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日通グループ、新ビジネス創出へVCファンド出資

2021年12月16日 (木)

ロジスティクス日本通運は16日、ベンチャーキャピタルファンド(VCファンド)3社に出資し、オープンイノベーションを目的としたスタートアップ企業との新ビジネス創出を目指す取り組みを2022年1月に始めると発表した。

日本通運グループが出資するのは、SBIインベストメント▽ANOBAKA(アノバカ)▽DRONE FUND(ドローンファンド)――の3社。

新型コロナウイルス禍や気候変動はこれまでの産業構造に変化を迫っており、それを契機としたDX(デジタルトランスフォーメーション)化や脱炭素化の潮流は想像を超えるスピードで動き始めている。

日本通運グループは、こうした環境変化に対応し持続的に成長するため「新たな価値創造」を目指し、新しい事業・サービスモデルを探索。外部の新興企業の新しい事業アイデアや技術をグループに取り入れるための取り組みとして、「ベンチャー共創チーム」を社内に設置。3社のVCファンドへ出資することとした。

今回の出資とベンチャー共創チームの創設により、日本通運のグループ企業や全従業員が多様なスタートアップ企業との共創を推進するとともに、その活動を強化する形でコーポレートベンチャーキャピタルの設立も検討していく。

日本通運グループは今回のVCファンドへの出資を契機として、今後もスタートアップ企業が生み出す新たな技術やビジネスモデルとグループの知見・アセットを融合することによりイノベーションの創出を加速するとともに、社会に新たな価値を提供していく。

ベンチャー共創、新体制を見据えた日本通運グループの「本気度」を見たい

日本通運グループが、社外の企業が持つ斬新な発想やアイデアを奇貨とした成長戦略を掲げようとしている。2022年1月4日の創業150周年、会社設立85周年を機とした持株会社制への移行に合わせて、生まれ変わった「NIPPON EXPRESS」グループを象徴する取り組みとして、注力していくことになりそうだ。

日本通運は国内における物流企業を代表する存在として、グローバル展開を含めた堅実な事業展開が信条だ。1872年に飛脚問屋が集まった陸運会社として創業し、「伝馬」「助郷」の代替制度として明治政府が認可したことをルーツとする日本通運は、国内における貨物輸送の礎を築いてきた。

しかし、当時は先進的な施策であったはずの物流システムも、急速な社会情勢の変化で一気に陳腐化するのが現代だ。さらに、社会インフラとして定着した物流ビジネスは、業界を超えて多様な先進ノウハウが参入し、顕在化している物流課題への対応が進んでいる。もはや、物流各社は自社陣営だけで迅速な課題解決を図るのは事実上、不可能になっているのだ。

(出所:日本通運)

日本通運グループによる今回のVCファンドへの出資は、持株会社制への移行という歴史的なグループ経営体制の変革を具現化する取り組みと言っても過言ではない。こうした外部の先進施策を取り込むためのアクセラレータープログラムは、物流業界でも見られるようになった。しかし、日本通運グループのベンチャー共創チームは、こうした取り組みとは一線を画した「本気度」を示しているように思える。

日本通運グループには、現時点では到底予想しないような、斬新な物流発のイノベーションを期待したい。場合によっては複数の物流企業と手を組むのも一手だと考える。(編集部・清水直樹)