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求荷求車サービスで独自の存在感を示すルーフィ

差別化の秘策、それはデジタルとアナログの「共存」

2021年10月27日 (水)

▲東京・日本橋のオフィスでは、年中無休体制でマッチングの問い合わせに対応する。オペレーターは全員配車マンだ

話題「東京都新宿区大久保へ冷凍荷物3個の引き取りですね。送付先は大阪市北区中之島、明朝6時必着」。東京・日本橋のオフィス街にある事務所。配車オペレーターが電話機を片手にパソコン上の地図と向き合う。新宿区大久保周辺に、赤色のマークが続々と表示されていく。「お客様の元へすぐにうかがうことができる車両がございます。すぐに手配いたします」――。

貨物を確保したいトラック事業者と、荷物を輸送したい荷主のニーズをマッチングさせる求荷求車サービス。最近になって急速にその数を増やしているのが実情だが、それを後押しするのがITテクノロジーの進化だ。IT物流の象徴とも語られる求荷求車サービスだが、日本橋に拠点を置くルーフィ(東京都中央区)は、あえてアナログな手法も残した独自のマッチングモデルを構築して固定客の高い信頼を集めているという。

ルーツは「軽トラック冷凍冷蔵」の緊急輸送サービス

▲「ルーフィの原点は冷凍冷蔵輸送」と語る池田さん

「軽トラックによる食品などの冷凍冷蔵の緊急輸送ビジネスを展開する『クールシャトル』がまさにルーフィの前身であり、求荷求車サービス展開の礎となりました」。ルーフィが1996年の設立から求荷求車サービスにたどり着くまでの歩みについて説明するのは、執行役員B2B営業部長の池田吉隆さんだ。

当時、軽自動車でマイナス20度帯の冷凍冷蔵輸送を展開する事業者はほとんどなく、まさに先駆者として業界の注目を集めたという。「今すぐに目的地まで荷物を運んでほしい」とのニーズに年中無休で対応するビジネススタイルは、現在のルーフィの求荷求車サービスの底流をなす発想だ。

▲軽トラックによる冷凍冷蔵輸送は画期的な発想だった

創業から5年後。所有する冷凍冷蔵機能を備えた軽トラックは120台に増え、当時は千葉県の本社のほかに東京・神奈川・埼玉に営業所を構えるまでに成長。しかし、ここで転機が訪れる。

所帯が大きくなるにつれて、緊急輸送サービスを維持するために必要な車両管理の難しさが顕在化してきたのだ。さらなる事業拡大を計画していたルーフィは、いわゆるドライバーや車両の「動態管理」の必要に迫られた。

GPSによる車両管理システムが求荷求車「ハコブリッジ」の生みの親に

「当時はまだ極めて珍しかった、GPS(全地球測位システム)の全車両への搭載に踏み切ったのです」(池田さん)。ルーフィ創業者の廣田隆二・現会長と渡辺泰章・現社長は、あるビジネスモデルを作れることに気付いた。「GPSのおかげで車両の現在位置が正確に分かるのだ。それならば、お客様の現在地に近い車両を回すことでマッチングサービスができるのではないか」

▲オペレーターによるデジタルマッチング業務の様子。画面上に配車できる車両の位置が瞬時に示された

この発案は、ルーフィのビジネス展開の方向性を大きく変える原動力となった。設立以来のルーフィのビジネスで要となる役目を果たしてきた配車業務に、求荷求車マッチングという新たな使命が与えられた。「その配車業務をアプリケーション化したのが、デジタルマッチングサービス『ハコブリッジ』になるわけです」(池田さん)。

GPSを活用した軽貨物のマッチングシステムとして2016年5月に会員募集を開始したハコブリッジは、ドライバーの位置情報と空車状況を常時把握し、荷主からの急な配送依頼にも迅速に対応する強みを旗印に、首都圏から他の都市圏へと着実に展開エリアを拡大。20年9月には、AI(人工知能)を活用してさらにマッチング精度を向上させるなどのサービス向上策を継続することにより、求荷求車サービス業界における存在感を着実に高めてきた。

ルーフィの求荷求車の特徴は「デジタルとアナログの共存」

とはいえ、求荷求車サービスはIT技術の進歩に加えて、顧客ニーズの高度化・多様化に伴う輸送業界の構造的な変革も重なり、急激に市場規模が膨張。そんな環境下で、ルーフィが求荷求車サービスの主力企業として台頭してきたのはなぜなのか。

