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モノフル×トランコムの協業が生み出す物流DX

成約率98.4%、「スピード求車」の舞台裏を探る

2021年10月28日 (木)

話題日本GLPのグループ企業でデジタルサービスを手がけるモノフルと、求荷求車マッチングサービスを展開する単独企業としては国内最大規模のトランコムが組んで提供するデジタル×求荷求車の取り組み「スピード求車」が、成約率98.4%(2021年5月末時点)という驚くべき数字をたたき出している。

これは単独でも求荷求車サービスを提供しているトランコムの73.5%(2021年4月1日~10月20日実績)を大幅に上回る。全日本トラック協会と日本貨物運送協同組合連合会がとりまとめた求荷求車サービス「WebKIT」の成約率は、20.8%(9月実績)である。モノフルとトランコムの2社による「スピード求車」が、いかに突き抜けた存在であるかは明らかだ。両社のキーマンに話を聞いた。(LOGISTICS TODAY編集長 赤澤裕介)

発注から15分以内、デジタル×ヒューマンタッチで素早い車両確保

一人目は、モノフルの設立を支えたメンバーで、セールス&マーケティングのゼネラルマネージャーを務める武田優人氏。スピード求車とは、いかなるサービスか。

「スピード求車はモノフルが配車プラスというサービスの一機能として荷主企業に提供するものだ。この機能を介してトランコムに求車情報が流れるのだが、車両を探す同社の担当者は発注者である荷主企業に、15分以内に輸送業務の受託可否を一次回答として届けるルールで運用してくれている」(武田氏)

「スピード求車」の詳細→https://monoful.co.jp/dplus/speed

さっそく、ほかの求荷求車サービスにはみられない特徴が見えた。

スピード求車では、利用者の配車業務を使い勝手に優れた画面を提供して利用者の配車業務を支援しつつ、その裏側では物流業界随一の車両手配機能を持つトランコムが求車情報を受け取り、担当者が案件に適した車両を探す。

運送会社間で車両を確保するためのやりとりでは、一般的に「こういうクルマを探している」という情報が相手の運送会社に伝わると、受け手の運送会社は「探してみます」となる。そこからいくつかの運送会社に運べるかどうかを尋ねる作業を繰り返すことになるわけだが、この作業にかかる時間は意外に長く、とても15分以内に回答がくるものではない。

▲モノフルの武田優人氏

これに対し「スピード求車では、トランコム側の担当者が15分以内に一次回答を連絡する。しかも集荷前日までの発注であれば、100%に近い確率で車両が確保できる」というのだ。デジタルとアナログの強みの組み合わせ、モノフルがトランコムとタッグを組んだ理由のひとつは、まさにここにあった。

とはいえ、これらは利用者がストレスを感じることなく使いこなせるように配慮されたモノフルのデジタルサービスと、仕組みの裏側で支えるトランコムの「配車力」があってこそ。同社の担当者は車両探しのプロであり、日頃付き合いのある協力運送会社の状況が頭に入っている。大抵の案件なら、受託の可否は即答できるのだという。こういう人材を全国に600人も抱えているのだ。

▲配車プラスの案件管理画面(クリックで拡大)

「物流のデジタル化に寄与したい」使命感がつないだ協業

▲トランコムの上野剛史氏

すでに業界を代表する求荷求車サービスの担い手となった同社にとって、モノフルと協業する狙いはどこにあるのか。トランコムで物流情報サービスグループを担当する、上野剛史執行役員が説明する。

「当社としても、求荷求車のデジタル化に取り組むことで物流の進化に寄与したいという思いがある。ならば、デジタルサービスに長けたモノフルと組むことで、発注者側は利便性に優れたデジタルサービスを使い、実際に車両を確保する工程は当社の機能を活用してもらうという組み合わせが、最も顧客の需要に適しているのではないかと考えた」

それだけではない。トランコムに車両を求めて利用する企業の多くは運送事業者であり、メーカーや小売業、卸売業など荷主の利用が多いスピード求車から入ってくる案件が、トランコムの求荷求車サービスで取り扱う案件と重複するケースはほとんどない。物流のデジタル化に寄与したいという使命感に加え、荷主開拓の側面もあるということだ。

