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波動対応と人件費削減を両立、物流大手の採用術

2021年11月17日 (水)

話題物流ビジネスに波動はつきものである。季節性商品を取り扱う事業所で、時に平時の10倍以上になる倉庫作業員を必要としてきた東京都墨田区の大手3PL事業者は、ある人材マッチングサービスを活用し、必要な人手を確保した上で、人材サービス会社に支払う手数料を7割削減することに成功したという。独自の「人材バンク」機能で他のサービスと一線を画す「matchbox」(マッチボックス)だ。

マッチボックスは、数時間から数日の作業に必要なアルバイト人材を即座に確保する、いわゆる「単発バイトマッチング」機能を持つ人材サービスだが、スポット求人とリピート採用を両立する「人材バンク」機能が労使双方に好評で、ことし4月に正式リリースされたばかりにもかかわらず、半年間で物流・流通業界を中心をする100社近くが利用を開始した。物流業界で急速に存在感を増している、その理由と活用ノウハウを3PL大手の採用担当者に聞いた。(坂田良平)

<記事の目次>
・人集めに苦しむ、物流企業の事情
・新しい働き方に対応する「単発バイトマッチングサービス」
・最大のメリットは「人材バンク」を用いたコスト削減
・新卒採用、中途採用に並ぶ、第三の採用手段
・短期雇用のボトルネックを自動処理で解決
・​​物流向けカスタマイズを今後も継続
・ドライバーだけではない物流業界の人手不足

人集めに苦しむ、物流企業の事情

先述の大手3PL事業者では、主力の人材サービスの1つとして4月にマッチボックスの試験導入を始め、現在は16事業所40拠点で同サービスを利用する。なぜ急激な利用拡大に踏み切ったのか。

▲大手3PL企業の採用担当者

「波動に応じてスピーディーかつ手軽に労働力を確保できることと、人件費削減効果が主な理由です」──同社の採用担当者は、こう断言する。

物流ビジネスでは、季節による稼働状況の波動変化が大きい。中元、歳暮、ハロウィン、クリスマス、バレンタインといった、季節性イベントの繁忙期に応じた流通加工、包装、発送などを担う物流企業では、時に10倍以上の波動が生じることがあり、人材派遣会社やアルバイト募集で、人を集めているケースも多い。

だが、波動の大きな現場では人手確保に特有の課題が生じる。効率とコストである。例えば中元の場合、注文が集中するのは、(地域によって差があるものの)6月から7月の週末だ。出荷業務は、週はじめは忙しいが、週後半は落ち着くこともある。

先の採用担当者は、「ある事業所では、オーダーがまとまるのが前日です。人の確保はそれから」と話す。波動を考慮し、人件費のコストを抑えるためには、このように「明日働くことができる人」を探さざるを得ない。そこで日々紹介である。

日々紹介は、人材派遣会社に依頼し、就労可能な人を紹介してもらう仕組みで、「一日だけ」といった単発の依頼にも対応可能だが、課題もある。

まず、人材派遣会社を介するため手間と時間が掛かること。「明日働くことができる人」を確保するためには、一分一秒でも時間が惜しい。さらに、人材派遣会社に支払う紹介料がコストアップにつながるという面もある。コストアップを避けたいのであれば、アルバイト・パートを使えば良いのだが、今度は日々変動する波動には対応しにくいし、募集・面接・採用といった一連のプロセスに対する手間も発生する。

そこで注目されるのが、単発バイトマッチングサービスである。

新しい働き方に対応する「単発バイトマッチングサービス」

単発バイトマッチングサービスは、数時間単位から働くことができるアルバイト情報を提供するサービスで、バイト希望者は自身の都合に合わせてウェブや専用アプリで求人を確認、応募ができる。募集を行いたい企業側は、採用に関する基本的な業務をウェブ上で行うことができるため、素早く効率的に募集できるのが強みだろう。

