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9割近くが求荷求車サービス利用意向、信頼構築カギ

2021年10月27日 (水)

話題LOGISTICS TODAY編集部が10月12日から25日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「求荷求車・マッチングサービス」に関する実態ニーズ調査(有効回答数1014件、回答率35.4%)で、既存のこうしたサービスが抱える課題について、取引相手との信頼性構築への不安や運営会社への不信感が根強いことが分かった。インターネットの普及に伴い市場が急拡大した求荷求車サービスだが、運賃設定や輸送品質にばらつきが大きく、業界としての信頼感を得られないでいる実情が浮かんだ。一方で、積載率向上を図りたい運輸業者にとって不可欠なサービスであることも事実で、利用する側にも的確な判断力が求められていると言えそうだ。

今回の調査における回答者の内訳は、運送業が49.3%、荷主企業が16.2%、3PL企業が15.3%、その他物流企業が11.4%、倉庫業が4.4%、その他が3.4%。実運送を伴う企業の回答が多数を占め、求荷求車・マッチングサービスの利用経験については57.7%が「ある」と答えた。ここでは、求荷求車・マッチングサービスの関心度とその理由、抱える課題について聞いた。(編集部特別取材班)

求荷求車サービスへの高い関心

回答者の半数以上が利用経験のある求荷求車・マッチングサービス。経験者に対して、現在の利用の有無と今後の継続的な利用の是非について聞いたところ、全体の73.3%が「現在も利用しており、今後も利用したい」と答えた。「現在は利用していないが、今後は利用したい」(13.3%)との回答も合わせると、実に86.6%が今後の利用に関心を抱いていることが分かった。リピート率が高いことから、一定の利便性や業務へのプラス効果を感じていることがうかがえる。

【設問】求荷求車・マッチングサービスの利用したことがありますか。利用したことがない方は、今後は利用してみたいと思いますか。
(1)利用したことがある
(2)利用したことがないが、今後は利用してみたい
(3)利用したことがないし、今後も利用したいとは思わない

今度は逆に、経験のない回答者に今後の利用希望の有無を聞いた。「今後は利用してみたい」が67.4%と過半数を占め、利用経験がなくても関心は抱いているとの結果が出た。急な荷物の配送など、イレギュラー時の強い味方になる求荷求車・マッチングサービス。その便利さに対する興味は、特に荷主企業の物流担当者であれば、少なからず惹かれるところがあるのだろう。

積極利用者はサービスを業務改善に役立てている

では、求荷求車・マッチングサービスの関心を持つのはなぜだろうか。こうしたサービスを「利用している」または「利用したい」理由を選ぶ設問で、最多だったのは「輸送の繁閑に対応したいから」で60.6%を占めた。「発注先・受注先の多様化を図りたいから」が49.8%で続き、次いで「帰り荷を確保したいから」(36.9%)となった。ともに、求荷求車・マッチングサービスが存在する理由をまさに反映した回答と言えるが、こうしたニーズはやはり根強いのだと改めて実感するところであり、求荷求車・マッチングビジネスに携わる事業者の多くは、適正なサービスを提供していることの証左でもあるだろう。

【設問】求荷求車・マッチングサービスを「利用する」または「利用したい」理由を選択してください。(複数選択可)
(1)発注側として自社で車両(ドライバー)を確保しきれないから
(2)受注側として自社で車両(ドライバー)を確保しきれないから
(3)発注先・受注先の多様化を図りたいから
(4)運賃の適正化を図りたいから
(5)輸送の繁閑に柔軟に対応したいから
(6)既存荷主からの荷物量が減少している(しそうだ)から
(7)営業担当者や輸配送管理担当者の雇用負担を減らせるから
(8)帰り荷を確保したいから
(9)運賃相場を知りたいから

帰り荷の確保の悩みは国内物流業界に顕著な傾向であり、日本の物流サービス水準の高さゆえに、帰り便を確保できないスケジュールを組んででも迅速に配送しようとする運輸企業の「実直さ」が反映されている。とはいえ、積載率の向上はドライバーの労務管理や環境配慮の観点からも喫緊の課題との認識が広がってきており、国土交通省もその解決策の一つとして、求荷求車・マッチングサービスを事実上奨励する施策も講じている。

受注側と発注側の双方が自社で車両やドライバーを確保しきれないことによる利用動機もあった。「発注側として自社で車両(ドライバー)を確保しきれないから」が31.7%、「受注側として自社で車両(ドライバー)を確保しきれないから」も28.8%が回答しており、人手不足や設備投資の抑制などで車両やドライバーの確保が難しくなっている現状を示す結果となった。

使わない理由は「不必要」と「不信感」

それでは、求荷求車・マッチングサービスを「利用していない」または「利用したくない」理由はなんだろう。物流業務を担う事業者の回答のうち、83.2%と大半を占めたのが「自社のネットワークで輸送業務をカバーできるから」だった。次いで「スポット業務が不要だから」が44.6%、「サービス利用時の費用対効果が不透明だから」が43.6%と続いた。

