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ヤマトHD、超小型衛星推進機開発ベンチャーに出資

2021年10月28日 (木)

話題ヤマトホールディングス(HD)は28日、KURONEKO Innovation Fund(クロネコ・イノベーション・ファンド)を通じて、水を燃料に用いた超小型衛星用の推進機を開発するPale Blue(ペイル・ブルー、千葉県柏市)に出資したと発表した。

(Pale Blueのウェブサイト)

KURONEKO Innovation Fundは、ヤマトHDと独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインが共同で運営するファンド。Pale Blueは、水を燃料に用いた超小型衛星用の推進機の技術を軸とした小型衛星事業を展開する東京大学発のスタートアップだ。

Pale Blueは、東京大学で開発したイオンエンジンの技術をベースに、水を燃料に用いた超小型衛星用の推進機を開発。究極のクリーン燃料である水を使うことで、宇宙環境や作業者の安全も考慮した仕様とする。既にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の革新的衛星技術実証3号機への実証機器搭載など、複数の宇宙実証プロジェクトが進んでおり、今後さらに研究開発を進めていく。

今回、KURONEKO Innovation FundのポートフォリオにPale Blueを組み入れることにより、ロケットや人工衛星のキーコンポーネントである推進機の進化から今後の宇宙産業に対する知見を深め、新たなビジネスの可能性を探索していく。

ヤマトが宇宙産業に「参入」する狙いは

ヤマトHDが、宇宙産業への「参入」に動き出した。陸上での宅配サービスを宇宙に展開する、と言えば気が早すぎるかもしれないが、ビジネスのポートフォリオを広げる一つの対象として、宇宙産業を視野に入れていることは間違いない。将来訪れるであろう宇宙時代を見据えた「進取の精神」を具体化する取り組みが始まる。

ヤマトHDは、KURONEKO Innovation Fundを活用して、主力の宅配事業とは毛色の異なるビジネスプレーヤーへの出資を推進している。幅広い領域で知見を蓄積することで、新規の事業展開に踏み出す原資とするためだ。今回のPale Blueへの資本参加も、こうした文脈で語られるべき取り組みだろう。

宅配事業を主軸にビジネスを展開してきたヤマトHDだが、物流サービスを提供する対象はどんどん拡大している。もはや「クロネコヤマトの宅急便」だけの企業グループではなくなっているのは、周知の通りだ。今回の出資は、「次の運び方をつくる」だけでなく「次の運べるものをさがす」取り組みを強化していく意思表示と受け止めるのが妥当だろう。ともあれ、宇宙を将来の事業領域として認識できるヤマトHDの発想力に期待したい。(編集部・清水直樹)