毎時1750ピースまで増やすことができました。台数を増やすことなく、レイアウト変更によって仕分け能力を上げることができたことで、お客様にも喜んでいただきました。レイアウトだけではなく、ソフトウェア的なアップグレードもあり、こうした施策を無料で受けられるのもRaaSのメリットと考えています。

最後に、大井競馬場の前の勝島エリアで、倉庫兼R&Dスペース兼デモスペースの「cube」(キューブ)を構えております。いろんなロボットの展示やデモの形で見学いただいております。使ってみないと分からないというところが、ロボットにはあると思いますので、よろしければ足を運んでいただいて、ロボットに触れて使ってみていただければと思います。

プラスオートメーション・大西氏の講演資料ダウンロードはこちら