単発バイトマッチングサービスは、時間単位で労働を提供する、いわゆる「ギグワーカー」を中心に知名度が上がっている。フリーターのみならず、主婦や職場のOBOG、学業の合間を縫って仕事を探す学生、副業を求めるサラリーマンなど、ギグワーカーとしての働き方を求める人が増加しており、単発バイトマッチングサービスは、ギグワーカーにとって欠かせないものとなりつつある。

背景には、「収入よりも自分に合った職場環境や業務内容を選択したい」という人の増加も影響しているといわれ、「誰から見ても優秀な人材だが、会社に所属することを避け、自身のライフスタイルに合った働き方を貫く方が一定数存在する」(物流会社の採用担当者)という。

最大のメリットは「人材バンク」を用いたコスト削減

では、こうした機能を持つ人材サービスの中で、物流・流通業界に支持されるマッチボックスは他のサービスと何が違うのか。

▲マッチボックステクノロジーズの坂入章夫副本部長

マッチボックステクノロジーズ(新潟市中央区)セールス統括本部の坂入章夫副本部長は、「最大のメリットは、採用・労務管理・教育にかけるコスト削減効果です。派遣や委託に比べ、人材サービス会社に支払う手数料を7割削減できます」と断言する。

どういうことか。物流会社から支持される要因の一つ、「人材バンク」機能を紹介しながら説明する。

人材バンク機能は、一度マッチボックスを介して働いてくれた人の中で「この人には、またぜひ当社で働いて欲しい」と思う人を登録してグループ化し、再度必要なときに同グループだけに求人情報を流すことができるものだ。勤務経験のある人に再び働いてもらえれば、人選にかかるコストと教育コストを削減できる。

マッチボックスを介した求人には、公開求人と、人材バンク登録者だけを対象とした非公開求人の二つが存在する。「経験・未経験を問わず募集したい」といった場合には、すべてのギグワーカーに配信される公開求人を使用し、「今回の募集は当社経験者のみに限定したい」といった場合には人材バンクの非公開求人を利用することで、案件の内容や難易度などに合わせた募集方法の使い分けができるのだ。

「マッチボックスは、非公開求人の利用料金が格安に設定されているのも良いですね」──こう語るのは、先の大手3PLの担当者である。

マッチボックスでは、非公開求人を用いた場合の手数料を一回あたり400円に設定している。例えば、同サービスを介して一日10人程度を月に20日間確保した場合の手数料は、月額基本料金やアカウント料を含めても18万2000円。これを手数料30%の一般的な派遣会社で実現しようとした場合、その手数料は60万円となる。冒頭の「手数料の7割削減」はこうして実現する。

(出所:マッチボックステクノロジーズ)

新卒採用、中途採用に並ぶ、第三の採用手段

ただし、人材バンク機能を使えば、必ず経験者を確保できるというわけではない。企業側がギグワーカーを選ぶように、ギグワーカーも企業を選ぶ立場にあることを忘れてはならない。人材バンクへの登録は、双方の合意によって成されるのだ。

「ギグワーカーの皆さんを、『派遣さん』と呼ぶのはNGです」──そう語るのは、先の大手3PLの担当者である。最近では、求人者のための口コミサイトも増え、ギグワーカーに対し態度の悪い担当者の存在は、すぐにウェブ上で共有されてしまう。そうなると、以降の単発バイトの募集に悪影響が及ぶ。

「派遣さん」ではなく、ちゃんと名前で呼び、働いてくれた相手への感謝を忘れないこと。こういった基本的なことを徹底し、単発バイトの人でも働きやすい職場環境を整えれば、中には社員になることを希望する人も出てくるという。

人材派遣会社による日々紹介や単発バイトの募集に関しては、人材の質に不安を感じ、利用を躊躇している物流企業も多いと聞く。そういった企業こそ、マッチボックスの人材バンクを、活用してみてはどうか。私見だが、日々紹介で働いた人の中で優秀な人材がいれば、マッチボックスを紹介し、人材バンクに登録するのもありだと思う。優秀な人材の確保は、運送現場だけでなく、倉庫現場においても喫緊の課題なのだから。

