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請負・短期需要への対応力高める、SBSスタッフG

2021年11月24日 (水)

話題「今は派遣だけど、そろそろ正社員として安定して働きたい」「アルバイトではなく、派遣でいろんな職場を体験したい」――。入荷から検品、仕分けを経て出荷まで、多くの人材が担当に分かれて汗を流す物流現場。おそろいのスタッフのように見えるが、派遣や請負、アルバイト、正社員と、それぞれの事情に応じた多様な働き方の従業員が集まり、協力し合いながらテキパキと荷物を配達先に送り出していく。こうして業務に携わる従業員はそれぞれ、今の生活スタイルや将来の希望によりふさわしい働き方を模索しているのではないだろうか。

それでは、自分に合った働き方とは何か。自問自答してみても、意外に答えを見つけるのは難しいものだ。そもそも、勤務先のニーズと適合しなければ何も始まらないばかりか、求職者も企業も互いにベストマッチングを実現する機会などそうそう転がっているものではない。

とりわけ、消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大に伴う宅配需要の高まりなどで業務量が急増し、人手不足が露呈している物流現場では、業務の特性に応じて専門性の有無や雇用期間などを使い分けて人材サービスを活用する動きが広がっている。そのなかで、総合物流企業グループが取り組む物流向け人材サービスの提供に取り組むのが、SBSグループだ。(LOGISTICS TODAY編集部)

「物流プロ.com」の強みは求人案件の「層の厚さ」

人材サービス「物流プロ.com(ドットコム)」「まいPayす。」を導入し、全国を対象に、倉庫管理から作業現場、輸配送・運行管理まで幅広い物流業務をカバー。正社員から短期アルバイト(日々紹介)まで幅広い条件で物流の仕事を探せる利便性と、総合物流企業ならではの求人案件の層の厚さが特徴だ。

物流プロ.comのウェブサイト

国内で8兆円を超える市場規模を誇るとされる人材サービス。しかし物流業界特化型のサービスとなると、意外にも手がける企業は少ない。裏を返せば、業種特性の広がりが大きい物流業界に焦点を絞る人材ビジネスはまだ発展途上にあるということなのかもしれない。こうした環境で、物流を知り尽くしたSBSグループの人材サービスは、「餅は餅屋」の論理で的確かつ融通の効いた企業と求職者の橋渡し役が可能というわけだ。

SBSグループ2社が「派遣・請負」「直接雇用」で分業

「SBSグループには、人材サービスを手がける会社が2社あります」と話すのは、SBSスタッフ(東京都墨田区)の渡辺長則社長だ。SBSグループには、SBSスタッフとジョブライト(同)の2社が人材サービス会社として存在している。SBSスタッフが人材派遣と請負を、ジョブライトが正社員やアルバイトといった直接雇用希望者への職業紹介を担当している。いわば、法的な枠組みも考慮して業務の切り分けを明確化しているというわけだ。

(SBSスタッフの渡辺長則社長)

ここで、物流をはじめとするさまざまな産業で活用されてきた「人材派遣」の置かれている現状について整理しておこう。人材派遣会社が登録者を取引先の事業所に派遣し、派遣先担当者の指揮命令のもとで派遣労働(労働力または役務)を提供する雇用形態を指す。いわゆる「同一労働同一賃金」の施行による正社員と非正規社員における待遇差の解消により、派遣という働き方が改めて注目されている。ライフスタイルの合わせた仕事の実現や多様な職場を経験でき、一般的にアルバイトやパートより時給が高いのも特徴だ。

しかし、企業側が雇用の調整弁として活用する風潮の高まりなどで雇用の二極化や産業の空洞化を招いたとの指摘もある。政府は派遣に関する法制を強めるなどして、こうした弊害の回避を図っている。さらに、同一労働同一賃金の施行などによる派遣の賃金上昇への対応も課題となっている。

派遣から請負へ事業領域を広げるSBSスタッフ

SBSスタッフは、こうした事態にどう対応しているのか。「派遣だけでなく請負にも注力していく戦略を掲げ、より幅広い人材サービスの提供を推進しています」(渡辺社長)。請負は、発注主である企業が請負会社と契約を結び、請負会社が特定の成果物を発注主に納品する形式を指す。派遣と異なり指揮命令権は請負会社にあるほか、労働契約ではないため労働法の適用外だ。

