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薬王堂、河北新報の配達網活用し宅配サービス開始

2022年1月28日 (金)

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メディカル薬王堂ホールディングスは28日、グループで東北6県に358店舗のドラッグストアを展開する薬王堂(盛岡市)とインターネットサービスプロバイダの10X(テンエックス、東京都中央区)が提供するEC(電子商取引)プラットフォーム「Stailer」(ステイラー)と河北新報社(仙台市青葉区)が持つ新聞配達網を活用し、ことし2月1日に薬王堂仙台泉館店(仙台市泉区)で宅配サービスを開始すると発表した。

薬王堂と10Xは、2021年3月にECアプリ「P!ck and」(ピックアンド)の提供をスタート。ピックアンドのアプリケーションで店舗を選択し商品を注文すると、最短で1時間後に店舗駐車場のドライブスルーや店頭のロッカー、店舗カウンターでの受け取りが可能なサービスだ。

薬王堂と10Xはこのたび、ピックアンドのサービスをさらに拡大する形で、新たな受け取り手段として、河北新報社の新聞配達網を活用した宅配を開始。食品や日用品をより便利に購入することが可能となるほか、外出自粛や運転免許がないなどで来店が難しい顧客にも使いやすいサービスなのが特徴だ。

薬王堂が店舗展開する東北地方は、人口減少やスーパーマーケットの撤退などの課題に直面する、課題先進地域でもある。今回の自宅配達は、薬王堂と10Xが共同で取り組む「ドラッグストアDX推進プロジェクト」の一環で、地方における生活者の利便性を確保するためのモデルケースとなることを目指す。

「薬店+新聞販売網」で宅配ノウハウを共有できる絶妙な組み合わせ、「新しい生活様式」のヒントにも

東北地盤の薬王堂とインターネットサービスプロバイダの10Xが、新聞配達網を活用した宅配サービスに乗り出す背景には、新聞購読数の伸び悩みで苦境に陥っている新聞販売店への支援策の意味合いもある。むしろ、配達ノウハウを共有できるメリットを活用して、「総合宅配業」として共存共栄を図ることで、高齢化が進む地方における生活インフラの維持・強化を推進するのが現実的な取り組みと判断したと言える。

薬王堂は、店舗のみでの商品販売では将来の業容拡大は困難であるとともに、今後のさらなる高齢化の進展を考慮すれば、公共交通機関の発達がこれ以上見込めない地方で小売業が勢力を維持・拡大するには、宅配サービスへの参入を進めるのが最善策と判断した。その手段として白羽の矢が立ったのが、逆に宅配ビジネスに依存し苦境に立つ新聞販売網だった。

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いわば、これまでの強みが「弱み」に転換するのを見据えて、相互にリソースを共有する戦略を選んだというわけだ。いずれにせよ、新型コロナウイルス禍の収束後の「新しい生活様式」が、宅配サービスを基軸に生活インフラは構築されていくことになると考えれば、新聞販売網も決して捨てたものではない。むしろ、これほど宅配ビジネスの基盤を備えている領域は他に存在しないだろう。

宅配サービスを一手に引き受ける「総合宅配業」の発想は、意外に新しい生活様式の時代をひも解くカギになるのではないだろうか。(編集部・清水直樹)