ロジスティクス日本郵政は7月31日、日本郵便の点呼業務不備事案を受けて、国土交通省と総務省に対し、再発防止策と郵便・物流サービスの提供状況に関する報告書を提出したと発表した。日本郵便は、確実な点呼の実施をはじめとする運行の安全確保に向けて体制構築を徹底し、「信頼回復に全力で取り組む」。業績への影響は「引き続き精査中」とした。
日本郵便では、全国の集配郵便局で点呼に関する法令違反が構造的・長期的に放置されていた実態が判明。6月25日、国土交通省から一般貨物自動車運送事業の許可取消し処分と貨物軽自動車運送事業に対する輸送安全確保命令を受けた。総務省からは「日本郵便法に基づく監督上の命令など」を受けていた。
同社は発生原因として、点呼の必要性に対する意識の欠如、郵便局管理者における職場のマネジメント意識の欠如、本社・支社のガバナンス不足(管理・監督機能の不全)の3点を挙げた。点呼義務が法令に基づくものであることの認識が不十分で、郵便局管理者が虚偽記載された点呼記録の帳票を確認するのみに終始。日常的に自局の点呼実施状況を直接確認し是正する意識が希薄だった。本社・支社では帳票中心にモニタリングし、長期間にわたり適正に点呼が実施されていない実態の把握が不十分だった。
再発防止策として、同社は意識改革、職場マネジメント、ガバナンス体制の強化の3つの取り組みを推進する。意識改革の徹底では、集配関係社員12万人を対象とした動画視聴、理解度テスト、スモールミーティングの構成を主とした研修を実施し、研修受講率100%を目標とする。飲酒運転防止対策として「飲酒運転防止のガイドライン」を9月末までに作成し、全社員33万人を対象とした社員研修を四半期ごとに実施する。各階層別(本社・支社・郵便局別)の役割に応じた管理者研修を実施し、支社は9月末、郵便局は10月末の実施を予定する。
職場マネジメントの向上では、郵便局管理者対象の研修で部下社員への実践的な指導方法などについて外部講師によるワークを交えたカリキュラムを10月末に実施する。点呼執行業務に携わる社員などについて早期に貨物軽自動車安全管理者講習の受講および貨物軽自動車安全管理者を選任し、年度内に5万人の受講・選任を目指す。全集配郵便局でアルコールチェックや記録の電子化が可能となる点呼関連システムの導入を進め、9月末までに全集配郵便局にシステム・機器を配備し、11月末までに全集配郵便局で運用を開始する。小規模郵便局では遠隔点呼および業務後自動点呼も導入する。
ガバナンス体制の強化として、一般貨物自動車運送事業許可取消後も引き続き安全統括管理者を社内で選任し、安全対策協議会で安全管理を実施する。9月に安全を統括する責任部署を新たに設置する予定だ。検査部門では点呼執行状況の定着が確認できるまで特別検査を実施し、内部監査部門では「郵便・物流事業の法令・社内規程遵守などに係る内部管理態勢(運輸安全マネジメントを含む)」を内部監査重点テーマとして内部監査計画を変更した。各種再発防止策について本社で進捗管理するほか、日本郵政との間でも経営層をメンバーとする「点呼業務不備事案にかかる対策などに関するPDCA会合」を毎月開催し進ちょく状況などを確認する。
郵便・物流サービスの提供状況については、これまでトラックを使用していた月間11万8200便のうち、42%を自社の軽四輪車で代替。34%をグループ外の運送会社に委託、24%を日本郵便輸送に委託するなどして対応を進めた。日本郵便輸送は、その大半をグループ外の運送会社に再委託して対応した。6月19日から順次、自社の1トン以上の車両を使用しない新たなオペレーションに移行し、行政処分後は1トン以上の車両は使用していない。
新たなオペレーションの配分は支社別に異なり、沖縄支社では郵政グループ外への直接委託が87%と最も高く、東京支社では自社の軽四輪車による代替が70%と高い割合を占めた。
同社は1トン以上のトラックが使用できなくなった6月26日以降、郵便局における大きなトラブルは発生していないと報告。同社が実施している送達日数調査の結果、新たなオペレーションへの移行前と変わらずサービス提供水準を確保できているという。本件にかかる業績への影響は「引き続き精査中」で、業績に与える影響について今後開示すべき事項が発生した場合には速やかに知らせるとしている。
また、同社は5⽉7⽇から貨物軽⾃動⾞運送事業の特別監査を受けており、現時点では「具体的な⾏政処分に関する通知などはないが、今後、⾏政処分が執⾏された場合、当該⾏政処分に対する対応および関係する全営業所のオペレーション状況を報告する」としている。
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