SBSスタッフは、現在9割を占める派遣事業への依存度を8割に下げ、請負を2割に高める方針だ。物流業界における非正規雇用の実情に対応し、特に制約が多く収益率が低下傾向にある派遣の比率を下げることで、より精度の高い人材サービスの提供につなげていく。実績ができればその分、さらに大規模な業務を請け負うことができることから、「5人程度を派遣する仕事を徐々に大きくしていくことで、まとまった規模の請負案件の獲得につなげていきます。こうしたビジネスモデルで、請負の事業規模を拡大していきたいと考えています」(渡辺社長)。

「短期アルバイト」で派遣の受け皿狙うジョブライト

一方で、派遣から短期アルバイト(日々紹介)へのシフトを促す役割を果たそうとしているのが、直接雇用の人材サービスを扱うジョブライトだ。派遣も短期アルバイトも、数多くの仕事を体験して人生の糧にするライフスタイルの実現を支援する雇用形態であることには変わりはないが、法律の観点では大きく異なる。ジョブライトは直接雇用の職業紹介を担うが、「派遣」と「紹介」を混同している企業や求職者が少なくなく、労働問題に発展するケースもあるという。「こうした問題を防ぎ適正な紹介業務を展開するためにも、派遣業を担うSBSスタッフと別法人で紹介業を展開しているのです」。ジョブライトの小川和男社長は、SBSスタッフとあえてすみ分けを図っている理由をこう語る。

(ジョブライトの小川和男社長)

ジョブライトの戦略はこうだ。賃金の値上がりや規制強化で派遣を活用しにくくなったと悩む物流企業に対して、アルバイトを紹介し日払いや速払いを代行するサービスを提供する。企業からすれば、派遣を減らして短期アルバイトに切り替えれば、法的な制約もなくなり業務に応じた適正な賃金で従業員を雇用できる。直接雇用となる点に懸念があるとしても、派遣は正社員の代替として活用できない法的拘束を考慮すれば、自由度が高いと言えるからだ。結果として、企業にとっても従業員を拡充したい部門に適正賃金で人材を置けるメリットがあり、物流ニーズへの対応にも直結するというわけだ。

次の戦略は大手通販への派遣と「日々紹介」強化

SBSスタッフとジョブライトは、「派遣・請負」と「直接雇用」という業務分担で、SBSグループの人材サービスを展開している。両社は互いに連携し合いながら、物流人材ニーズや業界環境、さらには雇用政策にも敏感にアンテナを張り巡らせながら、最適な求職者を企業に送り出すマッチングサービスを強化していく考えだ。

具体的には、SBSスタッフは派遣から請負へ事業領域を広げるにあたって、派遣ビジネスについても戦略を転換していくという。「これまでの派遣事業は10人程度の規模が中心だった。今後は100人から200人規模の大型案件に積極参入していく。その対象は大手通信販売業です」。渡辺社長はコロナ禍でさらに業容を拡大する大手通販にターゲットを絞ることで、より効率的で実効的な成果の出る派遣ビジネスに舵を切る。今後の成長を見据えて、大手通販は物流業界でも逃すことのできない派遣ビジネスの「顧客」なのだ。

ジョブライトは、派遣で取りこぼした需要を短期アルバイト(日々紹介)で吸収していくことで、自社雇用の拡大を訴求していく。「派遣を多用しすぎた結果、自社に業務ノウハウが蓄積されず、結果として物流サービスの提供力の低下に悩む企業が少なくありません。直接雇用で従業員が一定期間、同じ職場で働くことによって、こうした業務スキルが現場で共有され、業務品質も向上にもつなげてもらいたいと考えています」(小川社長)という。SBSグループの人材サービス2社が手がける取り組み。それを実現する装置が「物流プロ.com」「まいPayす。」というわけだ。

小川社長は、さらなる戦略を描いている。短期アルバイト(日々紹介)に対して企業が自社で日払いや速払いができるシステムを、2022年初頭に外部提供する予定だ。「ジョブライトは、人材サービスを手がけるとともに、物流企業に対して車両や倉庫などのサービスを紹介する取り組みも行っています。総合物流企業グループとして、人材サービスを展開するということは、こうした物流サービスそのものを提供するということと同義なんです」(小川社長)

人材サービスをテコに社会全体への貢献図るSBSグループ

SBSグループの人材サービスは、グループ内企業への業務依存率がわずか10%未満にとどまる。残りはグループ外の物流企業に向けた取り組みだというから驚きだ。「物流業界さらには社会全体の発展に貢献するのがSBSグループの使命だ」。SBSホールディングスの鎌田正彦社長はSBSグループの存在意義をこのように位置付けている。SBSスタッフとジョブライトがタッグを組んだ人材サービスも、こうしたスローガンの実現に向けた取り組みの象徴と言えるだろう。

SBSスタッフのウェブサイト

ジョブライトのウェブサイト

■物流人材サービス特集