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人材紹介サービスのシスプロ

「労務コスト削減」のシステム化で適材適所を実現

2021年11月30日 (火)

話題「今年の繁忙期は、ちゃんといい人を集めてくださいよ」。年末が近づいてくると、物流会社の採用担当者は胃の痛い思いから逃れられない。一年で最も取り扱う荷物量が多くなる繁忙期。毎年11月半ばごろから年末にかけて、物流現場は「戦場」に変わる。

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そんな季節を今年も迎えようとしているころ、全国に拠点を置くある物流企業の担当者は頭を抱えていた。年々、年末アルバイトの採用が難しくなっていくのを感じていたからだ。馴染みの人材紹介会社からは、時給の上乗せを提案された。「若い人に来てもらおうと思ったら、賃金を上げないと」。2020年4月の「同一労働同一賃金」の施行で、正社員と非正規雇用者との不合理な待遇さが禁止されたことで、アルバイトなど非正規社員の賃金を実質的に引き上げる必要が生じている。賃上げが必要なのは分かっているのだ。「でも、その原資はどこにあるんだ」

人件費を上げるためには、それ以外のコストを低くせざるを得ない。人件費も経費と考えるならば、それをいかに適切に配分するかが、企業の経営手腕と言えるだろう。こうしたコスト管理を支援するシステムを開発するのが、シスプロ(大阪市北区)だ。

人材紹介と労務管理を「両輪」と位置付けるシスプロ

人材紹介サービスを手がけるシスプロは、勤怠管理や給与計算など労務管理サービスも扱う、ユニークなビジネスモデルを掲げている。人材紹介と労務管理。両方を手がけるところに、物流業界をはじめとする多くの企業に注目される理由があるのだ。

ここで、シスプロの創業について振り返ってみよう。「シスプロ」という社名は、「『シス』テム『プロ』デュース」から生まれた。その名の通り、サービス業を中心とする生産性向上を支援する仕組みを生み出すシステム開発企業として1999年に設立。同時に、人材サービスの提供を始めた。

▲「生産性を高めるには『Just In Time』の発想が大切だ」と強調するシスプロの竹山嘉博・取締役事業部長

「生産性を高めるために不可欠なのが『人』だと考えたからです」。シスプロの竹山嘉博・取締役事業部長は、生産性を高めるには「Just In Time」(ジャストインタイム)、つまり「必要な人材を必要な時に必要な数だけ採用する」発想が大切だと強調する。ある現場でよく聞かれるフレーズなのだが……。「まさに、物流企業のニーズと一致したんです」(竹山さん)。物流業界に顧客を多く抱えている理由はそこにあるのだ。

シスプロの人材紹介サービスの底流にある「Just In Time」

このJust In Timeの考え方は、シスプロのサービス展開の柱になっていく。シスプロの人材紹介サービスは、人材派遣や日々紹介、単発アルバイトマッチングなどが中心だ。特に、人材派遣にかかる法整備が厳格化されてからは、日々紹介に軸足を置くようになった。つまり、派遣からアルバイトへの業務シフトを進めているのだ。こうした動きは、2012年に日雇い派遣が禁止されたことで決定的になったという。

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ここで、ある物流企業が人材派遣から日々紹介のサービスで採用したアルバイトに転換した場合を考えてみよう。雇用主である物流企業は、派遣を受け入れていた時と比べて、自社雇用となる分だけコスト面での負荷が高まることになる。それは、そのアルバイト従業員に対する「労務管理」が発生するからだ。それがコストを上げる要因になる。勤怠管理や給与明細の発行など、非常に多くの細かい管理が必要になるのが、直接雇用の難点でもある。

とはいえ、大切な従業員には少しでも時給を高くして継続的に現場で働いてほしい。閑散期で職場を離れたとしても、来年の繁忙期にはぜひ戻ってきてほしい。それが採用担当者の本音だ。しかし、限られた人件費の財源で、なかなか時給を上げるのは容易なことではない。とりわけ、物流は波動要素が強く、繁閑だけではなく社会動向の影響を色濃く受ける業種でもある。社会のインフラであり縮図でもある物流は、景気動向や社会の風潮に伴う影響を強く受ける傾向にあるのも特徴だ。

「コスト削減」で時給を上げるという発想

「ここで生まれたのが、時給を上げる原資を、他のコスト削減で補おうという発想でした。それが、労務管理を手がける動機になったのです」。竹山さんは、Just In Timeの徹底による採用コストに加えて労務管理コスト、さらには経理や総務など「人」に関わるコストを圧縮するためのDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援するのがシスプロの役割であると指摘する。

