ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

「物流向け人材サービス」に関するニーズ調査

「2024年問題」でドライバー不足拍車の懸念強まる

2021年11月17日 (水)

話題LOGISTICS TODAY編集部が11月2日から12日にかけて、物流企業や荷主企業を中心とする読者に対して実施した「物流向け人材サービス」に関する実態ニーズ調査(有効回答数1001件、回答率31.4%)で、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間上限が960時間に制限される「物流の2024年問題」で全体の8割近くがドライバー不足に拍車がかかると危惧していることが分かった。高頻度で長時間の荷待ちが必要な顧客との取引を見直す対応を講じるべきとの回答が7割を超え、勤務時間の短縮を喫緊の課題と位置付けている現状が浮かんだ。

今回の調査における回答者の内訳(重複あり)は、トラック運送業49.7%▽倉庫業42.9%▽3PL(物流一括受託)32.3%▽総合的な物流業31.0%▽軽貨物自動車運送事業13.1%▽国際貿易(フォワーディング)11.8%▽その他物流業10.2%――など。ここでは、2024年問題への課題認識や対応のほか、物流向け人材サービスの活用実態について聞いた。(編集部特別取材班)

利用実績が高く将来の活用にも前向き、「人手不足」の悩み反映か

人材派遣や業務委託、人材紹介など、業界や目的に応じて多様な人材サービスが存在する現代社会。それだけ働き方の多様化が進んでいることの証左であるわけだが、採用企業と求職者の意向をいかに組み合わせるかが、こうしたサービスの腕の見せどころであり、強みでもある。特に労働集約型産業の象徴とされる物流現場では、こうした人材サービスに対する待望論が強い一方で、ハードワークのイメージが強く最適な人材の獲得に苦心しているのが実情だ。

そこで、最初に物流業務目的における人材サービスの利用の有無について聞いた。「ある」が77.3%、「ない」が19.3%となり、8割近くの企業で利用実績があることが分かった。現在の利用状況については、「一部の事業所で利用中」が44.2%、「『すべて』もしくは『大半』の事業所で使用中」が29.5%、「利用していない」が26.4%。全体の4分の3が何らかの形で活用していることから、企業の人材サービスへの信頼度は高いと言えよう。

続いて、将来の人材サービス活用の有無に関する設問では、「具体的な予定がある」が44.4%、「利用する具体的な予定はないが、利用する可能性はある」が41.0%と前向きな回答が9割近くに達し、「利用する具体的な予定はなく、利用する可能性もない」は14.6%にとどまった。

消費スタイルの多様化や新型コロナウイルス感染拡大による宅配ニーズの高まりなどで取扱量が増加し、人手不足が露呈する物流現場。「とにかく人手が足りない」との叫びを反映した数字と受け止めるべきだろう。

活用に消極的、理由は「コスト」と「採用面の心配なし」

ここで、利用に消極的な回答について分析しておこう。前問で「利用する具体的な予定はなく、利用する可能性もない」との回答者に理由を聞いたところ、「コスト上の理由」が61.0%、「直接雇用するための施策が機能しており、今後も採用面の心配はないと考えているから」が58.2%と、対照的な回答がともに5割を超えた。次いで「作業品質上の理由」が47.3%、「物流業務についての雇用を考える必要がないため」が40.4%となった。

「コスト上の理由」は、限られた資金のなかで最適な経営判断を求められる企業としての正当な回答だろう。ただし、人材投資は将来の成長の種まきだと指摘する経営者もいるように、採用コスト縮減が企業存続の危機に瀕する状況を導いてしまうリスクも理解しておくべきだろう。

また、直接雇用の施策が機能している企業であれば、人材サービスを活用しなくても現場に支障が出ないのもうなずける。しかし、今後迫り来る2024年問題に加えて、少子高齢化の加速で直接雇用の原資が加速度的に縮小していくのは確実だ。こうした事態のさらなる深刻化に備えた一定の準備は必要だろう。

汎用性の高い業務に積極活用

それでは、企業は人材サービスをどの業務で活用しているのだろうか。過去から現在、将来にかけて人材サービスを活用もしくは活用に前向きな回答者に、その対象業務について尋ねた。「倉庫内作業」が80.8%で最多。続いて「事務業務」33.0%、「運転業務」22.7%、と続いた。免許が必要な運転業務よりも、汎用性の比較的高い倉庫内作業や事務業務で人材サービスで採用した従業員を起用する傾向があるようだ。現場の物量だけでなく扱う荷物の種類も増えているなかで、従来よりもさらに人手が必要なのは仕分けなど倉庫内作業だとの声もしばしば聞かれる。こちらも、まさに現場の実情を伝えている回答だと言えるだろう。

