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三井不動産、今後10年間のロジ事業方針を表明

2022年4月21日 (木)

▲三井不動産専務執行役員ロジスティクス本部長の三木孝行氏

財務・人事三井不動産は21日、今後10年間のロジスティクス事業における方針を発表した。データセンターや冷凍・冷蔵倉庫、郊外型倉庫の展開を加速。DX(デジタルトランスフォーメーション)化による入居テナントの配送や庫内作業の効率化を推進することで、物流不動産市場における差別化を図る。さらに、カーボンニュートラルの実現に向けた太陽光発電の活用など電力のグリーン化施策も進めていく。

三井不動産は、2012年のロジスティクス事業参入から10年となる22年度を事業拡大に向けた第二の節目と位置付けて、EC(電子商取引)サービスの普及などによる消費スタイル多様化に対応した物流サービスの提供を支援できるビジネス構築をさらに加速する。

22年度からの10年間で、新規施設開発などへの投資をさらに進めることで、変革を続ける物流拠点ニーズに対応できる事業展開をさらに推進していく。

その具体的な施策として、25年までに物流施設を国内で5件新設することを決定。「三井不動産ロジスティクスパーク」のブランドで、埼玉県三郷市(25年11月完成予定)▽愛知県岩倉市(24年7月完成予定)▽愛知県一宮市(25年6月完成予定)▽宮城県名取市(24年4月完成予定)――の4か所を整備する。さらに「大阪プロジェクト」(仮称)を計画するほか、タイのチェチェン県バンパコンで今夏以降に物流施設を着工する計画だ。

▲(左から)MFLP 三郷、MFLP 名古屋岩倉(いずれもイメージ外観、出所:三井不動産)

冷凍・冷蔵倉庫の開発については、当面はBTS型(入居者の要望に応じてオーダーメイドで建設・賃貸する物流施設)で検討していく方針。とはいえ、宅配ニーズの高まりなどを受けた冷凍・冷蔵倉庫需要のさらなる拡大を見据えて、マルチテナント型についても検討していく。

三井不動産は12年の参入以来、開発中のものを含めて現在までに国内で51物件、海外で2物件を展開。総延床面積は420万平方メートル、累計投資額は7000億円に達している。22年度には首都圏を中心に7物件が稼働する予定だ。

こうした事業展開の加速において不可欠な施策が、環境対応だ。三井不動産はグループ全体の温室効果ガス排出量について、30年度までに19年度比40%削減するほか、50年度までにネットゼロを新たな目標に掲げている。新規物件はもちろん、既存物件でもこうした取り組みの実現を目指す機能の整備を進めていく予定だ。

三井不動産の三木孝行・専務執行役員ロジスティクス本部長は「事業参入から10年を機に、変化を続ける物流ニーズに対応した施設づくりを追求することで、持続可能な物流ビジネスの推進とともにさらなる飛躍を遂げる契機としていく」とコメントしている。

ロジスティクス事業参入10年の三井不動産、継続して新たな物流施設のあり方を示していけるか

新型コロナウイルス禍を契機として、物流ビジネスを取り巻く環境は大きく変わった。消費スタイル多様化は、サプライチェーンにおける物流機能への依存度をいっそう高めるだけでなく、「持続可能な物流サービスの実現」へのこだわりが、これまでになく強まっている。

三井不動産はこうした激変する事業環境下で、ロジスティクス事業への参入から10年の節目を迎えた。21年度には、千葉県船橋市の物流施設開発プロジェクトが完了。まさに過去10年の集大成とも言える開発案件だ。物流施設に「街づくり」の概念を組み合わせた新しい都市開発の手法は、物流事業の在り方を問いかける画期的な案件であるとともに、今後さらに激化するであろう物流施設間の競争における圧倒的な差別化を図る戦略的な意味合いもある。

全国における物流施設開発の動きをみると、首都圏と関西圏、中京圏を基軸としたネットワークの構築に向けたプロジェクトが急速に進んでいる。三井不動産はこうした大きなうねりのなかで存在感を示し続けるフックとして、環境対応を前提とした大都市圏中心の案件に着手していく考えだ。

▲(仮称)大阪プロジェクト(出所:三井不動産)

その象徴が、具体案をことし5月に公表する予定の大阪プロジェクト(仮称)だ。首都圏に軸足をおいて事業展開を進めてきた三井不動産のロジスティクス事業だが、関西での展開もさらに本格化させることで新たなネットワークの方向性を市場に提示し、物流ニーズのさらに多角的な獲得を目指す。

物流施設プロジェクト開発競争で、三井不動産は「台風の目」になれるか。10年後の物流施設地図はどう変わるか。三井不動産の取り組みが大きく影響を及ぼすのは間違いなさそうだ。(編集部・清水直樹)