こうしたシスプロの取り組みを象徴するのが、「EMSプラットフォーム」(シスプロEMS)だ。EMS(Employee Management System)とは、雇用管理システムを指す。「日々雇用システム」「日々紹介システム」の2つのサービスを展開し、1日単位の雇用を支援する取り組みだが、特徴は「雇用に伴う煩雑な管理業務も一括してサポートする『ワンストップフルサービス』である」ところだ。

(クリックでサービス紹介ページへ)

例えば日々雇用システムの場合、1日単位での単発アルバイトの採用サービスだけでなく、複数の人材会社を一括管理できる機能、さらには法定帳票管理や給与計算代行などの付随する管理業務をパッケージとしてプラットフォームに置いている。これは人材サービス業界でも特異な取り組みと言えるだろう。

労務管理や付随業務を一元管理するEMSプラットフォーム

「EMSプラットフォームは、顧客企業が自社雇用や複数の人材派遣会社を通して人材紹介を受けられるとともに、労務管理も一元化できる仕組みです」(竹山さん)。さらに、請求書発行をはじめとする経理などの業務を外部委託の形でシステム化することでコストを削減する「フルフィルメントサービス」も活用できる。つまり、「採用」「労務」「経理など関連業務」をそれぞれコスト低減につなげるシステムだ。

▲EMSプラットフォームの機能イメージ(出所:シスプロ)

EMSプラットフォームの設計にあたっては、当初は自社雇用に主眼を置いていたという。以前雇用したアルバイトを登録しておき、再び採用するというものだ。いわば人材プールのようなイメージだ。そこで不足する場合に備えて、人材派遣会社をメンバー会員として確保しておき、必要に応じて人材を紹介してもらうことで、波動にも対応できるというわけだ。

まさにシスプロの強みとするJust In Timeを具現化する「装置」とも言えるEMSプラットフォーム。シスプロが目指してきた、従業員の待遇改善のためのコスト削減を顧客である企業に提案する絶好の仕組みというべきだろう。シスプロはこのプラットフォームを今後、積極的に普及させていく方針だ。短期で単発の雇用を前提としたシステムだが、「まさに現下の雇用環境が強い追い風になっている」と竹山さんは強調する。

(出所:シスプロ)

時代はEMSプラットフォームを求めている

「かつては軽作業なら『人材派遣』というイメージが強かったのですが、今は様相が全く異なります。同一労働同一賃金の施行で人材派遣のコストが上がり、『派遣よりも自社雇用』の機運が高まっています。そこに、物流業界をはじめとするJust In Timeの短期・単発雇用が強く求められているわけです。

物流業界では、新型コロナウイルス感染拡大の収束後に一気に人手不足が露呈するとされている。企業などの経済活動の回復による物量増に対して、求人市場は雇用を止めていた飲食や小売業界に大量に人材が流れる可能性があり、結果として物流業界への人材流入は弱まるとの見方が大勢だ。こうした逆境に陥るおそれがある物流業界にこそ、EMSプラットフォームの活躍の機会は多いと竹山さんはみている。

シスプロの人材サービスは、EMSプラットフォームだけではない。単発アルバイトマッチングサービス「人タスカル」は、スポットの軽作業アルバイトが500円で採用できるのが売りの新サービスだ。勤務するまで全て無料。登録、システム利用も完全無料の成果報酬型ウェブ求人広告サイトで、1日あたりの単発バイトから中期長期のアルバイトまで企業とアルバイト希望者をマッチングする機能が特徴だ。

(クリックでサービス紹介ページへ)

システムプロデュースならではの発想で「物流DX」の概念を変える

企業における人材は、足元の仕事の完遂だけでなく、将来の成長を実現するうえで欠かせないリソースだ。優秀な人材であればあるほど、賃金を手厚くして長期間仲間として働いてほしいと願うのが、現場の管理者であり同僚であろう。その原資をDX化で業務を効率化して実現したコスト削減で捻出するという発想は、システムプロデュースの見地ならではだ。

シスプロのこうした取り組みは、物流現場における人材確保と業務効率化の施策が連動していることへの「気づき」とともに、課題解決に向けたヒントを提供していると考えるべきだろう。ここには、人材確保と業務効率化を一体の課題と捉える「全体最適」の発想があり、その解決を図ることで現場業務が円滑化するという大局的な視点が存在する。ここには、物流DX化のあり方を考える重要なヒントがある。

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