国際ロシアによるウクライナへの侵攻は、国内における物流サービスにも影響を及ぼし始めている。現時点では直接的な影響は限定的だが、軽油価格のさらなる高騰や国際物流の途絶など、物流業界の懸念は尽きない。
■軽油価格のさらなる高騰は?
ウクライナ情勢が及ぼす事態として、物流業界が最も気をもむのが、軽油価格の急騰だ。
ロシアは世界第3位の産油国だ。ロシアに対しては各国が経済制裁を表明しているが、その結果としてロシアが原油や天然ガスの輸出抑制に踏み切れば、世界の相場が急騰する可能性もある。
既に供給不安は先行しており、ニューヨークの原油先物市場は7年7か月ぶりに1バレル=100ドルを突破。国内における軽油やガソリン価格のさらなる高騰はもはや不可避との見方も支配的になっており、2月21日時点で7週連続の上昇を示している軽油価格のさらなる高騰はもはや「想定内」の様相だ。
航空や船舶の燃料コスト、さらには電力料金への影響など物流事業の運営経費負担は重くなりそうで、物流事業者からは「人件費や設備投資などの削減に踏み切らざるを得ない可能性も出てきた」と危機感を募らせる声が出ている。
■穀物輸入に支障も
ロシアによるウクライナ侵攻で、小麦やトウモロコシといった穀物の輸出国であるウクライナに寄港する貨物船が、被弾したり立ち往生したりしている。穀物輸送に影響を与えそうだ。
日鮮海運グループ(愛媛県今治市)の日興汽船が保有する貨物船「ナムラ・クイーン」が25日、ウクライナ南部オデッサ州の港近くで砲撃され、損傷した。現地報道などが明らかにした。関係者によると、ウクライナから積んだ穀物が入っているという。
ロシアによるウクライナへの侵攻が続けば、こうした事態が今後も広がる可能性がある。小麦価格の高騰に物流コストの高騰が重なることで、食卓に並ぶ食品の販売価格にも影響が及んでくる可能性も否定できない。
■対ロシア・ウクライナの物流継続を危ぶむ声も
コンテナ船を展開する企業の間では、ロシア関連の輸送事業を相次いで停止する動きが加速してきている。
日本郵船と川崎汽船、商船三井が共同出資するオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)は、ロシアのサンクトペテルブルク発着の船積み予約を停止した。
こうした対ロシア・ウクライナの物流サービスの停止・縮小の動きは、世界の物流事業者にも広がっている。現地報道によると、米UPSと米フェデックスは27日までに、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、ロシアとウクライナへの配送を停止したことを明らかにした。
両国への安全な輸送業務を続けるのが難しいと判断したためで、ウクライナ発着のすべての発送と、各国からロシアへの輸送業務を中断。再開時期は未定という。
UPSとフェデックスは日本を含めたグローバルで各種物流ビジネスを展開。日本とロシア、ウクライナとの間における物流への影響は必至で、今後の動向によっては長期化も懸念される事態になっている。
フェデックス日本法人はホームページで「ウクライナ発着およびロシア向けのフェデックスとTNTのサービスは、追って通知があるまで一時的に停止する」とのメッセージを掲載。引き続き状況を注視しながら緊急時対応策を講じるとともに、従業員の安全を最優先事項として取り組んでいるとしている。