この協業にかけるトランコムの思いは、モノフルにも通じている。

「国内最大級の倉庫面積を持つ日本GLPのグループ企業でありデジタルに強いモノフルは何ができるか、自ら輸送力と求荷求車の知見・実績を持つトランコムが何を課題視し、今後どのように事業を展開していきたいのか。相互に強みを持つ、こうした企業同士の掛け算はなかなかないという考えで一致し、話が具体化していった」(武田氏)

その結果として、スピード求車ではモノフルが使い勝手に優れたデジタルの入り口をつくり、実際の配車はトランコムに荷主からの求車依頼情報が入るという、現在の役割分担につながった。

続いて上野氏に、スピード求車の成約率がトランコムの求荷求車サービスに比べて高くなる理由も尋ねてみた。

「運送事業者からの求車案件には、すでに当日の配車が組み上がった段階で入ってくるものが存在するため、物理的に車両を確保できない事例が出てくる。ところがスピード求車を利用する企業はメーカーなどの荷主が中心となっており、比較的早めの発注が多いために対応しやすい。それにより、モノフルとの協業であるスピード求車の成約率は高くなっている」(上野氏)

▲取材は日本GLPの最先端物流施設「GLP ALFALINK(アルファリンク)相模原」内で行われた

スピード・成約率・コスト優位、死角はないのか

いうまでもないが、トランコムの73.5%という成約率は、かなり優秀である。しかし、それがスピード求車というサービスを利用して、より簡単かつ効率的に車両手配を完結させ、さらに成約率も上がる可能性があるのなら、スピード求車の利用を増やす動きが出てきても不思議ではない。

この疑問に、武田氏は「まさにそれを狙っている。一般的には、通常の運送パートナーに輸送を依頼し、そこで吸収しきれない案件の輸送手段として、求荷求車サービスが利用される。しかし、スピード求車を通じて提供する輸送サービスでは、コスト面でも通常の配送パートナーと比べて競争力が認められるケースも出てきた」と強調する。

つまり「通常の配送パートナーに依頼するほうが輸送コストが高くなる」ことに気づく荷主が増えつつあるということだ。

スピード求車のシステム利用料はどうなっているのか。月額料金などの「契約しているだけでかかる費用」はなく、成約時に運賃の1割が手数料となる。「困ったときに利用するだけでも、使い勝手の良さを体験してもらえるのではないか」(武田氏)。

利用者(荷主)は使い勝手に優れ、配車計画の作成などほかの物流システム機能とも連携するモノフルのデジタルサービスを使うことで、トランコムの求荷求車サービスを利用できるうえに、割安な輸送手段を15分以内に確保する。

スピード求車に死角はなさそうだが——。

「中小製造業のなかには、そもそも求荷求車サービスの存在を知らない企業も少なからずあり、営業マンが車両を手配するところもあると聞いている。物流部門を持たないような中小規模の荷主が本業に専念する時間を捻出するという意味でも、スピード求車のような求荷求車サービスの潜在需要は高いとみている。そういう意味で、認知度を高めていくことがカギになるだろう」(武田氏)

課題は認知度を高めていくこと、そういい切る武田氏の表情に曇りはない。

これから年末の繁忙期に向かう物流業界。車両の確保が難しくなる季節だが、スピード求車に登録することで、いつでも利用できる状態をしておくのに費用はかからない。車両の確保が万全だという荷主企業以外は、早めに登録手続きを済ませておくのがよさそうだ。

スピード求車とは(8つの特徴)
(1)情報入力後、15分以内に条件に合った車両を案内
(2)全国1万3000社の運送会社から車両を引き当て
(3)豊富な車両サイズ(軽、2トン、4トン、10トン、増トンなど)
(4)多彩な車両形状(平、ウイング、バン、低床、ユニック、トレーラー、冷蔵、冷凍など)
(5)選べる輸配送モード(チャーター、中ロット、ラストワンマイル)
(6)幅広い輸送実績(日用雑貨、アパレル、食品、化学品、医薬品、飲料、自動車部品、建材、精密機器、印刷物、家具、家電)
(7)運送保険は上限1.5億円
(8)業務の脱属人化(システム上で履歴・請求情報の確認可能)
「スピード求車」詳細ページへのリンク

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