「ルーフィの求荷求車サービスの理念は『速さ』『安心』の2点に集約できると考えています」。B2B営業部広域営業課長の横谷圭司さんは、ルーフィのハコブリッジが他社にない強みとして、「冷凍冷蔵輸送における適切な温度管理」「スピード」といった設立以来の差別化領域に加えて、「デジタルとアナログの併存」であると強調する。

▲「デジタルでもアナログでもマッチングできる」強みを強調する横谷さん

とはいえ、ハコブリッジはアプリでマッチングを実現できるデジタルのシステムではないのか。そこにアナログを併存する余地があるのか。その疑問をぶつけてみると、横谷さんからは意外な答えが返ってきた。「デジタルでもアナログでもマッチングを依頼できる、それがハコブリッジの『安心』を支えるポイントなのです」

それを象徴するのが、配車業務のプロで構成されるオペレーターチームだ。ルーフィの日本橋にある本社オフィスは、オペレーター機能を兼ねており、創業時から24時間365日体制で対応に当たる。「ハコブリッジは、サービスの注文方法をウェブ、電話、ファクスの3種類から選べるように設計しています。つまり、デジタルとアナログで使い分けていただけるメリットを訴求しています」(横谷さん)

電話受付でもデジタルサービスと同じサービスを受けられるのが強み

物流現場で求荷求車サービスを求めるのは、多くが緊急輸送案件だ。イレギュラーな事態が発生し、荷物を至急届けなければならない状況で、ウェブサイトを検索するのは「手間」のかかる作業。それが電話一本で解決するならば、どちらが便利な方法だろうか。もはや自明だろう。そもそも、輸送現場の担当者はパソコンの前に座って常に仕事をしているわけではないのだ。こうした電話やファクス対応に不可欠なのがオペレーターの存在なのだ。

では、電話で注文した場合はハコブリッジのデジタルサービスは受けられないのか。答えは「NO」だ。電話注文でもオペレーターが代理でウェブ入力をおこない、ウェブ注文と同等の進捗メールや位置情報の確認を受けることが可能となる。

また、「オペレーターは全員、配車業務に精通したプロフェッショナルです。つまり、電話を受けたその場で、顧客の所在地で用意できる車両を見つけて条件のマッチングを行う業務を的確に判断して遂行できる集団です」。オペレーターに配車マンを配置している求荷求車サービス事業者は、ほぼ皆無だという。かゆいところに手が届く配車サービスが高い評価を得る。結果として、スムーズにマッチングが進むことで、アナログ注文でもデジタルサービスと変わらぬ速さで提供し、荷物輸送の実質的なトータルのリードタイムが短縮できると言うわけだ。

ハコブリッジの輸送モードは「陸」から「空」へ展開し全国当日配送

ハコブリッジの機能面で、近年注力しているのが「空陸一貫輸送」だ。求荷求車はそのスピード訴求型ビジネスの特性から、航空モードを活用したサービスに事業領域を広げている。20年12月には日本航空と業務提携を結び、ハコブリッジに新たな機能「ハコJET(ジェット)」の提供を開始。日本航空の国内線ネットワークとシステム連携を行うことで、ルーフィの荷主や配送業者をつなぐ空陸一貫物流を実現し、遠距離の「時間を指定できる国内初の3温度帯(常温・冷蔵・冷凍)の当日配送マッチングサービス」を提供する取り組みで、一気に北海道から沖縄まで当日配送のサービスエリアを拡大した。

さらに、ことし11月1日には、航空機のコンテナ予約サービスを開始。大口の輸送でも冷蔵冷凍を受け付ける。「ハコJETで想定以上に大口顧客の活用が多かったのです。小さい容器を複数同時に輸送する場合と比べて、作業の効率化を図れるメリットがあります」(横谷さん)。こちらも、緊急輸送におけるさらなる「速さ」の実現に貢献する取り組みとして、今後注目を集めそうだ。また、業界では珍しく、繁忙期でも運賃を一切変えないところも、使いやすさにつながっているという。

求荷求車サービスの「概念」そのものを変えようとしているルーフィ。デジタルとアナログの強みをしっかりと認識し、これらを併存させることで差別化を明確に打ち出す経営戦略は、物流現場の業務効率化に向けた物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化のあり方をめぐる議論に、一つの課題を提供していると言えるだろう。

■ハコブリッジ/ハコジェットの紹介動画

「ハコブリッジ」製品ページへのリンク
■荷主向けページ
https://www.hako-bridge.jp/

■運送会社向けページ
https://www.hako-bridge.jp/carriers/

■求荷求車・マッチング特集