短期雇用のボトルネックを自動処理で解決

ここまで主に求人について言及してきたが、単発バイトの労務管理についても紹介しておこう。

マッチボックスを提供するマッチボックステクノロジーズは、ローソンのフランチャイズ事業から発展した会社で、ローソン店舗向けに開発したスタッフ派遣システムをベースとして「マッチボックス」の提供を開始した。

こうした経緯から、単発バイトを募集するという求人機能だけでなく、シフト管理から出勤確認、給与計算、源泉徴収票の生成まで、アルバイトを雇用する上で必要となる諸業務を担う業務システムとしての機能を備える。つまり、アルバイトを多用する現場のニーズに応える機能が詰め込まれているのだ。

アルバイトの雇用に対する業務上、経理上の処理は、労働時間や雇用期間によらず、ほぼ同じ負荷が発生する。したがって、短期雇用を増やすと、事業者側の経理担当者や人事担当者の業務量が増大し、短期雇用を利用するボトルネックとなることがある。

しかし、マッチボックスは勤務確定後の雇用手続きや給与計算・支払いを自動化する機能を搭載することで、事業者側の労務管理負担を軽減。給与の即払いにも対応し、その手数料を無料としたことで、働き手からも支持されるサービスへと進化を遂げた。単発バイトによる倉庫作業員を増やしても、日々紹介などを使っていた頃より業務を効率化できるケースもあるという。

▲企業の採用担当者、就業者、マッチボックスの工程表

物流向けカスタマイズを今後も継続

加えて、物流業界を注力領域に位置づける同社は、「手数料の7割削減」を実現した3PL事業者にマッチボックスを試験導入するにあたり、物流現場に何度も足を運び、現場の声を徹底的に吸収した。もともと設計していたサービス画面や機能を物流業務向けにカスタマイズした結果、現在はほぼ原型を留めていないほどだ。

例えば、坂入氏は「ある物流現場で、派遣や日々紹介、アルバイトのシフトがホワイトボード上で更新されていくのを目の当たりにし、『これが消えてしまったらどうするのだろう』と驚いた」といい、そこから物流現場向けのデジタルシフト表を作成。現役の従業員、OB・OG、単発バイトの経験者、未経験者などをわかりやすく色分けし、雇用条件や残業時間、応募状況などを参照できる機能を実装した。

▲現役従業員、OBOG、アルバイトなどのシフトを一括管理し、必要に応じて人材バンクに非公開求人情報を流すことができる

同氏は、単純に「デジタル化の遅れ」と認識するのではなく、複数の雇用形態を同時併用しなければまわらない現場の窮状を丁寧にヒアリングすることで、「今後も物流業界から求められる機能を実装していく」と意気込みを語る。

ドライバーだけではない物流業界の人手不足

短期のバイトマッチングサービスは、波動変化に対応する人手不足の穴埋めというだけではなく、新卒採用、中途採用に続く、採用手段として事実上活用されはじめている。マッチボックスであれば、人材バンク機能を活用することで、自社の仕事を経験した人に対し、優先的に仕事を斡旋することもできるため、相互理解も深まり、社員になりたいと思う人も増えやすいだろう。

人手不足に悩みつつも、バイトマッチングサービスに不安を感じ、利用をためらっている物流企業も少なくないと思う。もしくは以前の日雇い派遣や、人材派遣会社の日々紹介を利用した経験から、ためらいを感じるケースもあるかもしれない。

そういう企業にこそ、マッチボックスを利用してみてほしい。手軽な利用料と、質の高い人材確保という、一見すると相反するような目的を実現できるサービスを利用しない手はないだろう。

マッチボックスに関する問い合わせ
Web:https://mxbx.jp/logi_inquiry
TEL:025-384-0706 (平日9時〜18時)
企業HP:https://matchbox.jp/business/

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