ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

人材確保、ハードルの高さ浮き彫りに

物流人材サービス関心度トップ10、ニーズ調査結果

2021年11月24日 (水)

話題LOGISTICS TODAY編集部が11月2日から12日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「物流向け人材サービス」に関する実態ニーズ調査(有効回答数1001件、回答率31.4%)では、主要な人材サービス提供企業51社を抽出。回答に基づく関心度をランキングでまとめた。物流会社が手がけるサービスへの関心が集まる一方で、人材派遣・紹介を本業とする企業への信頼感も高い傾向を示した。

前回は、人材サービスの活用実態にかかる回答を分析したほか、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間上限が960時間に制限される「物流の2024年問題」への対応について調べた。人材サービスの活用については概ね前向きな印象が強かったものの、2024年問題を見据えてドライバー不足など多様な悩みを抱えており、その解決方法の一つとしてこうしたサービスを捉えている実態が浮き彫りになった。とはいえ、時間外労働時間の上限が制限されることが大きな不安材料になっているものの、有効な手立てを見出せずにいる現場の切実な声が伝わってくる結果となった。(編集部特別取材班)

現場業務でも異なる「サービスへのニーズ」

ここでは、まず物流向け人材サービスとして自社に適している種類を選んでもらった。トラック運転▽フォークリフト運転▽倉庫内軽作業▽事務――の4業務でそれぞれ、適した人材サービスについて聞いた。

まずトラック運転業務は「人材紹介」が42.2%でトップ。「業務委託」(34.5%)、「リファラル(縁故)採用サービス」(27.1%)、「システムマッチング(採用マッチングアプリ)」(26.7%)が続いた。トラックドライバーは免許があれば乗務できるとはいえ、ハンドルを握るだけが仕事ではない。適性の有無も採用の判断基準となることから、人材紹介が定番なのだろう。

続いてフォークリフト運転業務。こちらは「人材派遣(レギュラー)」が53.0%で過半数を占めた。「業務委託」(39.2%)や「人材紹介」(35.2%)を挙げる回答も目立ったものの、レギュラー派遣への最適感が強いようだ。ドライバーほどではないとしても、やはり車両を動かす仕事でもあり相応の適性判断は必要なのだろう。レギュラー人材を強く求める理由もそこにありそうだ。

特徴的な結果だったのが、倉庫内軽作業。圧倒的な多数回答が「人材派遣(スポット)」で実に70.8%を占めた。消費スタイルの多様化に新型コロナウイルス感染拡大が重なり、物流現場は未曾有の物量増で人手不足が露呈している。これから年末の繁忙期に向けて現場は戦々恐々の状態だろう。仕分けやピッキングなどの作業は、とにかく人手が欲しくてたまらない。スポット需要の高さは、そんな実情を反映していると言えよう。ちなみに「人材派遣(レギュラー)」(55.0%)、「短期アルバイト(日々紹介)」(54.8%)が上位で、長期従業員がもちろんありがたいけれども、短期でも人を集めたい思惑が透けて見える。

最後に事務作業では、「人材派遣(レギュラー)」(49.6%)がトップ。「人材紹介」(38.1%)、「業務委託」(23.8%)が続いた。こちらは現場作業員と比べれば人手不足のひっ迫度合いはまだ落ち着いている印象もあるが、やはりレギュラーの派遣人材を強く求めていることが分かる。専門的な業務の少なくない事務業務は、短期での入れ替わりを嫌がるのが実情だ。

人材サービスへの課題認識は「期待はずれ」「誇大宣伝」

業務の種類ごとにニーズが異なる人材サービス。では、人材サービスの提供会社を利用するうえでの課題についてどう認識しているのだろうか。最多回答は「人材サービス会社を利用しても必要な人数を確保することが難しい」で全体の53.7%と半数を超えた。相応の費用を払ってサービスを活用しても、現実にはなかなか必要な数だけ人を集めるのは難しいということか。雇用の多様化が叫ばれて久しい今、物流現場で一定数の人材を揃えるハードルの高さをうかがわせる結果となった。

次いで多かったのが「うたい文句と実際に提供されるサービスの差が大きい印象がある」(41.2%)と、「実際には人材サービスにかかわる規制をクリアできているかグレーな印象がある」(35.0%)。商魂たくましい人材サービス提供会社ならば、どうしても広告が誇大な宣伝になりがちなのだろうが、ここは業界規律を守ってほしいところだ。もちろん、人材を求める物流企業側にも、確かな「選球眼」が求められるのは言うまでもない。規制への対応も同様で、ルールに基づいた人材獲得が必要だ。

