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平均時給は物流など過去最高に、リクルートまとめ

2021年11月16日 (火)

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調査・データリクルート(東京都千代田区)は15日、調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」がまとめた、ことし10月度「アルバイト・パート募集時平均時給調査」の結果を発表した。

3大都市圏の10月度平均時給は、前年同月比15円増の1103円。2か月連続で2006年1月度の調査開始以来の過去最高額を更新した。職種別でみると、製造・物流・清掃系や販売・サービス系、フード系で過去最高を更新した。前月比では1円増加した。

10月の最低賃金改定により、最低賃金に近い時給帯の職種において新規求人の時給が引き上げられたことに加え、9月末の全国的な緊急事態宣言の解除により行動制限が緩和されたことに伴い、人材需要が増えたことも時給上昇の一因と考えられる。

3大都市圏別の平均時給は、首都圏が1150円。前年同月比で14円増加し、前月と同額だった。東海は1022円で前年同月比19円、前月比5円それぞれ増加。「製造・物流・清掃系」(前年同月比29円増)の上昇が目立った。関西は1080円で前年同月より14円増加したが、前月より1円減少した。

時給上昇は経営者に現場効率化策の「決断」を迫っている

物流業界におけるアルバイト・パートの時給が上昇している。消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配ニーズの高まりで、物量が増えた現場は人手不足が露呈している。従業員をとにかく集めなければならない現場も多いが、一方で人件費の高止まりを危惧する企業も少なくない。人件費の「適正化」は今後の物流業界における経営リスクになる可能性は十分にある。

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こうした人件費の上昇傾向、実は物流現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を促す動機の一つになっている。従業員を雇用するよりも、先進的なロボットやシステムを導入する方が、長期的にみれば「割安」になると考えられるからだ。物流現場では、アルバイトやパートといった直接雇用の従業員を求める傾向がある。その人件費が上昇し続けるとなれば、経営者は落ち着いていられないだろう。

物流企業の経営者は、そこで決断をしなければならない。あくまで作業員を増やして業務を回すのか、ロボットやシステムでの代替に舵を切るのか。現場の業務の特性にもよるだろうが、いわゆる物流DX化で作業員を増やさず業務を効率化する方策は、今後の人件費上昇や少子高齢化を見据えれば、現実的な路線と言えるかもしれない。一方で、物流開発業者が注力する「地域に開かれた物流施設」の発想は、従業員の採用にもプラスに働くだろう。時給上昇は、経営サイドに現場運営策の選択を迫っている。残された時間は長くない。(編集部・清水直樹)