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繊維商社3社、東京港から関東各地へ共同配送開始

2022年5月9日 (月)

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荷主繊維商社3社が共同配送でタッグを組む。豊島(名古屋市中区)は9日、スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)、田村駒(大阪市中央区)の2社と共同で、東京港から関東各地への一部の商品配送を始めると発表した。

ライバル関係にある3社が配送業務に共同で取り組むことで、ドライバー不足などの物流課題やカーボンニュートラル実現に向けた環境施策に対応するとともに、企業価値のさらなる向上につなげる。

商品配送など物流現場では、若い世代を中心としたドライバー不足をはじめ、働き方改革関連法によってドライバーの労働時間に上限が設定されることで生じる「物流の2024年問題」への対応など、課題が山積している。豊島など3社は、繊維商社としての機能を維持し顧客ニーズに対応するためにも、こうした物流課題の解決策を構築する必要があった。

さらに、商品配送の過程で生じるCO2の排出削減は、政府が目標に掲げるカーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素化の機運の高まりに対応した施策として欠かせない取り組みと判断した。

3社はそれぞれ港湾で商品を通関後、独自のルートで配送している。しかし、港湾から配送先には共通した相手も数多くあることから、会社の垣根を越えた協力により実現できる共同配送に取り組むこととした。

3社は、このたびの共同配送により、トラックの使用台数の削減による交通渋滞緩和やドライバー不足解消につなげるほか、配達回数の削減で受け取り倉庫への負担を減らす。さらにこうした過程でCO2排出削減につなげる。

繊維商社3社による共同配送、消費スタイル多様化による「生き残り策」の第一歩だ

繊維商社3社が、東京港から関東各地への商品の共同配送に踏み切った背景には、商社としての持続的な成長を図るには物流機能の維持が不可欠との判断があるようだ。サプライチェーンのなかで「卸」の役割を担う商社として、物流機能に支障が出る事態を招くことは、そもそもの存在価値を問われかねないからだ。

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一方で、EC(電子商取引)の普及などによる消費スタイルの多様化が新型コロナウイルス禍も契機に加速するなかで、アパレルビジネスは大きな変革期を迎えている。物流サービスの存在感がますます高まる状況で、繊維商社が同じ取引先への配送業務を共同化するのは、業務効率化の観点からも得策であろう。

繊維商社にとって、差別化ポイントはあくまで素材や商品の調達・販売ルートの開拓にあるはずだ。その実現に必要な付加価値の高い物流サービスで勝負するべきであって、逆に共通化できる部分は積極的に協力する。それが、繊維商社として生き残りを図るための最善策と言えるだろう。(編集部・清水直樹)