では、どんなサービスがあれば適した人材を得やすくなるのだろうか。「あったらいい」と思うサービスを聞いたところ、「正社員・派遣・日々紹介・アルバイトなど、異なる雇用形態の労働者のシフトや労働条件をまとめて管理・共有するサービス」が52.4%で最多。いろんな人材に就業してほしいもはもちろんだが、雇用する側の判断基準として形態ごとの条件区分が明確になっていれば、マッチングの精度は上がるだろう。

続いて、「業務量に応じて半日後・翌日の特定の時間帯の労働力を確保し、労務管理から給与計算・振込まで代行するサービス」(41.6%)、「過去に雇用したことがあり、もう一度働いてもらいたい人だけに求人情報を流すサービス」(36.2%)となった。これらの意見の共通点は、柔軟な雇用形態への対応をサービス提供会社に求めているところだ。物流現場は日々物量が異なるだけでなく、イレギュラーの業務が舞い込むことは日常茶飯事だ。季節感の変動も大きいだけに、予想が極端に外れることもある。こうした現場事情を色濃く反映した回答といえるだろう。裏を返せば、こうした波動性の高い需要にいかに対応できるかが、物流向け人材サービスで大成する秘けつになる。

社内でやり繰りがつかない人材を外部で探せるこうしたサービスは、うまく使えば有効なツールである一方で、さまざまな課題があるのも事実だ。それは、「物流向け人材」のイメージが定まっていない実情をも反映しているのではないだろうか。

サービス関心度ランキング、1位はSBSスタッフ「物流プロ」

最後に、物流向け人材サービスを展開する企業への関心度ランキングをまとめた。最多得票を獲得したのは、「SBSスタッフ」で全体の18.1%が回答した。次いで「フルキャスト」(14.0%)、「タイミー」(11.4%)、「ドラEVER」(9.4%)、「アズスタッフ」(9.1%)となった。

SBSグループの人材派遣サービス業を展開するSBSスタッフは、人材紹介サービスサイト「物流プロ.com(ドットコム)」を19年5月に開始。物流特化型の人材エージェントとして、業界の特性把握と高精度な求人者への訴求術、さらに求人者のプロ意識を発掘するコンサルティング力が強みだ。さすがは総合物流企業グループならではの信頼感の高さといったところか。

人材派遣の大手企業であるフルキャストは、アルバイト探しにも領域を広げて知名度を上げている。業界に合わせた人材の提案力も強みだ。「餅は餅屋」ではないが、人材サービスは人材業に頼りたいのが本音かもしれない。タイミーは、柔軟な働き方に対応できる強みがウリだ。空いた時間を有効活用できる「スキマバイト」を意識したマッチングサービスによる利便性の高さがポイントだ。

ドラEVERが展開する「ドラEVER」と、アズスタッフの「DRIVE WORK」(ドライブワーク)も、同様に業界に特化したサービス展開を強みとする。タクシーやバスを含めたドライバー人材の総合求人サイトであり、スポット案件も多数用意しているのが特徴だ。

上位にランクインしなかった企業を含めた全体の傾向は、車両運行管理など物流業務支援サービス展開の過程で人材に領域を広げたケースが少なくない。モノフルの「適材ナビ」はその象徴的な事例だろう。一方で、人材サービスを本業とする企業が物流に焦点を当てるケース。大きく2つのプロセスで成長してきた業界が、物流向け人材サービスと言えるだろう。

人材サービスは物流インフラの担い手を創出する重要な機能だ

物流が社会に不可欠なインフラであることは、東日本大震災から10年を迎えた今、改めて認識されている。この物流インフラを支えるのは、「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる現場従業員だ。トラックドライバーや倉庫作業員をはじめとする、ハンドルを握り荷物を運ぶ最前線の人材だ。

強い使命感を抱き、物流の世界に足を踏み入れようとする人材を、業界はしっかりと受け止められているだろうか。相互のミスマッチがそれを阻んでいることはないだろうか。人材サービスは両者の橋渡しをすることで将来の物流インフラの担い手を創出していく、重要な機能を果たしていることを忘れてはならない。

■物流人材サービス特集