ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

凸版印刷、量子アニーリングで物流効率化を実証へ

2021年10月25日 (月)

▲業務効率化・見える化システム「MITATE」のシステム概要図(クリックで拡大、出所:凸版印刷)

荷主凸版印刷は25日、東北大学発スタートアップのシグマアイ(東京都港区)と共同で研究を進める、量子コンピューティング技術の一つである量子アニーリングを活用した物流業務の効率化実証実験を始めたと発表した。

今回の実証実験では、凸版印刷とシグマアイが共同で進めている量子アニーリングを、凸版印刷グループのトッパン・コスモ(東京都千代田区)が物流業界などに向けて提供する業務効率化・見える化システム「MITATE」(ミタテ)に適用して計画立案機能を拡張することで、配車や配送計画などの業務負担の軽減やスピード・精度向上、配送時間の削減に伴う環境負荷低減を目指す。

実証実験の効果検証をとおして、量子アニーリング活用のノウハウを蓄積し、重さ・大きさ・種類・荷姿など荷物に関する情報の安全・安心な運用・管理、集荷や配達に伴う配車や配送計画の策定など、物流業務を効率化・見える化する物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進する。

今回の実証実験で活用する量子コンピュータは、工場内の無人搬送車による配送効率化や、製造ラインの従業員シフト最適化などに貢献する技術であり、物流現場においても複雑な制約や状況に応じた最適な計画を算出できる手法として期待が高まっている。

凸版印刷とシグマアイは、今回の実証実験を通じて、量子アニーリングの活用と物流業務の効率化・見える化に関するノウハウを蓄積。凸版印刷が保有するデジタル技術と高度なオペレーションノウハウを掛け合わせ、データ活用を機軸としたサービスを物流業界に提供することで、物流DX化の推進に貢献していく。

新技術の「見本市」と化している物流現場

凸版印刷と東北大学発スタートアップのシグマアイが、量子アニーリングと呼ばれる技術を活用した物流業務効率化の実証実験を開始した。いわゆる「物流DX化」の一環として、新しいアプローチからの効率化策として提案する。まさに多様な業界が参入している物流DX化の新しい姿として、注目すべき案件と言えよう。

(イメージ)

量子コンピュータは、従来のコンピュータとは全く違う新しい仕組みで動作し、超高速で問題を解決できる技術として注目されている。従来のコンピュータが0か1の2進数で演算処理を行っていたのに対し、量子コンピュータなら、0と1を同時に表現できるため、並列処理が可能となる。この原理を活用したのが、今回の実証実験の端緒だ。

物流は、あらゆる産業のなかでも、最もデジタル化に縁がない業界とされてきた。消費スタイルの多様化に新型コロナウイルス感染拡大が重なり、物流現場の課題が一気に露呈する様相で、物流現場はもはや、新しいDX関連技術を持つ企業がそれぞれの強みを試す「見本市」と化している。

こうした状況が、当面続くと予想されるなかで、現場は本当に必要な技術を見抜く「眼力」を養う必要があるだろう。それを鍛える意味でも、こうした実証実験の行方に注目すべきだ。(編集部・清水直樹)