物流企業への脅威、「2024年問題」

ここまで、人材サービスの利用実態について見てきた。こうした人材サービスを提供する企業は、物流業界で一気に需要が高まってくるタイミングを2023年と予測している。まさに、物流の2024年問題を翌年に控えた時期だ。今回の調査で回答した企業は、この2024年問題についてどう対応しようとしているのだろうか。

ここで、2024年問題について振り返っておこう。2024年問題とは、「働き方改革関連法」の自動車運転業務への適用が開始されることで発生する順守事項を守る動きのことだ。同法は19年に施行されたが、運送業やトラックを含む「車両運転業務」に関しては24年まで猶予されていた。自動車運転業務は急な是正が難しいことから、物流業界は24年に猶予されたものの、年々貨物量の増加などから長時間労働がなかなか改善されない、しかし法令の施行が迫っている。これが2024年問題の一つの「時間外労働時間の上限規制」だ。

さらに、正社員や非正規雇用労働者といった雇用形態に関係なく、同じ職場で同じ仕事内容に従事している従業員に対して同一の賃金を支払うという考え方「正規・非正規社員の同一労働同一賃金」も、24年4月から適用対象となる。各種手当や就労制度の見直しが必要となり、賃金基準の策定にも当然影響する話だ。

2024年問題が「ドライバー不足に拍車」をかける

こうした2024年問題の内容について、企業はどの程度把握しているか。全体の3分の2に相当する68.5%が「聞いたことがあり、詳細な内容も承知している」と回答。「聞いたことはあるが、詳細な内容は知らない」が26.2%、「聞いたことがない」は4.2%にとどまった。さすがに認知度は高く、その多くが内容を承知しているようだ。

そこで、2024年問題の焦点である、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで生じる問題について回答を求めた。「ドライバー不足に拍車がかかる」が75.1%でトップ。次いで、61.0%が「限られた人的リソースを効率的に運用するため、運送会社による荷主企業の選別が始まる」と指摘した。「ドライバーの労働時間は減少するが車両コストは減少しないため、運送会社の利益率にマイナス影響が生じる」(57.4%)、「ドライバーの給与が減少する」(43.5%)、「『サービス残業』などの不法行為が増加する」(38.0%)と続いた。

ドライバーの就労時間の絶対数が減ることによるドライバー不足や車両コストに対する利益率低下、さらに給与減少など、物流サービスの提供原資となる労働力や利益へのマイナス影響を危ぶむ回答が目立った。一方で、長時間就労や労働集約型の業務を求める荷主を避ける傾向が強まるとの指摘は、現場を動かす義務がある物流企業の立場では現実感のある話であろう。現実にこうした選別が加速すると警告する識者は「ある特定の領域で物流サービスを享受できなくなるおそれも捨てきれない」と語る。

対策は「荷主の選別」

とはいえ、タイムリミットとも言うべき2024年4月まで2年半を切った今、どのような対策を講じるべきなのか。回答者に聞いたところ、全体の70.4%が「荷待ちの頻度や時間の長い荷主との取引を見直す」と回答。まさに「選別」を進める方針を打ち出そうとしているのだ。

さらに、外部リソースの積極活用で課題解決を図る必要性を訴える回答も目立った。全体の半数近い45.6%が「効率的な労務管理を実現しやすい運行管理システムの導入や利用を拡大する」と回答。「必要な人員の確保より、求人費用を増やすなど採用活動をより積極的に実施する」(39.2%)、「トラック予約・受付システムなど、拠点運営側が用意するサービスを積極利用する」(35.5%)、「ドライバー派遣や業務委託など、外部サービスの利用を増やす」(26.1%)など、人材サービスの他にもいわゆる物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化による解決法を模索する考え方も多いようだ。

「労働時間の抑制を補うため、ドライバーの基本給を引き上げる」(36.3%)との回答も多く、モチベーションを維持する意味でも、賃金面での丁寧な処遇も必要なようだ。いずれにしても、企業にとっては利潤を追求する一方で、その担い手である最前線のドライバーに対する誠意ある対応が求められる。二律背反ともいうべき命題を解きほぐしていかねばならない、何とも悩ましい経営の舵取りを迫られることになる。

次回は、人材サービスの課題を探るとともに、注目度の高さをランキングでまとめる。

■物流人材サービス特集