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「信頼性」こそが顧客の求めるサービス判断の基準だ

求荷求車の認知度・関心度・利用ランキングが決定

2021年11月4日 (木)

話題LOGISTICS TODAY編集部が10月12日から25日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「求荷求車・マッチングサービス」に関する実態ニーズ調査(有効回答数1014件、回答率35.4%)では、求荷求車・マッチングサービスの知名度と関心度、利用の有無について聞いた。知名度の高さがサービスの利用行動には必ずしも結びついていない実態が明らかになった。利用の是非についての判断は、知名度の高さだけでなくサービスの機能性や訴求のポイントも影響しているようだ。(編集部特別取材班)

前回は、求荷求車・マッチングサービスの利用実態や課題認識について分析した。回答者の半数以上で利用経験がありサービスの効果や利便性がある程度浸透している一方で、利用に消極的な回答者を中心に信頼性に対する不安も根強いことが分かった。不信感の対象は、取引相手との信頼性構築や輸送品質、与信基準など多岐にわたっており、さらなる普及には運賃設定など手続きの透明性や信頼性の高い業務の遂行が欠かせない。

とはいえ、急な荷物の輸送や輸送の繁閑に応じた柔軟な対応には、もはや欠かせないサービスであるのも事実だ。求荷求車・マッチングを安心して利用できるサービスとして定着させていくためには、業界全体でビジネスとしての成熟度をより高めていく取り組みが求められる。

知名度の高さは「ハコベル」が圧倒

便利ながら課題も抱える求荷求車・マッチングサービス。2000年代のITバブル期に一気に参入業者が増えたものの、その後の競争激化で淘汰が進み、現在では数十社が継続的にサービスを展開しているとされる。ここでは、そのなかから主要な21種類のサービスを選び、知名度と関心度、利用の有無をたずねた。

まずは知名度。「知っている」との回答が最多だったのは、ラクスルの「ハコベル」で全体の53.3%に達した。ラクスルは、ハコベルを物流シェアリングプラットフォームと位置付けており、2015年に荷主とドライバーをつなぐマッチングサービスを開始。ドライバーの非稼働時間を活用することで、低価格で誰でも迅速で簡単に配送ができる仕組みを実現し、耳目を集めた。

2019年には一般貨物を対象としたマッチングサービスに加えて、業務の効率化を目的とした配車管理システムの提供も開始。現在は軽貨物を対象に「ハコベルカーゴ」、一般貨物を対象に「ハコベルコネクト」の2つのサービスを展開する。マッチングサービスをプラットフォームで展開する発想で、その強みを生かした水平展開が成功。今や最も知られる求荷求車・マッチングサービスとなった。

続いて高い知名度を示したのがトラボックスの「トラボックス」(36.5%)。月平均14万件以上が掲載されている国内最大級の老舗のサービスだ。特徴は検索時に条件を細かく設定できること。検索精度の高さには定評がある。日本貨物運送協同組合連合会と全日本トラック協会の「WebKIT2」(32.6%)は、中小トラック運送事業者が抱える輸送効率向上や経営資源の補完などの課題を解決する手段としての経営支援ツールとして誕生。スマートフォン専用アプリや地図上からの情報検索、メールやSNSとの連携機能や画像データの掲載など、活用の幅を拡げる機能を整えている。

トランコムの「みんなのコンパス」(31.5%)は、輸送モードの多彩さが特徴。急な輸送ニーズゆえにさまざまな荷姿に対応できる強みは、まさに求荷求車の本来の目的である「空車回送の削減」を意識したものであり、サポート体制も含めた安心感のあるサービスは根強い愛用者が少なくない。

逆に新興勢力として知名度を高めているのがCBcloud(CBクラウド)の「PickGo」(ピックゴー、27.6%)。配送マッチング率99%超、依頼からエントリーまで1分以内という高マッチング・ハイスピードが自慢の最新式マッチングサービスだ。SBSロジコムの「iGOQ」(イゴーク、23.1%)は、シンプルさにこだわったマッチングプラットフォームだ。訴求ポイントは操作の簡単さ。機能も充実したサービスで存在感を高めている。