【設問】「利用していない」または「利用したくない」理由を選択してください。(複数選択可)
(1)取引相手の信頼性に不安があるから
(2)運営会社の信頼性に不安があるから
(3)自社の与信基準が厳格だから
(4)スポット業務が不要だから
(5)自社のネットワークや営業力で荷主を確保できるから
(6)自社のネットワークで輸送業務をカバーできるから
(7)サービス利用時の費用対効果が不透明だから
(8)利用前の手続きや手間が面倒だから
(9)手数料が高額だから
(10)入金サイクルが自社に合わないから
(11)既存荷主に利用を制限されているから
(12)どれを利用したらいいのかわからないから

そもそもこうしたマッチングサービスを利用しなくても、自社で定常の仕事を回せるのであれば、確かに求荷求車サービスの出番はないだろう。スポット業務が不要というのも同様だ。しかし、費用対効果の不透明さについては、利用する側の認識不足もさることながら、サービスを運営する企業のアピールも必要なところではないか。

さらに、求荷求車・マッチングサービスの実情のある側面を示唆している回答は、「取引相手の信頼性に不安があるから」が32.7%、「運営会社の信頼性に不安があるから」が26.7%だった。国内では古くから「水屋」と呼ばれる仲介役が存在し、物流事業者と荷主のマッチングを行っていた。いわば「自分以外の人に運送を委託してマージンを取る」仕事を指し、信用ならない振る舞いをする業者も少なくなかったとも伝えられる。マッチングで契約が結ばれることからも分かるように、運賃の「適正水準」が定まりにくく、結果として「安かろう悪かろう」の商売が成立してしまうケースも存在するという。いわばモラル崩壊のケースだ。

ここは、求荷求車・マッチングサービスを担う企業と利用側の正当な交渉や契約、相互理解の深化で解決していくしかない課題なのかもしれない。むしろ、ここで業界規律がしっかりと整えば、便利で頼りになるサービスとして認知され、サービスの質もさらに向上していく「正のスパイラル」が実現するというわけだ。

「サービス事業者への不信」は払拭できるか

最後に、既存の求荷求車・マッチングサービスが抱える課題について聞いた。「取引相手との信頼性構築に不安がある」との回答が全体の51.9%を占めてトップ。「輸送品質にばらつきがある」(46.6%)、「与信基準があいまい」(34.1%)、「運営会社の信頼性に不安がある」(33.2%)、「運営会社によって手数料のばらつきが大きい」(28.6%)、「スポット業務が増えすぎると輸送秩序が乱れるおそれがある」(27.1%)――と続いた。

【設問】既存の求荷求車マッチングサービスについて、課題と思うものを選択してください。(複数選択可)
(1)取引相手との信頼性構築に不安がある
(2)運営会社の信頼性に不安がある
(3)運営会社が多すぎて、どれを選んでいいかわからない
(4)与信基準があいまい
(5)スポット業務が増えすぎると輸送秩序が乱れるおそれがある
(6)輸送品質にバラつきがある
(7)利用するためのハードルが高い
(8)運営会社によって手数料のバラつきが大きい

ここで指摘された課題を最大公約数でくくれば、「サービス事業者への不信感」と集約できるだろう。この不信感は、何に由来するものなのか。今回の「求荷求車・マッチングサービス」特集の実施にあたり、複数の運営企業を取材した。そこで見えてきたのが、荷物の輸送を頼む側(荷主)と、輸送する側(運送会社)の顔が互いに見えないことによる不安だった。

求荷求車ビジネスはマッチングサービスであることが最大の強みであり、その機能を最大化するのはITシステムだ。近年ではAI(人工知能)を活用したラーニング機能を持つマッチングシステムも求荷求車ビジネスに導入されている。確かに両者の相性はよいのだろうが、荷主と運送会社が互いに「本当の大丈夫だろうか」と相手に不信感を抱かせるサービスは、未成熟なビジネスと言わざるを得ない。

しかし、求荷求車・マッチング事業者のなかには、こうした不信感をなくす取り組みを続ける企業もある。デジタルの先進的なマッチング機能を開発しながら、あえて電話やファクスによるアナログ対応を残して支持を得ている事業者もあった。「デジタルとアナログの両方を選べるシステム」が、こうしたマッチングビジネスには最適なのだという。

決して安くはない運賃を支払い、顧客の大切な荷物を運んでもらうのだ。ここに、求荷求車・マッチングサービスのあり方を業界全体で考える余地があるのではないだろうか。ぜひ、ここで読者の皆様にも考えていただければと思う。

次回は、現在提供されている求荷求車・マッチングサービスの認知度や関心度、利用実績について分析する。

■求荷求車・マッチング特集