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JR貨物、22年3月改正で関東・関西間など輸送増強

2021年12月17日 (金)

ロジスティクス日本貨物鉄道(JR貨物)は17日、2022年3月12日に実施するダイヤ改正の概要を発表した。

関東・関西間の輸送力増強や大型コンテナ輸送ネットワークの拡充、積合せ貨物ブロックトレインの速達化などを推進。カーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化の機運が高まるなかで、モーダルシフトの受け皿としての役割を担える運行体制の強化を図るとともに、新型コロナウイルス禍の収束を見据えた貨物量の回復に対応できる輸送力の確保に注力する。

関東・関西間の輸送については、越谷貨物ターミナル駅(埼玉県越谷市)と姫路貨物駅(兵庫県姫路市)を百済・吹田・神戸の各貨物ターミナル駅を経由して結ぶ直行輸送ルートを新設。越谷・神戸間で3時間38分、越谷・姫路間では8時間18分、それぞれ所要時間を短縮する。

(出所:JR貨物)

さらに、東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)・神戸貨物ターミナル駅(神戸市須磨区)間のコンテナ列車を大阪貨物ターミナル駅(大阪府摂津市)発着に変更。顧客ニーズの高い東京・大阪間の輸送力を高める。その結果、東京貨物ターミナル駅・大阪貨物ターミナル駅間の直行輸送力を、12フィート換算で現行の45個から70個に増強する。

(出所:JR貨物)

大型コンテナ輸送網については、広島貨物ターミナル駅(広島市南区)における取り扱いを増強。福岡貨物ターミナル(福岡市東区)発の東京貨物ターミナル駅:越谷貨物ターミナル駅行きの各コンテナ列車について、広島貨物ターミナル駅での取り扱いを新たに実施。岩国駅(山口県岩国市)発で越谷貨物ターミナル駅行きのコンテナ列車についても広島貨物ターミナル駅での取扱量を増やす。

速達性を重視する積合せ貨物ブロックトレインについては、一部列車のダイヤを改善することでさらなるリードタイムの短縮を図る。盛岡貨物ターミナル駅(盛岡市)発安治川口駅(大阪市此花区)行きで1時間24分、陸前山王駅(宮城県多賀城市)発吹田貨物ターミナル駅(大阪府吹田市・摂津市)行きで31分、それぞれ所要時間を短縮する。

(出所:JR貨物)

ほかには、E&S(着発線荷役)設備を導入してリニューアルした南福井駅(福井市)の停車列車や輸送力を増強。八戸貨物駅(青森県八戸市)発百済貨物ターミナル駅(大阪市東住吉区)行き列車を新たに停車させるほか、新潟貨物ターミナル駅(新潟市東区)発岡山貨物ターミナル駅(岡山市北区)行き列車における南福井駅での取扱量を増やす。

車両の増備も図る。本線における高速・重けん引用や駅構内入換作業用の機関車を計23両新造するほか、コンテナ4600個と荷役機械97台を新規に導入する。

▲南福井駅のE&Sコンテナホーム(出所:JR貨物)

2022年、「鉄道貨物復権元年」なるか

JR貨物は22年3月のダイヤ改正で、関東・関西間をはじめとする貨物列車の輸送力増強を推進する意思を明確化する。背景には、新型コロナウイルス禍の収束後の輸送ニーズ回復を見据えた輸送力の確保に加えて、環境意識の機運の高まりを受けた鉄道貨物輸送の「復権」を強力に示す狙いもありそうだ。

戦後のモータリゼーションの進展で貨物輸送の主役が鉄道からトラックへ移行して以来、今ほど貨物輸送に強い追い風が吹いているタイミングはないのではないだろうか。そのもっとも大きな要因は、政府によるカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化の産業界への要請だ。物流が社会に不可欠なインフラであると認知されているからこそ、脱炭素化による効果が大きいとの判断も働いている。日本通運をはじめとする大手物流企業を中心に、輸送モードの最適化に向けた具体的な動きが広がり始めている。

今回のダイヤ改正を契機としたJR貨物の輸送力増強策も、こうした文脈に沿って語られるべき話だ。長距離コンテナ列車の途中駅における取扱増やブロックトレインの新設は、こうした危機感の表れでもあるだろう。2022年、もしもコロナ禍が収束することになれば、「鉄道貨物復権元年」となるか。JR貨物の経営アイデアの創出も含めて、目が離せない年になりそうだ。