MeeTruckと「iGOQ」への関心高く

求荷求車・マッチングは、ITシステムを活用した物流サービスの代表格だ。それゆえに、知名度の高さが利用の頻度を左右する傾向が強い。そこで、ここで抽出した知名度の高い6つのサービスについて、関心の高さと利用の有無について調べてみた。その結果、ある傾向が明確に示された。

知名度の高い各サービスにおける「関心がある」の回答は、「iGOQ」が14.6%で最も高く、次いで「ハコベル」(11.4%)▽「WebKIT2」(10.6%)▽「PickGo」(9.6%)▽「とらなび、みんなのコンパス」(8.0%)▽「トラボックス」(5.9%)――となった。トラボックスのように老舗サービスはともかく、宣伝効果を含めた知名度の高さは、やはり一定の訴求力を発揮しているようだ。

注目は、知名度と比べて関心度が高かったサービス。ソフトバンクと日本通運が共同出資するMeeTruckが2021年度に提供を予定するサービスが17.8%で全体のトップの回答率を示した。日本パレットレンタルの「共同輸送マッチングサービス」(12.1%)、Dralogi(ドラロジ)の「ドラロジ」(9.3%)も高い関心を集めた。MeeTruckに象徴されるように、業界を活性化させる新しいサービスへの待望論が強いのではないか。言い換えると、既存のサービスに対する不満や不信の裏返しでもあるのだろう。

利用行動への誘導のカギはやはり「信頼性」

知名度や関心度は、ある程度の相関があることが分かった。それでは、利用の有無とはどのような関連性を見出せるだろうか。

「利用したことがある」との回答率で上位にランクインしたサービスを見てみると、「トラボックス」(17.6%)▽「とらなび、みんなのコンパス」(16.8%)▽「WebKIT2」(14.7%)▽「ハコベル」(8.1%)▽「iGOQ」(7.5%)▽「PickGo」(7.4%)▽「日本ローカルネットワークシステム」(6.8%)――の順になった。

いわゆる「老舗」のサービスが上位を占める一方で、知名度や関心度の高いサービスが上位に食い込んできたことから、利用者は「信頼性」を軸に「知名度」「関心度」を重ね合わせて選択している傾向が見て取れる。新しく生まれてくるサービスも、知名度の高さで選んだ利用者の信頼性が高まれば、さらなる訴求力を得て浸透していくだろう。逆に、輸送品質の低さや不透明な料金設定などで不信感が広がれば、一定の知名度があっても利用行動には結びつかないはずだ。

知名度と関心度、利用の有無の3つのパラメータの連関度合いで浮き彫りになったのは、求荷求車サービスが成長するか消滅するかの違いは、そのビジネスの性格から、信頼性の高さに基づくところが大きいのだろう。本来、求荷求車サービスは荷主と運送会社の利害が一致して初めて成立するものだ。ITシステムの力によって、対面しなくても荷物をすぐに引き取り指定の場所まで運んでくれる、非常に優れたビジネスモデルが構築されているはずだ。ましてや、突発の輸送案件の場合はなおさらだ。

物流業界が数十年も前に生み出した、この求荷求車・マッチングサービス。近年はランニングコストの無料サービスを訴求ポイントにした新規参入も目立つ。後発ゆえに価格の低廉さで勝負を挑まざるを得ない事情もあるだろう。しかし、持続的に成長するには、やはり輸送品質とそれに見合った料金設定に基づくビジネスでなければならない。こうした業界の輸送規律をしっかりとプレーヤーが共有し、相互に緊張関係を失わずに取り組むことで、求荷求車・マッチングサービスは初めて「信頼」のある輸送モードとして定着していくのではないだろうか。

■求荷求車・マッチング特集